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2。




姪っ子の忘れ物を届けに中学校に行った。


そこで目眩を感じ、気づいたら異世界。


石造りのなんか広間。

周りを囲むどっかの教団みたいな外人さんたち。

ぼんやり浮かぶ足元の魔方陣。

ハリウッドばりにファンタジーな舞台に私は立っていた。


なんて奇跡だ…………心底望んでないっ!


せめてもう少し若い時に呼んでくれっ!

状況に柔軟に対応するには、体力とか持久力とか気合いとかなんか沢山足りないのよおばちゃんはっ!




「ここはセゼリース王国の王城、地下にある召喚の間です。私は召喚師のオルネン。以後お見知りおきください、勇者様方」


「……ち、ちょっと! なんなんですかこれっ!」



リーダー神官さんが頭を下げて挨拶するのに、食って掛かる中学男子。


うーん、イケメンだねぇ。今時の中学生は発育がいいよね、背が高いわ。

アイドルみたいだね、髪型もビシッと決まってる。



「なんなの……どこ、ここ?」


「どっきり? 誘拐?」


「うーわー、やべー、マンガみたいでカッケェー♪」


「……」



他の子供達もアイドルみたいだ。

なんだろ、君達どっかのグループ?

それくらい顔も体もいいよね?

おばちゃんの贅肉貰ってくれない?



「貴方達はなんですかっ? 僕たちはなんで……」


「その説明はきちんと致します。まずは落ち着かれますよう……」



偉いなぁ、あの男子。

泣き叫んだり慌てたり騒いだりしないで、しっかり相手に対応してる。

いやいや、内心ガクブルかもしれないけど、率先して意見が言えるってだけでも偉いよ。

リーダーとか委員長とか、そういうのが自然とやれるタイプなんだろうな。


どうみても最年長で大人の私が本当なら彼の代わりにオルネンさんと話すべきなんだろうけど、おばちゃんにはそういう素質はないんだよ。

流されるまま、言われるままの仕事をしてきたババアには無理です。

まぁここに一人っきりだったら流石に話すけどさ。


会話から推測するにとりあえず日本ではなくて、冗談でもなさそうだ。


異世界~というのが一番しっくりくるけど、まだわからないよね、うん。もしかして遠い遠い外国かもしれない。望みは捨てるな私。


となれば先ずは自分の状態をチェックしとくか。

男子がオルネンさんと喋ってるうちに確認しとこう。


えっーと、服装はポロシャツにパーカー、ジーンズにランニングシューズ。うん、動き易いから何かあったら逃げやすいな。


持ち物は腕時計にショルダーバッグ、姪っ子忘れ物の体操着が入ったトートバック。


ショルダーバッグの中身は財布にスマホ、化粧道具に水筒と非常食のお菓子が数個。あ、カロリーメ○トが一袋あったな確か。

水と食料は少しは安心かな。災害大国日本人、こういう準備を欠かさずにいて良かったよ。


あとは仕事で使うチキチキカッターに軍手、巻き尺とマジックペンか。あ、マスクもあった。


カッターは武器になるし、家の鍵とかも刺すくらいはできる。目玉とかね。

物騒な考えだけどどうなるかわからないんだから、最悪の事態も考えなきゃ……。


荷物を取られたりしないように抱き抱えるようにしていると、男子がこっちに向かって話し出した。


あ、ちがうな。

仲間であろう同級生に話し出したのか。

私は部外者だからなぁ……。



「とりあえず皆、どこもケガとかないよな?」


「う……うん」


「大丈夫だ……」


「じゃぁ、ここで悩んでても仕方ないから、この人達に着いていくしかないと思うんだけど」


「……だな。それしかないだろう」


「いやぁー、何々? 俺達勇者なのかなぁー? なんかすごいよなぁー」


「何ではしゃいでるのよっ…能天気ねっ」



あ、話が纏まってオルネンさんに続いて皆行こうとしてる。


私は? 私は、どうするかなぁ?


それこそマンガとかじゃ、オルネンさんが実は悪い奴でいきなり奴隷にされたり騙されたり、とにかく危ない目にあったりするんだよね。

だからといってここで逃げ出しても土地勘どころか世界勘もない現状じゃどうにもならない。


だから私も着いていくしかないんだけど……。


あの中学生達に混じる勇気がない…。


周りは異世界人でアウェイ。

同じ日本人とはいえ年代的にアウェイ。


……つ、ツラいっ!


おばちゃん、泣きそうっ!


いくら独り身が長いったって、ツラいもんは辛いんだよ。

いくら虫とか素手で潰せても怖いもんは怖いんだよ!


知らない場所で一人……。

頼れるはずの同郷人がいる分、その人達だけが連帯感が有る様をみせつけられて余計怖いんだっつーの!

独りだよ、これぞ孤独だよっ!


ああぁあぁっ……今頃になって震えてきた。


やばい、漏らしそう。

よかった、下着もカバンの底に仕込んどいて。

災害対策怠らなかった私、偉いぞぉ!

自分で自分を誉めなきゃ誰も誉めてくれないので、誉めるのだけは上手くなったよ悲しいなぁ、もうっ!



「……あ、あの……行かないんですか?」



ちょっと涙目になってたら、女子の一人が声をかけてくれた。


ああ、よかった。

存在を無視はされてなかった。


女子はサラサラストレートセミロングの小柄な子だ。

優しい気弱そうな雰囲気が守ってあげたくなる感じ。

うわぁ、可愛いなぁ。

きっちり髪に浮かぶ艶々がマジで天使の輪だわ。



「……大丈夫ですか? 」


「う……ぅう"んっ……」


「あ、泣かないでっ……そうですよね、怖いですよね……」


「うっ……うぅ~っ……」



怖いよぉっ。

なんでだよ、何も悪い事してないのに、なんでだよぉ。


なんで私だけ、何時も独りなんだよぉっ。



「…行きましょう? あの、私、雛木京子って言います。ハンカチどうぞ?」



そういって京子ちゃんがハンカチをかしてくれて、私の手を引き一緒に歩いてくれた。

ちっちゃくて柔らかくて私より小さな手にすがるように歩く。


ううっ、優しいよぉ!

京子ちゃんが優しすぎるよぉっ!

ハンカチ良い匂いがしてキレイで勿体なくて使えないよ、袖で鼻水ふくよっ。いいよパーカーくらい、京子ちゃんを汚すよりいいよぉっ!


おばちゃん、中学生に慰められて情けないことこの上ないよぉっ!



「……泣いてる場合じゃないじゃん、オバサン……」


「おい、失礼だろっ」


「でも大人なのにさ、俺達泣いてないのに…」



本当だよね、ゴメンよ中学生諸君っ。


こんなとこでも精神的格差が起きてて嫌になるよっー!!





それでも唯一大人な私が一番最初に情けなく泣き出して、皆は逆に落ち着けたんだと後から聞いた。


おばちゃん、ちょっとは役に立てたようで良かったよ~♪








雛木京子(14)。

小柄でふんわりとした雰囲気を持つ癒し系美少女。パッチリした瞳と睫毛の長さがちょっと自慢。

成績は上の中、体育が少し苦手。

手芸部に入りたかったが親の言いつけで吹奏楽部に入部。自分の意見をいうのがかなり苦手だが、道徳心が高いのでボランティア等は率先して行う。

サヨリさんの天使。

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