第四話 出会い
大変お待たせ致しました。ようやくヒロイン登場です。
一つ、皆様にお知らせがあります。この小説は、ハーレムではなく、主人公とヒロインの一対一の絡みを書く予定です。
コロコロさんが書いている勇者以上魔王以上みたいなものもいいのですが、なにぶん素人なのと、真似するのは何か面白くない。ということで、最強の主人公だけど、一対一にすることにしました。
どうぞその辺りはご容赦を・・・では三話目です。
「・・・す、げぇ・・・・・・」
龍夜は絞り出すように声を上げた。
先ほどの戦いは龍夜には眼で映すのが精一杯だった。
「・・・海斗君、凄い」
驚きで固まっている二人の後ろからくすくすと笑い声が聞こえた。
驚いて振り返った二人の眼に飛び込んできたのは友人である海斗と同じ、見事なまでの金髪碧眼。見惚れるような美貌の美女。
「凄いわよ?何しろうちの海斗君はこのあたしさえもを凌ぐんだからね♪」
そう。サリエス・クラージ海斗の母にして史上最高の魔術師である。
意外すぎる人物が現れ、しばらく固まっていた二人だったが志乃が何か気付いたかのようにおずおずと問いかける。
「あ、あの・・・海斗君がクラージさんよりも強いって?」
およそ信じられない言葉なのだが、彼女は軽く頷いた。
「そうよ。一対一じゃ全っ然敵わないでしょうね。この前、卒業試験として夫と二人掛かりでやっと互角ってとこだったから」
彼女の夫、篠宮 龍斗は世界で今二番目に強いといわれている。(もちろん一番はサリエスだ)彼はその独自の武術によって他を圧倒してきた。
そんな伝説のような夫婦二人が同時に襲いかかってもまだ生きていられるのは海斗ぐらいであろう。
遠距離の超エキスパートと近距離の超エキスパート。この二人のコンビはまさに最強であった。
王宮騎士団のジュライド全員を合わせてもこの二人には勝てないだろうとまで言われていた。
だが、その人をしても勝てないといわせるほどの力が海斗にはあったのだ。
「ま、驚くのも無理は無いわね。でも、あれほどの実力があってあれほどの良人格を保っていられるのも凄いと思うわよ?」
龍夜は確かに、と頷いた。確かにあれほどの力を持っていれば力に溺れてしまうこともあるだろう。しかし、海斗は自制心を失わずにあれほど純粋でいられる。
と納得しようと思った龍夜にサリエスは出来のいい息子を自慢する母親の顔で追加した。
「あ、そうそう。あれでもまだ海斗の全力にはほど遠いわよ。・・・だいたい、そうね・・・3%、いや5%ぐらいかしら♪」
聞いたとたん龍夜と志乃の口があんぐりと開く。ジュライドの元隊長を圧倒する力を出しておいてまだ全力の二十分の一ほどだと言うのだ。
そう。海斗は全力など全く出していなかった。その証拠に父親である篠宮 龍斗から教わった篠宮流剣術は一回も使ってない。
「そ、それって・・・」
「しっ、そろそろ動くみたいよ」
サリエスに促され中央付近を見ると何やら喋っていた二人が動き出した。
「(サリエス・クラージに篠原 龍斗だと?あんな伝説の怪物並みの力を持った二人から生まれ、幼い頃から英才教育を施されてきたのか・・・道理で強い訳だ)」
「・・・これを聞いてもまだやる気は消えていませんか?」
先ほど衝撃的な言葉を聞いてしばし放心状態になっていた蘭はその声によって我に帰る。
「・・・当たり前だ」
「・・・わかりました。では、篠宮流剣術を除く全力で相手しましょう」
言ったとたんに海斗の体が蘭の視界から消えた。
これは単に姿勢を限界まで低くし、全力で走っただけなのだがこれを見切れるのはこの世では五人いるかいないか、といったぐらいのスピードだった。
そのまま走り蘭の目の前で体勢を起こし、剣を構えた。
素早くトンファーを構えたのは感嘆に値するが、まだ海斗の攻撃は始まってもない。
先ほどを三割としたら今度は八割の力を込めて剣を横に薙いだ。
しゅきん、という金属音がしたかと思うと蘭の眼が見開かれる。
刃が潰されている剣で、金属製のトンファーを一刀両断にしたのである。
蘭はあわてて斬られたトンファーを海斗に投げつけ、後ろに後退して体勢を整えようとした。
「遅いですよ」
海斗はそう呟きしゅっと効果音が付きそうな速度で間合いを詰め、頭上から一刀両断に斬り掛かる。
またしても金属音が響き渡りもう片方のトンファーもからん、と音を立てて落ちた。
「・・・あ・・・」
蘭は呆然と斬られたトンファーを見つめた。
先ほどはとっさのことであまり気にする余裕はなかったが、潰れた剣で金属製のトンファーを切るなんてあり得ない。
それを現実にするにはどれほどの剣速、どれほどの剣技が必要なのか・・・
蘭は自分では逆立ちしたとしても到底太刀打ちできないほどの実力を見せつけられ、逆に見惚れた。
「・・・ふう」
少し疲れたようにため息をついた海斗にはっとなった。
「・・・参った」
相手にもうこれ以上戦意がないのを確認して、まだ尚言った。いや、言わなければいなかった。
言わせるだけの実力が確かにあった。それに、まだまだ本気を出してないのも十分に分かった。今日はそれで十分だ。
二人して戦いの余韻に浸かっていると二階から飛び抜けて明るい声が聞こえてきた。
「海斗〜〜〜っ」
海斗にはその透き通るような美しい声にとても聞き覚えがあったので、振り仰いで声の主に声をかけた。
「・・・母さん」
ばっと柵を飛び越えて海斗に向かってサリエス・クラージが飛びかかってきた。
あの後、豹変した母に戸惑うみんなに適当な言い訳をしてすぐに帰路についた。
「ふぅ・・・いろいろあったなぁ」
今日は龍夜と志乃と友達になり、担任の先生と勝負をした。
でも、楽しかったなぁと思いながら路地を曲がる。近道なのだがここら辺は少し危ない噂があってあまり人は近づこうとはしない。
だが、腕に自信のある海斗にとってはそんなのおかまいなしに進んでいく。
すると、次の曲がり角の向こうで何やら言い合う声が聞こえてきた。
興味がわいてひょいと覗いてみると、そこには髪の毛を鷲掴みにされた美少女といかにも、といった感じの男が二人いた。
どう考えてもこれはだめだろう。ということで海斗は止めに入った。
「Thou,separate a hand from her」
すると、掴んでいた男の手がぱっと離れた。今のを訳すと汝、彼女から手を離せというものである
今海斗が使ったのは意識操作の術である。相手がこの髪を掴む、という意志よりも強い意志を使って相手の行動を制限する術である(もちろん超高等技術)
男達は、なっと息を飲んだがすぐに冷静になり少女にまた手をのばした。傍らの男は海斗を警戒しているようだったが、そんなものは気にせずにもう一言。
「Do not move from thou,there」
かちん、と動きを止めた男達を呆然と見上げる、意識がハッキリとしていない様子の彼女に
「こっちだ!」
と呼びかけた。するとはっとなりこちらにふらふらと走ってきた。
こちらに来る途中にこけそうになったので、さっと抱き寄せた。
まだ意識がしっかりしていない彼女に
「To thou healing」
と額に手をおいて術を発動した。これを訳すと汝に癒しを、だ。
意識がハッキリしたのかぶんぶん、と頭を振って今の状況を理解したのか、顔を真っ赤に染めた。
そう。いまだ海斗は彼女を抱きかかえたままだった。女性経験が全くと言っていいほど無い海斗はそんなことには気付かずに目の前の男を睨みつけた。
彼女も真剣な表情の海斗を見てふざけている訳ではないと分かったのか少し落ち着いて目の前の男を睨みつけた。
「・・・事情は知らないが、あの扱いはどうかと思うぞ」
腕の仲でこくこくと頷いている彼女がおかしくてくすりと笑みを漏らすとじとっと睨まれた。
「・・・そうか、ただの通りすがりか・・・我らの意思を押さえつけるほどの意思操作を使えるのなら名のある術師なのだろう・・・今日のところは見逃してくれまいか」
男はいまだ海斗の意思操作により押さえつけられているもののじわじわと体を動かしつつ海斗に問いかけた。
すぐさま縋るような目つきで見上げてくる彼女に微笑みかけた。しかし安心させるように優しく微笑みかけたつもりだったのにこちらを凝視した後顔を赤くして顔をそらされた。
少し気落ちしたが(鈍感)気を取り直してはっきりと言い放った。
「そうはいかない。会ったばっかりとはいえ、この娘はそんなことされるようなことするような娘じゃなさそうだしな」
はっとした顔つきで振り向いた彼女にまた微笑みながら続けた。
「と、いう訳だ。理由はこの娘から聞くからとっとと失せな・・・Get rid of memory」
海斗が術を発動させると二人はがくっと頭をたらしてそのまま何処かへ立ち去っていった。
彼女は呆然と脇を通り過ぎる二人組を見送っていたが、ふと我に帰ったように喋りだした。
「ね、ねぇ・・・あなた、たしか学院の生徒・・・しかも、確かわたしと同じ・・・」
そう。彼女も海斗と同じH組の生徒だったのだ。
海斗は事情を説明した。
「あいつらの記憶をなくしておいた。君に関する記憶はすべてね。だからしばらくは大丈夫だと思うけど」
彼女になにがあったの?と無言で念を送った。
それに気付いた彼女は話そうとしたが、今の状態に気付いてまた顔を赤らめた。
海斗はすこし躊躇しながらも彼女と体を離した。(なぜだか分からないが、彼女の赤く染まったかわいらしい顔を見ているとずっと抱きしめていたいと思ってしまう)
彼女は海斗とはなれてほっと息を吐き(この仕草にちょっとむっとした)まずは自己紹介から、と話し始めた。
「まずは助けてくれてありがとう。わたしの名前は長良 早紀。よろしくね」
そう言って弾けるように笑った。その笑顔は人を十分に惹き付ける笑顔だった。(海斗は自分の先ほどの笑顔が十二分に魅力的だということを理解していない)
「・・・俺は篠原 海斗、よろしくな。・・・良かったら何があったのか教えてくれないか」
彼女は頷いたが、ふと辺りを見回してもう少し落ち着いたところで話がしたい。というので海斗は自分の家に招待した。
彼女は少し躊躇するそぶりを見せたが顔を赤くしてこくり、と頷いた。
どうだったでしょうか?前書きに書いたようにこの小説は主人公とヒロインの絡みの小説です(一対一なだけラブラブ度が半端ありません)。なので登場キャラが少ない、と思われた方はどんどん申し出てください。
というよりは、今の予定ではこんな小説、小説家になろうの中には無いと思いますので、新感覚、といった感じで楽しんでいただければと思います。