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第十九話 テスト

 すいません、少々遅れた更新となりました。

 海斗の影の努力(?)も明るみに出て、ますます仲が良くなった四人はホームルームが始まっても仲良く喋っていた。


 海斗が王都の話をしていたところで蘭が静かにしとけっと叫んであの修学式の日に龍夜がやられたあのあり得ない軌道を描いて飛んでくるチョーク攻撃をしてきた。


 残念ながら今回は海斗がそばに居るのでしゅばばばっとすべてのチョークを指先でつかみ取った。


「「「「「おお〜〜〜〜」」」」」


 クラス中から歓声が上がる。そんな中これ幸いと早紀は海斗に抱きついて、子猫のようにじゃれついていた。


「ちっ、海斗が居たか・・・おいおまえら、静かにしとけこれから今日のテストの説明すっからな」


 この学院はテストの成績によっても授業待遇などが変わってくるので皆若干前傾姿勢である。


「各教師が魔力解放をするから、魔力の色を当てろ。そんでもって他にも何か見えたら担当の奴に言ってみろ、ボーナスがもらえるから」


 え〜〜〜っ!?と教室中がざわめいた。みんな魔力を見ることができたら合格だと思ってたに違いない。


 蘭は意地の悪い笑みをして教室を見渡していたが、海斗達のところを見て怪訝な顔に変わった。


 そこでは海斗が魔力解放をして魔力で志乃と龍夜と書いていた。


 何でそんなことをしているのか分からずに首を傾げていた。


 なんじゃそりゃ、と思いつつも志乃と龍夜が顔を見合わせて笑っているのを見て蘭は理解した。


 これは練習だ、と。おそらく昨日にでも海斗が教えたんだろう。字を読めるようにするなんて、よほど教え方がいいか才能があるか、あるいは両方か・・・


「さあ、いくぞ、おまえら一番いい成績とってトップ維持しろよ?」


 


 


 またしても武術場に来たH組。


「さて、お前ら一人ずつ入っていけ」


 と、カーテンで区切られた場所がいくつもあるところを指差した。


「いこうぜ、志乃」


 龍夜は志乃と一緒に入っていった。


「俺たちも行こうか」


 海斗が、早紀の好きな優しい笑みをしながら促してきた。


 うんっと答えて海斗の腕に抱きついた。海斗は柔らかく受け止めてくれて、歩調も合わせてくれる。


 海斗のそんな些細な気遣いに嬉しくなって頬が緩む。海斗と一緒に居ると、嬉しくって嬉しくってついつい笑顔になってしまう。


 海斗と分かれてカーテンのしきりを開けて中に入った。


「お、・・・来たね。早速始めようか」


 三十前後といったどこにでも居そうな男の先生だった。


「いくよ、見えたものを正直に言ってくれ・・・ふっ」


 ゆらぁ、と魔力が立ち上る。早紀はすぐさま眼に魔力を集中させる。


 赤い魔力で、机のようなものがあるのが見えた。


「赤い机を魔力で作っているのが見えます」


 海斗と一緒に居る時は出したことがないような平坦で感情を抜いた声。海斗と居ない時の、《氷姫》と呼ばれていた頃の自分。まだ、海斗や龍夜以外の男性とはまともに接することができない。その視線がひどく気持ち悪く感じる。


「なっ・・・魔力視を知ってから一日で!?何でそんなに早く、こんなのは篠原兄弟や篠宮ぐらいしか・・・っそうか、君は篠原といつも一緒に居る・・・たしか中等部では《氷姫》って言われていた・・・だから・・・」


「そんなことよりも、けっかはどうなんですか?」


 興奮して次から次へと言葉を紡いでいく男子教師に早紀はやはり平坦な声で淡々と言葉を紡いだ。


 早紀の男性恐怖症は実は中等部の時に男子生徒に三人ぐらいで襲われたからであった。幸い、早紀はそのとき通りかかった女性教員に助けられたが、心の傷は深かった。海斗に癒されて少しは治ったかとも思ったが、海斗に触れてさらにひどくなったようだ。


 相手は興奮していたところに冷めた声で返されて勢いを失ったらしい。


「あ、ああ・・・文句無し、だ。120点だ」


 と言って点数を書いた紙を手渡してきた。


 ありがとうございます。と言ってすぐさま踵を返す。すぐにでも海斗に会いたかった。


「ちょっとまってくれ」


 呼び止められて、仕方がなく足を止める。


「君が、その、篠宮と一緒に居る時はあんなに楽しそうなのに、他の男子では対応が変わるのはなぜだ?」


 少し迷ったが、答えることにした。海斗のいいところを話そうとしたらそれこそ一日中どころか三日は話し続ける自信があるのでぐっと我慢して簡潔にまとめた。


「・・・海斗は、一人だったわたしを救ってくれた人だったから」


 海斗の笑顔を思い出した途端、思わず頬が緩むのを押さえられなかった。そうだ。言葉にして気付いたがあのとき自分は一人だった。上っ面の好意を貼付けて体が目当てで寄ってくる男子。それをことごとく断ると、女子にも敬遠されるようになって、本当に一人だった。寂しかった。誰かと一緒に居たかった。それは叶わないと思っていた。だが、海斗に出会って世界が絶望から幸福に変わった。


 早紀が見せたのは微笑でしかなかったがそれでも相手の視線を釘ずけにするのには十分の威力があった。


 海斗への気持ちの再確認のきっかけを作ってくれた彼に心の中でお礼を言ってからカーテンをまくって出た。


 カーテンをまくると、心配そうな表情で待っている海斗が待っていた。


 瞬間、《氷姫》の仮面は脱ぎ捨てて海斗に抱きついた。


「海斗!」


「おっと、どうした?」


 いつものように頬を彼の胸にこすりつけて、深い安堵感と幸福感を感じる。ううん、と首を降ってから、テストの結果や見えたものなどを嬉しそうに話し始めた。


 頬を紅潮させ、眼はきらきらと輝いている。その無邪気な様はまさに恋する少女で、先ほどまでの面影はいっさいない。 


 そのまま海斗にくっついたまま歩き始めた。


 さすがに歩きにくかったのか、海斗が横抱きに抱えてくる。


「きゃ〜♪」


 わざとらしく悲鳴を上げて海斗の首筋にしがみついた。海斗は微笑んでそのままゆっくりと教室に向かって歩き出した。


 額を合わせるようにして絶えず笑いながら楽しそうに話す二人を周りは羨ましそうな眼で見ていた。


 二人は視線をはばからずに堂々と教室まで戻った。







 番外編を書こうと思ってるんですが、主となる人物やそのシュチュエーションを希望なさる方があればどんどん言ってください。できる限り希望に応えようと思います。 

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