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二日目 ドツボにハマる

 打ち始めて204回転で3連チャンを引くも出玉は2000発。3000円以上投入して、戻ってもマイナス。熱い演出は来たものの、納得できない状況に、継続して打つ事にした。

 しかし、回転数は芳しくない。前の台に比べたら回っているが、千円あたり70回転、4パチ換算だと17ちょっとなので、目安の20回転からするとかなり落ちる。

 出玉の2000発が呑まれ、追加投資を3000円したあたりで怪しさが積み重なっていた。


 1/319.7のミドルタイプの台は、128回転くらいで33%の大当たり率。222回で5割。

 しかし300回転を越えてしまっていた。しかも回転率はどんどん落ちて、60回転、4パチ換算で15回転まで落ち込んでいる。こうなったら、ジリ貧どころの騒ぎではない。

 ただ300回回してしまった。その気持ちが、今までの投資が……止めることを許さない。次の千円で当たるはず、もう少しで……。


 ふと左右の台に目を転じると、300〜400回転に達している。この辺になると大当たりしている確率は66%を越えているはず。3台が共にハマる確率は1/9といったところだ。

 これはもう、誰が当たってもおかしくはない!


 そんな風に自分を納得させながら継続していく。冷静になって考えれば、左右の台なんて関係ない。自身の回転数だけが全てなのだが、同じ様にハマっている人がいると妙な連帯感を感じたり、先に当たってやるという競争心が芽生えてしまっていた。

 これもパチンコにはまり込む1つの心境なんだろう。

 やはりお金を使っている認識から、ムキになる部分がどうしても出てくるのだ。その中には、『隣よりもマシ』といったある種の逃げ思考も入ってくる。

 どこまでも人間の心理を煽ってきた。


「回せば当たる、回せば当たるんだよ」


 そんな焦りが台に伝わるのか、微妙にハンドルがブレるのか。スタートチャッカーに入る玉の数は減っていき、リールが止まっている時間が長くなる。

 この台に座った当初は、パチンコ玉が跳ね踊るのが、チャッカーへと吸い込まれていたのに、今ではチャッカーを躱すように流れていく。

 悪い流れ、ハンドルで狙う釘を変えてみたり、一度席を立ってトイレに行ったりと、僅かな抵抗を試みるが変わらない。


 回転数は50回まで落ちて、目に見えて金が呑まれる。ハンドルを握る手に力が籠もる。

 レベル1、2の演出じゃあもう当たらない。もっと熱い演出を、リーチを。心から望む。

 来い、来い、来い。

 前のめりになる体、釘付けになる視線。

 保留の数を凝視して、いかに零の時間を縮めるか。工夫できる事もなく、いたずらに玉筋を変えて打ってみる。

 変わらない、変わらない。


スマホに千円ごとの回転数をメモっていく。294、358、408、474、526……当たらない、回らない。

 ついに持ってきていた最後の札を取り出す。11000円をつぎ込み、最後の1枚だ。これで終わり……それでも回らない……200円、400円、600円……終わりか……。



 574回転目、ようやくそれは訪れる。

 ハンブラビというMSの海ヘビというワイヤー型の兵器が、画面上に3つ、4つと突き立ち、そこからシーン4、敵地侵攻を果たす。そこで待ち受けるのは、ハンブラビのパイロットのヤザン・ゲーブル。好戦的でも狡猾な彼は、主人公と遭遇すると踵を返して逃げ始める。それを追撃するカミーユだが、ニュータイプの直感で罠に……気付けるのか。

 リーチ目の間に張られたネット。そこへ当たり数字が引っかかる。突き抜ける事ができれば当たりだが、外れ目がそれを阻止する形で立ちふさがる。

 もはや種銭は尽きようとしていて、今の回転数だとこれがラストチャンスだろう。2つの数字がぶつかり合い、火花を散らすように揺れ動く。


「どうなる……!?」


 唐突に降りてくる役物。一気にMSへと変形を果たして、聞こえてくる主人公のセリフ。


「あた……た」


 緊張からの飽和。当たり目はまたも通常目、くるくる回ってボタンが表示されるもそのまま確定。

 とはいえ区切りを迎えた。

 トータル12000円を使って辿りいた当たり。ボーナスは6Rで終了、時短チャンスゾーンに入るが期待は……。


 画面が暗転、カットシーンが切り替わる。MSへと特攻するセスナ機に、クワトロ大尉が語りかける。前作で宿敵同士だった2人が再会するシーンのアニメだ。

 互いに互いを認識して、そのまま大当たりへと突入した。しかも確変目、7で金色の数字が揃っていた。

 大当たりで降りてくる役物が、ハイパー化していて、カミーユの修正してやる!のセリフも追加。

 SuperFeverへと発展して、16R2400発の大当たりとなった。テーマソングを口ずさみながら、Ptが加算されていくのを見る。

 ふと隣を見れば、隣の人も大当たりに突入していた。こちらよりも100回転ほど多くハマっていただけあって、喜びもひとしおだろう。


 確変だったので、そのままもう一度当たりを引いたが、通常目。『Battle of Z』でまたもジェリドに破れ、大当たりが終了。

 手元に残ったのは3500発ほど。

 回転の悪い台に未練は無く、シロッコとのラストバトルに再会シーンも見れたので、Zはもうしばらく打つ必要はないかな。

 ただそのまま帰るには、余韻を引きずっていたので、店内を見て回る事に。

 禁煙コーナーで昨日打ってたエヴァを見つけて座ってみることに。打ち始めると、スムーズにリールが回る。軽く20回転するペースで保留が溜まっていくのを見て、今までがどれだけ不遇だったのかを実感した。

 しかし、それで当たりが引けるかというと、そうでもなく。気づけば2000発を消費して、一度単発当たりを引くもそこで終了。

 残った1400発ほどをお菓子と交換して、その日を終了した。


 12000円の出費で、ほぼ呑まれた形で終了した訳だが、それなりにレアな当たりを見れて満足もしている。

 ただ、どんなに打ちたい機種であろうと、回転数を無視しちゃいけない。回らなければ当たらない、損が大きくなるだけだ。

 高い授業料にはなったが、肝に命じる事ができた。

 Zは稼働2ヶ月ほど、俺が席を立った時点で9台全てに人が座っていた。その中で俺よりも当たっていた台は1台のみ。

 新機種で人気のある台、多少当たらなくても客を呼べると釘が渋めに設定されていたのかも知れない。

 遊戯を楽しむことを第一に考えるなら、最新機種は避ける方が良さそうだ。そういった事を教訓に、俺は軽くなった財布を心のどこかに引きずりつつ、家路についた。

この作品はフィクションです。台の挙動や演出の流れは忠実なる再現ではありません。

パチンコを打ち、負けは確実なはずなのにのめり込む無様さを描ければと思います……。

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