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第十一話 買い物

 

 あの後いくつかの試合をこなし、結局海斗達H組は九勝という結果を残して優勝した。


「よっしゃあ、これで俺の給料プラス&お前らの授業待遇アップだ。喜べ〜」


 蘭が余計な一言とともに勝ち音頭をとった。授業待遇アップとは、H組だけ特別にすこしコツを教えてもらうとかそう言うものだ。


「・・・にしてもお前ら凄すぎだよ。海斗はともかく早紀も学年トップレベルだろ?最強ペアじゃねぇか」


「ん?そうか?」


 と龍夜と雑談していた海斗は早紀に視線を向ける。そこには志乃と楽しそうに喋る、珍しく海斗と一緒にいない早紀の姿があった。


 早紀を見ると思わず頬が緩んでしまう。これは最早条件反射のようなので仕方ない。


 こちらの視線に気付いた早紀がにこっと笑って手を振ってきた。手を振り返して龍夜の方に意識を向けた。


 するとそこには自分と同じようなことをしている龍夜の姿があった。


「・・・なんていうか、俺たちってやっぱりバカップルなのか?」


 と当たり前のことを再確認した海斗であった。(だからといってどうということはないが)






 時間は少し進んで今は龍夜と分かれての志乃と三人での帰宅途中だ。


「あ、見えてきた見えてきた」


 早紀の言葉に喋っていた意識を前に向けた。そこには商店街が広がっていた。


 そう。今は早紀の生活用品を買いにきているのである。だが、女性同士じゃないと入りづらい店もたくさんあるので龍夜には無理を言って志乃を借りてきたのである。


「さてと、それじゃ俺は皿とかベットとか買ってくるから」


「うん」


「気をつけてね」


 買い物で何に気をつけるもないだろう、と思うのだが本人は至って真剣で心配そうな瞳で海斗を見上げていた。


 笑って大丈夫だ。と返すと早紀は安心したように息をほっと吐いたがすぐにまた表情が曇る。


 その理由が分かった海斗は素早く抱きしめて軽いキスをした。


「あ・・・」


「少しの間、離ればなれになるけどしょうがないか」


 早紀は少し頬を染めてうん、と頷いた。


「じゃあな」






 なんだかんだ言って女性同士の買い物は楽しいものである。特にお年頃の二人にとっては。


「あ、これいいんじゃない?」


「あ、そうですね・・・あ、こっちもかわいい」


「あ、ほんとだー。すいませーんこれくださーい」


 とかなりのハイペースで物を買っていく。洋服、小物とどんどんと買われていくが早紀の持っている袋につめただけで消えていく。


 これは海斗が創造魔法で作った転移魔法がかけられた特別な袋だ。行き先は常に海斗の家の居間に設定してあり、手が荷物でいっぱいになることはなかった。(これは海斗が早紀のために考えた案)


 さらに、二人とも類い稀なる美少女である。ナンパとかの類いはそれこそたくさんあるのだが、海斗からもらったペンダントを相手にかざすだけですぐに相手は早紀達のことは忘れ、次の相手を捜しにいってしまう。これも海斗が作ったペンダントなのだが、これは先日海斗が早紀を守るために使った術が早紀の意思で発動できるようになっている。


 これらの物を作って一つずつでも貴族に売ったりしたら一生遊んで暮らせるだけの金が手に入るが、海斗は金には困ってないのでそういうのには興味はなかった。


 何しろこの海斗の細かい気配りのおかげで二人は買い物に集中できるのである。(ちなみに志乃にも早紀と同じ袋を渡してあり、転送先は志乃の家だ)


 こうして二人は買い物を終えると、(早紀が海斗からもらった五万円を使い尽くしてしまったからである)海斗との待ち合わせである噴水公園の前に向かった。


 海斗は確かにそこにいた。だが、彼の周りには人だかりができていてよく見えない。


 早紀達は透視の魔術を使って海斗の様子をうかがった。


 するとごろつきのような人たち五人程に囲まれた海斗の姿と、海斗が助け起こしている上品そうなおばあさんの姿があった。


「あ・・・」


「これは・・・海斗君、人助けですかね」


 周りの人々の兄ちゃん逃げろや、そんな奴らやっちまえという声を聞く限り彼らは嫌われ者らしい。


「ああ?今なんつった?おまえ」


「この方に謝れ、と言っている」


 海斗は堂々と、臆することなくリーダー格らしい男に言い放った。


 周囲からは歓声が上がった。反対に男達は少し怯んでいた。五人掛かりで囲んでいるにも関わらず、この男は全く動じることなく自分たちに歯向かってきている。


「・・・ふん、ギャラリーがいるからって強がってんじゃねえよこのやろう」


 ぱちん、とリーダー格の男が折り畳みナイフを取り出すと、他の四人もそれぞれナイフを取り出した。


 突然取り出された刃物に怯み観衆がうっと怯んだ。しかし海斗は至って冷静に言い放った。


「謝る気がないのなら力で這いつくばらせてやるが・・・どうだ?」


 この言葉に男は切れて襲いかかってきた。


 海斗はすっとおばあさんの前に立ちふさがるとナイフを持つ手をひねった。


「うっ」


「まずは一人」


 鳩尾にどすっと膝蹴りを入れて昏倒させた。


 仲間がやられたことによってさらに怒り狂った男達は一斉に海斗に向かって襲いかかった。その眼に理性の色はなく、観衆は海斗の身を案じたが、その必要はなかった。


 まず最初に襲いかかってきた男のナイフを蹴り上げて、怯んだ隙に腕をとって一本背負いで放り投げた。


 男は軽々と吹っ飛んで二重三重に囲っていた観衆を超えてさらにその奥の噴水に向かって飛んでいった。


 見事な放物線を描いて飛んでいく男に観衆はおお〜〜〜と歓声を上げた。


 後の三人は両側からナイフを振り下ろしてきた。正面の男は顔面めがけて突きを繰り出した。


 海斗は両側のナイフを一本ずつ左右の指の腹で一本ずつ受け止めると正面の突きを顔を傾けてかわした。


 見事な見切りだった。手は全く傷つけずに両のナイフを受け止めてみせた技量は感嘆に値する。


 絶対よけられないと思ったのか、眼を見開いて驚いている正面の男に思いきり頭突きをかました。


 痛みで男がうずくまると両側にいる男のナイフをばきっと折った。


 なっ!?とあっけにとられている男達に回し蹴りをかまして一撃で昏倒させると目の前でうずくまっている男の背中に軽く正拳突きをかました。


 うっ、と思わず体を起こした男を見下ろして海斗は冷静に言った。


「このまま仲間を連れてすごすごと帰るか、このままあがいて五人とも警備隊に突き出されるの・・・どっちが好みだ?・・・ああ、そうそう。前者の場合誠心誠意このおばあさんに謝ってから帰れよ」


 すぐさま自分だけ帰ろうとした男に釘を刺しておく。男はおばあさんの方へ向いて、すいませんでしたぁ!と頭をこすりつける勢いで謝っていた。どうせ次の日には元に戻るのだろうが、町を歩きにくくなるのは間違いない。


 海斗はそのまますたこらさっさと逃げ帰った男を見てため息を吐くと、


「These people to the cause of his person」


 と呪文を唱えた。するとその場で昏倒している三人と噴水に浮かんでいた男が前を逃げる男に向かって一直線に飛んでいった。そのまま折り重なって倒れた男達に海斗はもう一言


「Disappear」


 下敷きになってもがいていた男が上の男達とともに掻き消えた。誰がやったかは一目瞭然で、皆海斗を凝視していた。


 やっぱ使うべきじゃなかったかな、と思っていると、観衆が大爆発した。


「すっげぇ、すげぇぞ、兄ちゃん」


「おれ、こんなに強い奴は見たことない」


「魔術の腕もかなり冴えてるね〜」


「俺、あいつら昔から嫌いだったんだ。ぶっ飛ばしてくれてありがとな。すっとしたよ」


 皆口々に海斗を褒めちぎる。海斗の肩をばしばしと叩いて豪快に笑う者もいた。海斗は一躍ヒーローとなってしまった。


「海斗っ!」


「海斗君」


 志乃と早紀が人込みをかき分けて進んできた。


「かっこよかったよ、海斗。一瞬でばばばってやっつけちゃって」


「そうです。ちょっとすっきりしちゃいました」


 観衆は思わぬ美少女が現れたことによってまたさらに沸いた。しかも二人はこの騒ぎの主人公と親しいようなので、またさらに沸いた。


「ありがと。・・・ここから離れようか。ちょっとここは話しづらい・・・二人とも買い物は終わった?」


 頷いたのを確認してから海斗は呪文を一言唱えた。


「Return」


 しゅっと海斗達の姿が掻き消えた。観衆は海斗達がいないのに気付いてもしばらくはその熱が収まらなかった。







 どうだったでしょうか?まだまだキャラの人気投票は受け付けていますので、どんどん送ってください。

 

P,S

 いつも感想を書いてくださってる皆様、ありがとうございます。実行者は見た感想には必ず返信しているので、どんなものか気になった方があればどうぞご覧になってください

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