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第五話 想い

 これから主人公とヒロインとの絡みがどんどん入っていきます。

 俺の頭の中ではこのあとこの話を遥かに超えるいちゃいちゃっぷりが構想されています。

 では、五話目です。



 最初は訳が分からなかった。明日までのパートナー決めのことを考えながら自分の住んでいる孤児院に行くと、建物は解体され、孤児院を管理していたシスターは警備員に連れて行かれているところだった。


 すぐさま駆け寄って警備員に事情を問いただすと、シスターはどうやら孤児の子供で人身売買をしていたらしい。


 ショックで声も出せずにいる早紀に君もここの孤児院の子供かい?と聞かれたのでなぜかとっさに違います。と答えていた。


 言ってから自分でもビックリしたが、言ってしまったものはしょうがない。仕方なくその場を去った。


 路地を歩きながらこれからのことを考えながら歩いていると、後ろから二人組の男が近づいてきた。


 危機感を覚えた早紀はだっと駆け出して男達から離れようとしたが、後ろの男も走り出してきた。


 大人の男と学生の女子では体力が違うのは一目瞭然。すぐさま追いつかれそうになったので、攻撃魔法を繰り出したりもしたが、易々と破られて鳩尾にパンチを食らった。


 意識がもうろうとし、倒れかけた早紀を男は髪の毛を引っ張って無理矢理起こして何やら話し始めた。


 どうやらこの二人は孤児院のシスターとつるんで人身売買を行っていたらしく元種がなくなった、と言っていた。


 朧げながらそれを聞いていたところに一人の少年が割り込んできた。


 




「というところなんだけど・・・」


 早紀は事情をすべて言い終え、すっきりして海斗の方へ向いた。


 しかし、海斗は何やら考え事をしているらしく、少し待っててと手で合図をしてきた。


 とたんに手持ち無沙汰になった早紀が思い出すのは先ほどの海斗の笑顔と早紀をかばってくれた言葉。それを思い出しただけで体の芯に火がついたようにかっと熱くなり、温かい気持ちになる。


 しかし、すぐに思考にふける。学院で会ったとはいえ、相手は覚えていなかったようだしなぜこんな自分を助けてくれたんだろう。


 今時、あんな面倒そうなものには誰だって首を突っ込もうとはしないはずだ。


 それに先ほどの会話を思い出せば意識操作、と言っていた。それは超高等魔術で、一学生がおいそれと使える術ではない。改めてこの目の前にいる、優しそうで、でも不思議な少年を見つめた。


「・・・うん。まぁ今の話だとさっきの意識操作を使ったことで君にもう害はないけど・・・住むところどうする?」


 その現実を厳しく指摘する海斗の言葉に早紀はがくっと肩を落とす。


 そう。これからの衣食住の確保が全くできていないのだ。これから路地でホームレス生活を送ることもあり得るのだ。それ以外でも水商売ぐらいしか思い浮かばない。


 そう考えただけでも鳥肌が立ってしまう。何しろ彼女は軽い男性恐怖症なのだ。(海斗はなぜか大丈夫)


「・・・そこで、一つ提案」


 これからのことを考えて絶望に浸っているところに海斗からの救いの一言が。


「この家に住む気はない?」


 はい!?と思わず聞き返してしまった。


「いや、そりゃ君の自由だけど・・・行く宛てがないならそれまでここに住んでも良いって言ってるんだけど」


 これから学院を辞めて水商売をすることにまで考えが及んでいた早紀は呆然と海斗の方を見返した。


「いや、君は可愛いし心配するのも当然なんだけど・・・何か放っておけないというか・・・」


 困ったように微笑みながら言われた言葉に早紀の頬は一気に熱くなった。


 そう、早紀の容姿はかなり整っている。水色のきれいな髪を腰までたらし、眼もきれいな水色で宝石を連想させられる。少し冷たい印象を連想させられる容姿も、笑うことによって一気にかわいらしいものへと変わる。


 何気に言われた可愛いという言葉にここまで動揺するとは自分でも思ってもみなかった。今までに何度も言われてきた言葉なのに、海斗にいわれると体の身が熱くなり、とても嬉しくなる。


 早紀は薄々自分のこの気持ちに感づき始めていたが、出会ったばかりなのにそれはない。と思い、意識から閉め出した。


 だが、この案に乗らなければ生きていけない。と、もはや二番目になった理由で無理矢理自分を納得させる。一番目は考えただけで顔から火が出そうだ。


「・・・分かったわ。お言葉に甘えて、住まわせてもらうことにするわ」


 海斗がそんなことするとも思えないのだが、(この時点でかなり海斗を信用している)海斗も男だし、自分はこれでも容姿とプロポーションには結構自信はある方なので、心配しない訳ではなかった。


 しかし、さっきまでは水商売をしてまで生きていこうと思っていたのでもしそうなったとしてもそんなことよりも遥かにましだ。いや、それよりも彼に抱かれることを想像しただけで体が熱くなる。


 だんだんと自分の気持ちを確信し始めてきた彼女はあたしってこんなに惚れやすかったっけ・・・と思ったが、すぐに思い直した。今までに好きになった人はいなかった。

 

 どんなにかっこ良くて優しそうな人から告白されても、その人が早紀の容姿と体が目当てなのはありありと分かった。


 だけど、海斗は違う。純粋に早紀を心配してくれて早紀のことを気遣ってくれている。なぜかは分からないけどそう思えたのでこうしてここにいる。


「・・・そっか、じゃあ今日からよろしく」


 と何処かほっとしたような感じでため息を吐いて笑顔で手を差し出してきた。


 その整った容姿から惜しみなく何度も出される笑顔の度に顔を赤くする癖をどうにかしないと、と思いつつ握手を交わした。






「・・・さて、じゃあ今度は俺の番かな」


 少し顔を赤くしておずおずと、しかししっかりと手を握りしめている彼女にそう言うとえ?と戸惑った声で聞き返された。


 そんな仕草にも可愛いなと思いつつ彼女が気になっているだろう、この自分が持っている力について説明してあげることにした。






「・・・・・・・・・・という訳で、俺はこんな力を持ってるんだ」


 自分の生い立ちから今まで詳しく説明すると、目を丸くしていた。


 硬直から少しずつ解けていった彼女は海斗におずおずと質問した。


「・・・人を、恨んだことはなかったの?」


 そう。彼女には龍夜にも志乃にもさらには母さんや父さんにさえ話していない、俺の秘密を話した。


 それは、十四歳の頃だ。旅に出て母さんから出されていた課題を淡々とこなしていると、俺の力に釣られていろんな人がやってきた。


 初めは無視していたのだが、俺の力を使おうとして俺のことを追いかけ回したり、神獣などと戦ってひどく疲れているところに怪しいくすりを飲まされて変なところに連れ込まれたり、と。


 そんなことがあってからは自分の力を隠して使うようになっていた。その事実を彼女にだけ話した。そうしなければ、何か後ろめたい気持ちになったのだ。


「・・・そりゃああったよ。母さんからはこうすれば人の生活が楽になると言われてやっていたのに楽にする人間からは攻撃を受けたり、力を使って追い払えば異常なほどに怯えられるし・・・一時は自暴自棄になったよ」


「じゃあなんで・・・」


 彼女は心底不思議そうに、だけど何処か怒ったように聞いてきた。おそらく俺のために怒ってくれているんだろう。心の中で感謝しつつそんな彼女に敬意を払って本音で話した。


「・・・一時は、ね。その後、自分が倒した神獣の被害を受けてた村に立ち寄ったことがあったんだ。その時に、村中総出で感謝されてお祭り騒ぎになってさ。その時に、それまで抱えていたものがすうっとなくなったんだ。自分がやったことで喜んでくれる人がこんなにもいる。なら、それに答えよう。ってね」


 ぽかん、とこちらを見てくる彼女に苦笑を漏らしつつ言った。


 しばらくした後に彼女ははぁ、とため息を吐いて清々しい笑顔でこちらの目を射抜いた。


「・・・凄いね、海斗は・・・あたしだったらとてもじゃないけどそうは考えられないよ。でも、それが海斗にの良いところなんだよね」


 彼女の笑顔に見惚れていると彼女は恥ずかしそうに顔をそらした。そこで何か思い出したように手を打つと海斗に不安そうに訪ねてきた。


「あ、あのね・・・あたし、家事とかできないんだけど・・・どうしたら良いかな?」


 何もできなければ追い出されると思ったのかどこかお仕置きを待つ子供の様に縮こまって海斗の言葉を待つ彼女に海斗は思わず手を伸ばして、頭を撫でつつ優しく抱き寄せた。


「あ・・・」


「大丈夫、何もできなくったってこれから覚えれば良い。俺だって一人暮らしをしたのは昨日からだしね。だから遠慮なんてしなくていい。気にしないで住めば良いよ」


 海斗に優しく、髪の毛をすくように頭を撫でられながらどこまでも優しく、包み込まれる様な心地よさの中、言われて彼女はうっとりと目を閉じてうん、と呟いた。


「それに、俺も君と一緒にいられるのは何か嬉しいから」


 と蕩けるような甘い笑顔で言われて、早紀の体温は急上昇した。ここまで本音がにじみ出ていれば、疑い用もなく事実だ。間違いなく女殺しの笑みと言葉だった。


 彼は駆け引きなどとは無縁の世界で今まで生きてきた。なので自分の気持ちをあまり隠そうとは思わない。それを子供だ、と言う者もいるだろう。しかし、これは大変貴重なものである。


 真っ赤になって口をぱくぱくとさせるしかない早紀の方を見てまた笑顔で一言


「これからよろしくね」


 この瞬間、意図せずとも完全に早紀は海斗に落とされた。







 どうでしたか?これからはもっとラブラブ度が上がります。

 感想、評価をくださった皆様、ありがとうございました。皆様の一言でやる気が倍増します。いただいたコメントで眼を通したものはすべて感謝の言葉とともに返していますので、気になった方は覗いてみてください。

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