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第六話 同居一日目終了!

 甘いです。かなり甘いです。この小説はこんなふうに続いていくと思います。

「・・・じゃあこれからどうしよっか」


 あの後しばらく頭を撫でながら抱きしめていたが(早紀が無理矢理海斗に頼んだ)そろそろかな、と思って体を離したが、早紀はぽ〜〜っとなって頬を上気させて夢心地のようだ。


 ぽんぽん、と頭を優しく叩いてあげると(なぜか海斗は早紀に対しては動作が優しくなってしまう)はっとなって我に帰ったようだ。


「・・・これからって?」


「そりゃあ部屋割りに早紀の服。それに家事の事とか」


 そうだった〜と頭を抱え囲んだ早紀に大丈夫、と笑いかけて言った


「心配しなくても部屋はたくさんあるしお金だって今まで倒した神獣やら鬼やらの報酬であと三千年は生きていけそうなほどたまってるから大丈夫。あ、使わない分は協会とか市営の建物に寄付しているんだけどね」


 それを聞いて少しほっとした早紀は道理でこの前からご飯が豪華になってたんだ〜と感想を抱いた。


「そうだ。君は広い部屋がいい?どっちでもあるけど・・・」


 と言いながら早紀の顔が少し曇ったのを見てどうした?と問いかけると


「・・・で・・い」


「え?」


「・・・名前で、呼んでほしいの・・・・」


 ものすごく小さな声だったが海斗にはしっかりと届いていた。


「あ、そっかごめんごめん。いつまでも君、とかじゃよそよそしいよね」


 恥ずかしがりながらもこくん、と頷いた彼女に向き直って海斗は改めて挨拶した。


「これからよろしく。早紀」


 真っ赤になってうつむいてしまった彼女に海斗はそんなに恥ずかしいなら言わなきゃ良いのに、と思っていた。(嬉しすぎて言葉が出ない、とは全く考えない鈍感な海斗であった)






 あのあと、部屋は海斗が使っていた向かいの空き部屋を使うことにしたらしい。海斗は一階にある大部屋も進めたのだが彼女がどうしてもここが良い、と譲らなかったのだ。


 今は海斗が早紀を手伝って夕食の準備をしていた。


「そうそう。それはみじん切りにして・・・うん、上手だね、本当に家事できなかったの?」


 早紀は最初は本当に初心者だったのだが、海斗に褒められたいという一心でものすごい上達を果たした。


 そんなことはいざ知らず、早紀の期待に応えて上手くできると早紀を褒める海斗。嬉しくなってもっと上達する早紀、といった構図がもう既に出来上がっていた。


「・・・うん、これで完成。凄いね早紀、教えるだけでほとんど早紀が作っちゃったじゃん」


 そう、海斗がやったのは人参の皮むきとジャガイモを少し切っただけといったほとんど手伝いにも入らない程のものだけだった。


 ちなみにメニューはカレーとサラダである。料理の初心者だという早紀のために誰が作ってもとりあえずまずくはならないものを選んだのだが、これは本当においしそうだ。


「じゃあ、いただきます」


 とカレーを口に運んだ。カレーの野菜は程良く煮込まれていて、とてもおいしかった。自分よりも上手いような気がする、と素直に感想を伝えただけで彼女はとても嬉しそうに笑った。


 次々と箸が進み、何度かお代わりをしてまで完食した。


 その後二人で片付けをした後交代で風呂に入った。早紀には海斗のTシャツと短パンを貸した(なぜかとても嬉しそうだった)


 その後しばらく明日のことなど話した後、二人はそれぞれ自分の部屋に行き、就寝した。(ベットがないので早紀がベット、海斗がソファである)






 辛い・・・一人になった瞬間、海斗と離れた瞬間にどっと悲しい気持ちが押し寄せてきた。海斗と一緒にいたら表れなかったこの気持ち。


 辛い・・・海斗の優しい笑顔が見たい。あの優しい手つきで慰めてほしい。ぎゅっと優しく抱きしめてほしい。


 でも、これ以上は迷惑をかけられない。だから、この身を裂かれるような感情の波にも一人で耐えるしかない。


 辛いよ・・・海斗・・・






 ソファに身を沈めて海斗はどうしたものか、と思い頭を抱えた。


 それは早紀のことである。今頃は泣いているかもしれない。それも当然だと思う、今まで親代わりにしていた人がいきなり犯罪者だと言われ、その上自分を売ろうとしていたのだ。ショックの大きさは考えるまでもない。


 今までは海斗と一緒に居て気が紛れただろうが、一人になるとそれが重圧になって襲いかかるだろう。


 そんなとき、一人になりたいという人と誰かにいてほしいという人のに種類に分かれると思っている(海斗は世間知らずなだけで人の感情に鈍いということは・・・恋愛関係を除いてではあるがない)。


 それに頭もいい海斗は早くも結論をまとめていた。


「(一人で泣くことが辛くない訳がない。誰かが一緒にいてあげなきゃだめだろう。この場合は俺が)」


 彼はこの時にそばにいたのが自分で本当に良かった、と思った。自分は気付いてないが早紀が自分の中で大きな存在を示すようになってきているのは確かだ。


 ソファから立ち上がり、あまり物音を立てないようにして早紀の部屋に向かう(本当は海斗の部屋だが)






 かちゃりとドアが開く音ではっと顔を上げた。


「海斗・・・?」


 必死に押さえようとしたが少し涙声になってしまったのが自分にも分かった。


「・・・・・・・早紀・・・・」


 小さく、しかし優しく名前を呟かれてぴくん、と体が歓喜に震えた。たったそれだけで名前を呼ばれただけでさっきまでの身を切り裂くような痛みは少し和らいでいた。


 早紀は海斗の存在がじぶんにとってすごく特別だと、はっきりと自覚した。


 海斗は早紀の泣きはらした顔を見て顔を悲痛に歪めるとそれをそっと指で優しく拭ってくれた。


 そして、さっき切に願った。今は叶わないと思っていた、勝手にそう思い込んでいたことをされて、びくっと体が震えた。


 海斗は優しく、どこまでも優しく、早紀に安らぎを与えながら言い聞かせるように言った。


「いいか?辛かったら俺を呼べ、泣きたかったら俺を呼べ、逃げ出したくなったら俺を呼べ・・・泣き場所や居場所ぐらい俺が作ってやる。こうやって胸を貸してやれる。世界の誰もが早紀のことを否定しても俺は認めてやる。・・・だから今は、安心して泣いていいぞ」


 断固とした決意が感じられる言葉を聞いて早紀の目からはまた涙が溢れ出る。思わずその心地よい胸に顔を埋めてしゃくり上げた。


 ぎゅっと彼は早紀のことを抱きしめてくれた。慈しむように優しく頭を撫でてくれる。それだけで早紀は天にも昇りそうな程幸福な気持ちでいっぱいになってしまう。


 好きで、大好きで、会ってまだ一日しか経ってないのにこんなに好きな、好きになれる人と出会えて自分は幸せだと思う。


 そんな大好きな彼の胸に顔を埋めながら早紀は泣いた。悲しい涙ではなく、海斗が今自分のそばにいてくれることに対しての喜びの涙を。







 どうだったでしょうか?

 どうやらヒロインが出たとたんに読むのをやめた方がいるようで・・・

 やはり、これはやり過ぎですかね?とも思いつつまだまだ甘さは上がっていきます。

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