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第二十話 暫しの別れ?

 また遅くなりました。朝に読もうと思っている方、いらしていたらどうもすみません。

 時間は少し流れて放課後、海斗と早紀は家に戻っていた。


「みゅ・・・ふみゅ・・・・・・」


 早紀がかわいらしい声をあげながら海斗とじゃれ合ってる。本人に言わせれば、幸せすぎて勝手に出てくるのだという。


 今は早紀が海斗の膝の上に乗っていて胸に頬をこすりつけて、幸せそうに微笑んでいる。海斗は早紀の髪の毛を梳いたりいじったりしてその手触りを楽しんでいる。


 早紀はサリエスにも負けない程の容姿をもっている。しかも海斗と一緒にいる時はそのかわいさが倍増している。そんな早紀にこうしてじゃれつかれても平常心を保っていられるのは凄い。というよりは肉欲がないんじゃないか、と思うぐらいだ。


 しかし、海斗にとっては肉欲なんかよりも早紀の方がずっと優先順位が上なのでこれは自然な結果ともいえる。


 しかし、海斗にも人並みの肉欲はある。いつもはその精神力で押さえつけているのだが昨夜は早紀がかわいすぎて我慢できなかったんだろう。


 早紀が海斗に惚れた一因として嫌らしい目つきでじろじろと見てこない、というのは確実だろう。


「おっふたりさーん、いちゃついているところ済まないけど入るわよー♪」


 いつものように元気なかけ声とともにがちゃん、と居間のドアを開けて入ってきた。


 いつものように(家では早紀が海斗の膝の上にいるのは定位置なのだ)いちゃついている二人を見てうんうん、と頷くとにやっとまた例の意地の悪い笑みを見せた。


「二人には・・・とりわけ早紀ちゃんには悪いけど、海斗を一日借りていくわね」


 早紀はええっ!?とあなたの余命はあと三日です。と宣告された患者のように絶望の縁にいるような声で叫んだ。


「なんで?いくらサリエスさんでもそれだけはだめっ!」


 あまりにも必死な様子にさすがのサリエスも苦笑を禁じ得ない。海斗は乗り出してサリエスに掴み掛かろうとまでしている早紀を宥めるのに必死だ。


「ちょっ・・・こら、早紀。暴れるのは話を聞いてからにしろ」


 海斗にソフトに叱られただけで早紀はぴたっと動きを止めた。瞬間的に早紀の頭にひらめいたのは海斗に嫌われたくない、というものだった。最早海斗依存症と言ってもいいだろう。早紀は端から見てもあきれるほど海斗には従順である。


 かといってそんな早紀をどうこうするような海斗ではない。それが分かっているからこそ早紀も海斗に溺れていけるのだろう(実は海斗も相当早紀に溺れているのだが)。


「ありがと海斗。じゃあ理由をいうわね。近々王都から貴族やらなんやらが集まってここでパーティをするんだけど・・・なんか最近また魔獣が増えちゃってね、あたしと龍斗、あんたとあの子達で魔獣をぱーっと掃討したいのよ」


 早紀も馬鹿ではない、というよりは相当いい方だ。頭の回転も速い。なので海斗が行かなければ皆が困る、というのも理解した。理解したけど心がついてこない。そこでどうしようかと海斗を見上げると、


「・・・いかない」


「「えっ?」」


 意外だったようでサリエスも驚いていた。早紀も海斗がこんな回答をするとは思えなかった。思わなかった。


「・・・理由を聞こうかしら?」


 サリエスが軽い雰囲気を払うするように一段低いトーンで話しかけた。


「・・・一番の理由は早紀と離れたくないってこと。二番目は俺がいない事で早紀を一人にさせられない。三番目は俺が加わってもその面子じゃあ一時間も短縮しないだろう、ってことだ」


 サリエスは少し考えて頷いた。


「そうね、一応筋は通っている。けどね、あの子達は魔獣との戦闘経験が少なく、あなたのように全部の魔獣の動きや動作を把握している訳じゃあない。それに、早紀ちゃんの事だって、守りの創成をすれば済む。一番目は、まぁ二人には我慢してもらうしかないけど」


 海斗は俯いてしばらく考えていたが、ため息を吐いて顔を上げた。


「分かった。その代わり早紀の守りの創成は俺がする」


「いいわよ」


 海斗はくるっと早紀に振り返った。悲しそうな顔をしている早紀を見ると決心が揺らいだが心を押し殺して呪文を唱える。今、自分にできる最高のものを、


「I create it. The strongest shield which keeps on protecting it from anything clothes shoes of me follow it to expect it,and show the figure」


 ぶわっと海斗の髪が、服がばたばたと魔力の放出によって、台風の中にいるようにはためいた。海斗が胸の前でポールを持つようにして 創造を始める。


 恐ろしい程の魔力がだんだんと形を成していく。それは一つのペンダントの形をとった。


「はぁっ、・・はぁっ、・・・・・はぁっ・・・・・・・・ふぅ」


 サリエスは海斗が持っているペンダントを見て唖然とした。それは一見どこにでもありそうなペンダントだったが込められている魔力はサリエスの全魔力の二倍はある。このペンダントの加護さえあれば、自分と龍斗が本気で攻撃しても対象はびくともしないだろう。例えるなら核シェルターが百枚あるようなものだ。


「はい、早紀・・・」


 ペンダントを早紀に着けてあげると、早紀はそれはもう嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう、海斗。・・・気を付けてね」


 先ほどの嬉しそうな顔は消えて心配するような顔になった。きゅっとペンダントを握りしめていた。


 海斗は早紀に素早くキスすると、微笑んだ。


「早紀は笑ってた方がいいよ。どんな顔していてもかわいいけど、俺は笑った早紀が一番好きだよ」


 一気にボッと顔が真っ赤になった早紀の頬を大事な物を扱うようにそっと撫でるとサリエスに向き直った。


「・・・いこうか、母さん。速攻で終わらせる」


「速攻で終わらせるって、あんたあんなペンダント作っちゃったら魔力はほとんど残ってないでしょうが」


「ん?いや、後三分の二は残ってるよ」 


「・・・・・・・・・・はぁ」


 サリエスがため息を吐いた。ここまできたらあきれるしかない、という感じだ。


「・・・わかったわ。行きましょうか」






 三人との待ち合わせ場所に行くともうすでに皆ついていたようだ。


「よし、きたな二人とも・・・それじゃあ始めようか三人は西を、俺たちは北と東をやる。終わり次第南に行ってくれ。」


「いや、俺は一人で南に行こう。さっさと終わらせたいからな」


 ぎろっと篠原兄弟が睨んでくる。海斗はさらりと受け流して話を続ける。基本的に海斗は親しい人以外(両親は例外)には少し扱いが荒い。


「三人でやると効率が悪い。俺が一人になるか、それがだめなら母さん達がマンツーマンになって篠宮達をカバーすればいい」


 その様子を見て龍斗がにやりと笑った。


「そんなに急いでどうした海斗?やっぱり愛しの彼女が気になるのか?」


 海斗は事もなく頷くと、早紀を促した。


「そういう事だから、さっさと行こう」


 ここまであっさりと認められるとからかいようがないので龍斗も肩をすくめただけにしといた。






 早紀は去っていく海斗の姿を見てひどい喪失感に襲われたが、明日になったらまた会える。と思い、気を取り直して家に戻った。


 家に戻った後、誰もいないのに気付いた。そうだ、この家では常に海斗が自分の側にいた。大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせて自分の部屋に向かった。その時にはもう、無意識に《氷姫》の仮面をかぶっていた。


 部屋に戻って、海斗が書いた小説を読んでいた(いつの間にか書いていたらしい)。


 この小説は早紀がヒロインで世界中を旅する物語だった。出てくる登場人物に見覚えがあり、思わず笑ってしまう。先ほどまでの喪失感は薄れていた。


 そろそろいい時間だったので本を閉じた(なんとこの本シリーズ物で、しかも十冊以上あってまだ増えている)。本当にいつ書いているのか不思議だったがベットに潜り込んで寝ようとした。が眠りにつけない。


 一時間程ペンダントを握りしめてごろごろしていたが眠りにつけない。そのうちに海斗は大丈夫かなぁとか無駄な心配をし始めた。


 もうそうなったら止まらない、海斗の力や海斗の事を信頼はしているが、心配するのは違う。やっぱり好きな人の事を心配するのは当たり前だろう。


 早紀は不安な気持ちに駆られてベットから降りた。その足で海斗の部屋のドアを開けた。


 海斗の部屋に入ると、心が少し落ち着いた。海斗の部屋には海斗の存在が感じられる。机の位置、机の上にある小物、枕が少しずれているところとかに海斗が生活しているのを感じられる。


 いそいそと海斗のベットに潜り込んだ。とたんに心臓がどきん、と高鳴った。


 ベットには海斗の匂いが立ちこめていた。その心地よい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。海斗に包み込まれているような感覚に陥る。


 帰ってきたら力一杯抱きしめてもらうんだから、と思いながら眠りについた。







 どうだったでしょうか?番外編は先着順で時間が空いたら書いていこうと思うので、よろしくお願いします。ちなみに、カップルリングを壊すような話は(例えば海斗×志乃、龍夜×早紀など)やめてください。

 まずは、緑丘さんの龍夜の過去編から書きたいと思います。

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