初日 4台目からの解放
エヴ○で出た2000発を持って移動した台は『ハイスクールオブ○デッド』という漫画原作のアニメを題材にした台だ。
名前の元になったのは、『ハウスオブ○デット』という映画だ。ある日突然、ゾンビが現れて、街中の人がゾンビになっていくというパニックホラー。
それを現代の学校を舞台に再現したのが、『ハイスクールオブ○デッド』だった。俺は原作の漫画から読んでいて、アニメも一通り見た。
ファンという程ではないが、それなりに知識もあるので興味を引かれた。
ただこのアニメを見て最初に思うのは、おっぱいに尽きる。B級ホラーで無駄にシャワーシーンがあるように、色々な所で無駄に色気を振りまいている作品だったりする。それはアニメになることで更なる拍車がかかり、巨乳が揺れる揺れるな作品になってしまっていた。
まあ、パチンコ店自体が18禁なのだ。多少のお色気で尻込みする必要もない。
前置きはそれくらいにして、いざ実践に突入する。台の役物は、画面の左右にいる三人のヒロインで、それぞれにモードを持っているらしい?
最初はメガネキャラの沙耶。たまにアイテムをくれるのだが、青は全然、緑が来てもそこまでの信頼度はない。
そして回転を始めると聞こえてくる声で印象的なのは、平野コ○タ役の檜山修○さんの声だ。小太りでミリオタ系のコ○タのヲタっぽさを存分に引き出している。
そのためか、主人公よりもやたらとこのコ○タの存在感を感じる台になっていた。
エピソードリーチでは、沙耶と教室に追い込まれ、その場にあったガス式釘打ち機を改造して武器にするのだが……あっさり襲われる。
『ハイスクールオブ○デッド』で襲ってくるゾンビは、元学生で学ランやセーラー服姿。かつての友が襲い掛かってくる展開になっている。
そして役物ヒロインからはこぼれてしまっているが、最巨乳の女教師がやたらと色っぽい声を振りまいてくる。
そう、この台はアニメをベースにお色気増し増しで、悩ましい声が連続して襲ってきた。周囲が気になるので、少し音量を下げる。
そうこうするうちに、モードが冴○先輩へと切り替わる。保留の所にちびキャラが現れて、保留の1つを斬りながら駆け抜けると、保留が『!!』のアイコンに変わった。
そのままリールが回る度に、桜の花吹雪が舞いはじめ、3回目の時にモードが発展。桜乱舞ゾーンに突入、かなり熱い演出っぽい。
そのまま、ストーリーリーチに突入。冴○先輩が己の過去を告白するシーン。過剰防衛で相手を痛めつけて悦んでいた罪に、主人公は……絶句して固まり、画面がフェードアウト。
「え、今ので外れる!?」
こちらまで絶句する展開だ。
しかし、この台は回る。20回は確実、時に24回ほど。パチンコの基本は回転数、いくら熱いリーチがでようが、実際に当たるのは多く回せる台。そんなライターの言葉を信じて俺は回す。
赤字幕のエピソードを外し、妄想を爆発ささる主人公は皆に嫌われ、妹を助け出したお兄ちゃんはジャンプした所を奴らに掴まれ、モップで槍術を繰り出すヒロインは押し倒される。
学校の廊下を進む演出で、途中に写真。クローズアップされると、メイド姿の沙耶……。奴らに囲まれたコ○タに投げられた拳銃は見事に外れ、プチキャラの奴らが大量に過ぎ去って……様々なリーチ、発展演出が通り過ぎた。
気づけば2000発の出玉はあっさりと呑まれ、追加投資をしている。400回転を越えて、今日の予算1万のボーダーも越えた。
でも回る台なんだ。
あと少しで当たるはず。
あと千円で来るだろ……。
気づけば自制心などどこへやら。予算を越えての追加投資に踏み切っていた。
2度目の桜乱舞も不発に終わり、口から霊魂が飛び出そうになった時、主人公がヒロインのおっぱいを台座にライフルを射撃するというバーストショットを繰り出した。
女性の体に写真が散りばめられたようなモデルが画面を動き、ストーリーリーチに突入する。
それは主人公が親友を手に掛けるシーン。ゾンビと化した親友の頭をバットで潰すという衝撃的なシーンで、しかもその親友は主人公の幼馴染ヒロインの彼氏。罪の意識はありながらも、心のどこかで邪魔者がいなくなったと考えてしまった主人公の暗い面が垣間見える。
そんな印象的なシーンだ。
そして主人公の決断が、大当たりのトリガーになっていた。
実に533回転、5000円近い投資の末の大当たり。しばし放心した後に、大当たりを回し始める。
この機種も大当たり中は右打ちに変わる。アタッカーに入れば10倍になって返ってきて、その間はジャラジャラと玉が排出される。
パチンコをやる前は「うるさい」印象しかなかったが、このジャラジャラ音は何ともいえない中毒性を持っていそうだ。
『ハイスクールオブ○デッド』は、細かいラウンドが続くタイプの機種らしい。大当たり1回あたりのラウンド数は3〜6と短く出玉も900が最高、エヴ○の一発1500玉というのに比べると物足りなさを感じる。
しかし、ある程度の確変が保証されていて、次々と大当たりを引けるというのは、かなりの快感を与えてくれるのだ。
当たる、当たる、また当たる。
出る、出る、まだ出る。
思わず周囲を見渡すのは、どういう気持ちなのか。見て欲しいのか、出てすんませんという妙な優越感か……どこまで当たるんだという喜びと不安。
某賭博漫画で沼が陥落した時、主人公が様々な事柄を思い出しながら咽び泣く。そんな感情の片鱗の欠片の断片からこぼれ落ちた塵くらいは、感じられた気がする。
終わってみれば10連、出玉としては8000発超、手元に返ってきているのは7550発ほど。
これはパチンコの賞玉システムを考えると、1発入れると10倍になって返ってくるということは、実際は9発しか増えてない計算なので画面上で計測されるポイントより、手元に残るのは少ないのだ。
店を移ってきてからエヴ○での確変で少し稼いだものの、ハイスクールに移って更に追加投資して6000円を使った。でも戻ってきたのは7550発。これは……増えてる?
そこから400発ほどを消化して、まだ21回転ほど回ってそうだが、時計を見ると午後5時を回っている。朝10時過ぎから途中の店移動はあったものの、飲まず食わず、トイレにすら行かず7時間が経っていた。
「やめ時……だな」
俺は返却ボタンを押して、パーソナルカードを出すと交換所へと向かう。受付のお姉さんにカードを渡すと、端玉をお菓子に交換して貰える。チョコクッキーやらスナック菓子を貰いつつ、残りは文鎮に。
これを店外に出て少し行った所に持っていくと、返ってきたのは5千円……あれ?
細かな数値の推移は見てなかったが、7100発の残玉が幾つかのお菓子と交換して、レジの数値は6500超だった気がする。
それが手元に返ってきたのは5千円。
これが最後の落とし穴。交換レートだ。1円で借りた玉は、返すと1円になるわけではなく、何割か減って返ってきたりする。
この交換レートは店舗ごとに違って、この店だと0.77くらいのレートだったらしい。このレートが低いと悪い店……という訳ではなく、そういう店は釘が甘かったりして回りやすい台があったりする。
店側として、悪評が積み重なると客足が遠のく訳で、都心部の何軒も並ぶ激戦区となれば、その変化はすぐに現れるだろう。
ある意味、レートが低い店というのは、大当たりを引きやすい、演出を楽しみやすい店と言えるかもしれない。
ま、実際の内情なんて店員でもごく一部しか分からないでしょうが……本当のボッタクリ店もあるだろうしね。
何にせよ、店を移ってからはマイナス1000円で5時間以上を過ごしてしまっていた。時間とお金の浪費、それを実感すると共に、返ってくる時の快楽も味わってしまった。
「ああ、これはまずいかもしれないな……」
少なくとも今日で辞めてしまおうという考えはなかった。
ということで初日が終了。
収支としてはマイナス6000円、7時間以上居座る結果に。
振り返ると浪費した感はひしひしとわいてくるが、最後に10連の大当たりを引いた余韻が脳を溶かす。
そんな世界を垣間見る主人公でした。