常闇の森《邂逅》
ここは陰惨とした深き森の奥深く、一筋の光すらも差し込まないような深淵の魔境。
スタッ、スタッ、スタッ……
近年では、高い技術力を手に入れた人間達の手によって年々その数を減らすいっぽうの魔物達だが……
『グギャァァァー!!』
『バオォォォッ!!』
『シャァァァー!!』
ここ【常闇の森】では違う。肥沃で多湿な環境が森を焼き払う事を防ぎ、生息する種の多様さによって特定の弱点を打ち消す……この森はまさしく魔物達にとっての最後の楽園だった。
「七等級、氷、鎖、射……」
そんな魔物の領域を悠然と進むは、この森唯一の住人で有るこの女性。名前をルクセリアと言う。
「……【凍てつく氷鎖】」
『グギャッ!?』
『パオッ!?』
『シャアッ!?』
彼女は、この【常闇の森】で、死を回避出来るだけの力と……
「安心して、私は薬草を採りに来たのよ。……あなた達には決して危害は加えない」
『グギャーー?』
「ええ、薬草を採り終えたら【凍てつく氷鎖】の拘束もちゃんと解いてあげる」
……生き続けるための術を持った、唯一の人間だ。
「ふぅ、全部採れたわ。……三等級、無、気、波【魔法消去】」
『グギャッー♪』
『パオッー♪』
『シャアッー♪』
「今度からはちゃんと相手の力量を見極めてから戦いなさい。……もしもあなた達が襲った相手が私で無かったら、今頃あなた達はこの世界にいないわよ?」
『『『………』』』
「──ふふっ、さようなら。あなた達とまた生きて出会えますように……」
魔物達の無事を祈って別れると、ルクセリアは歩き始めた。
……ルクセリアはこの森の中でも三本の指に入る実力者だが、それでも危険な相手は存在する。それに此処では予期せぬ事態が起きるのが日常……油断は出来ない。
だから、採るべき物を採ったのならば、彼女は速やかに『安全地帯』へと帰らなければいけないのだ。
ファァァァーン!!
突然、ルクセリアの目の前に強烈な光が走った!
「!? ……【絶対防御障壁】!!」
有りとあらゆる困難を想定した彼女は、自分の持ちうる中で最強の障壁を展開する!
そして、光の中から現れたのは……
「……子供と妖精?」
そこに居たのは、十歳ぐらいの気を失った少年と黒白二色の羽を持つ怪しげな妖精。
───此処では、異常こそが日常だ。




