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第三話

視界が元に戻り気が付くと俺は先程までの教室に居た。時間が経っていなかったようで、目の前では腕を斬られた鬼が怒り叫んでいる。


何だ? 今の?


 【主人公】【放課後】【物語】、青春? 殺すとポイント? 存在が自体が抹消?

頭の中をぐるぐると単語が駆け巡った。

 まだよく分からないが、今はそれよりも……

 俺は鬼が痛みでのた打ち回っている今のうちに鬼の手から解放された羽杵さんの手を掴み直ぐに教室を出た。咳き込みながらも何とか羽杵さんは足をもつれさせずに走っている。校舎を出るタイミングでさっきまでいた教室のドアが周りの壁ごと勢いよく吹き飛んだ。


「ニゲンナーーーーーーーーーーー!!!」

 

取り敢えず警察! できれば自衛隊を!!


 羽杵さんを連れて校門まで走る。しかし、学校の敷地から出ようとすると見えない何かにぶつかった。


「なんだこれ?」

 

 見えない壁に阻まれ外に出ることが出来ない。持っている剣を試しに叩き付けてみるがビクともしない。


「無駄よ、【放課後】中は外に出れない」


 息を切らせた羽杵さんが俺に話しかけてきた。


「放課後ってさっきのなんか変な奴が言ってたやつか? ポイントとか物語とか……」

「――やっぱり【主人公】になっちゃったのね……」

 羽杵さんは悲しそうに言った。

「あの鬼も【主人公】? 羽杵さんも? こんなこと毎日してんの?」

「三河君、意外と落ち着いているわね。最初はもっとみんな慌てるものなのだけれど」

まぁ伊達に他の人の倍生きてないからね。

「聞きたいことが山ほどあるんだけど……」

「気持ちはわかるけど今は目の前の問題に対処して、ここに居たらあいつが追って来る。こっちよ」

 

 羽杵さんの後ろをついて行くと部室棟に辿り着いた。そのうち一つに入り、一息つくここは……テニス部かな? ボールとラケットと漫画が散らばっている。


「多分ここは安全よ。あいつ校舎壊しきるまで出てこないと思うから。因みに分かってないと思うけど、あいつ黒木よ、同じクラスの」

 

 あいつというのはあの鬼の事だろう。しかし、クラスメイトのほとんどを忘れてしまっている俺は名前を聞いてもピンと来ない。


「何とかして今回であいつを倒したいの」

「倒すって殺すってこと?」

「あいつもう一人殺しているのよ? 三河君にはわからないでしょうけど……この放課後は入学式の次の日から始まっているの。うちのクラスは本当は42人だった。他にも隠れてるけど【主人公】になった人はいるの、でもあいつが一番この【放課後】に乗り気よ、三河君が運よく手傷を負わせて冷静さを無くしている今がチャンスなの! まともに戦ったら次の放課後には殺されるかもしれないのよ!」

「よし、わかった。でも勝算はある?」

「まず三河君の能力は何?」

「これだと思うこの剣」

「……隠さないで、何の御伽噺なの?」

「ガイドが出てこないんだ。何かへそ曲げて出てこないって言っていたよ?」

「そんなわけが……そう。本当みたいね。私のガイドがあなたのガイド見えないって言ってる……」

 羽杵さんは考え込むようにして顎に手をやり狭い部室の中をせわしなくぐるぐると歩き回った。

「でも少なくともその剣でダメージを負わせられることは分かっている」

「まぁ次はあいつも警戒して近づいてこないと思うけどね。今もすぐには追ってこないで校舎にいるのも逃げ場無くす為でしょ? 遮蔽物のないグラウンドとかであの馬鹿力で何か投げて攻撃とかされたら何も出来ないよ?」

「次の【放課後】ではそうしてくるでしょうね。放課後が終わると傷も消えるし……」

 しばらく沈黙が流れた、遠くでは黒木君が頑張っているんだろう。雷のように爆音を鳴らしながら地響きが聞こえる。絶賛解体工事中だ。

「でも弱点はわかった、あいつ斬られる時三河君が剣を持っていることに気付いていなかった」

「箒と思ったんじゃない? 俺もまさか箒が剣に変わるなんて思ってなかったし」

「いや私には振りかぶる前の段階から剣に見えたわ。多分あいつあの姿になっている時、目が見えていないのよ。そりゃあ私ばっかり狙うはずよ私の能力の意味がないんだもの」

「羽杵さんの能力聞いていいかな?」

「私の能力は……少しの間だけ透明になれるの。それで今までは逃げ回っていたんだけど……」

「そうか……」

 俺を巻き込まないようにして今回は逃げられなかったってわけか……何故無視すればいいのに俺を守ってくれたのか気になるが、それは今聞くことじゃないだろう。今は黒木君を何とかしなければ。

「能力って御伽話から来てるんだよね?」

「そうよ、例えば私の【物語】は【不思議の国のアリス】、透明になる能力もチェシャ猫から来ているの」


案外あっさり教えてくれたな。隠してくるものだと思ったけど……


「あいつの物語が分かればいいんだけど、まだ他にに能力があるかもしれないし」

「そう言えば、、あいつが彩を……最初に死んだ女の子のことだけど……あいつすごい大きいトンカチみたいなもので殴って殺してた。多分、今の鬼なる能力は彩を殺して貰ったポイントで増やした能力よ」

「じゃあ最初は俺の剣みたいにそのトンカチをだす能力かもしれないってことか……」

「でも鬼が出て来る話なんて日本じゃ沢山ある。私も調べたけど分からないのトンカチも私が何となくそう思っただけ、で金棒か何かの一種の可能性もあるし」

「しかも、目が見えない鬼って候補が多いな……」


 大体、強い鬼は弱い者が鬼の目を潰して退治するパターンがある話は多い。桃太郎の雉、一寸法師、節分の豆etc

 羽杵さんの物語が不思議の国のアリスでチェシャ猫にちなんだ能力が使えるなら、これらの物語のどれでも可能性はある。


トンカチ

盲目


 俺の予想だが視力を代償にしてあの力を得ている?

 俺達の能力透明になったり剣を出すだけだったりと比べてあいつの能力強過ぎないか?

 だって今も一つ一つ教室粉砕しているんだぞ? 


「ドコイッターー!!」


ここまでスゲー爆発音が聞こえる。さっきのはマジで隙をついただけだったんだな。


でも《《あの物語の鬼だったら》》あの強さも能力も納得がいく。


「賭けてみる価値はあると思う」


「なにか当てがあるの?」


「あいつには目が見えなくなる以外に《《もう一個弱点があるかもしれない》》」

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