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あるどろぼうのものがたり

作者: 真乃晴花
掲載日:2012/07/28

まえがき


今回は童話風なお話をお届けいたします。中身はそんなに童話っぽくないので、風ということで。

 私にとっての理想郷を書いてみました。お話としてもありえない内容です。しかも、説教くさいです。聖書の引用文が終わりにもあります。そういうのにアレルギーがある方はさようなら……また別の物語で……正直、需要あんまなさそうだなー…とか思いながらこんな変形の本つくってみましたよ。

ではでは。ベタなちょっといい話好きさんは、どうぞ最後までおつきあい下さい。


2010 11 14 Natural maker 真乃 晴花


 ほかにも、二人の犯罪人が、イエスと一緒に死刑にされるために、引かれて行った。

「されこうべ」と呼ばれている所に来ると、そこで人々はイエスを十字架につけた。

 犯罪人も、一人は右に一人は左に、十字架につけた。

 そのとき、イエスは言われた。

「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」

 人々はくじを引いて、イエスの服を分け合った。

 民衆は立って見つめていた。議員たちも、あざ笑って言った。

「他人を救ったのだ。もし神からのメシアで、選ばれた者なら、自分を救うがよい」

 兵士たちもイエスに近寄り、酸いぶどう酒を突きつけながら侮辱して、言った。

「お前がユダヤ人の王なら、自分を救ってみろ」

 イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札も掲げてあった。

 十字架にかけられていた犯罪人の一人が、イエスをののしった。

「お前はメシアではないか。自分自身と我々を救ってみろ」

 すると、もう一人の方がたしなめた。

「お前は神をも恐れないのか、同じ刑罰を受けているのに。 我々は、自分のやったことの報いを受けているのだから、当然だ。しかし、この方は何も悪いことをしていない」

 そして、「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」と言った。

 するとイエスは、「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。


ルカによる福音書 / 23章 32節 日本聖書教会 新共同訳



 あるところに、なんども泥棒をしては、逃げ回り、ある時は捕まり、脱獄と泥棒を繰り返していた男がおりました。

 そんな男の耳に、信じがたい噂が聞こえてきます。

 大陸の一番東の国、ルジーザ王国では罪を犯しても、裁かれることがないというのです。

 どろぼうの男は、その噂が本当かどうか、確かめに行きました。

 ルジーザ王国へと続く街道で、乗合い馬車に乗ると、乗合わせた老夫婦に聞きました。

「ルジーザ王国が、刑罰法を撤廃したっていうのは、本当かい?」

「ああ、そうらしいね」

 おじいさんが答えました。

「ほほほ、こんな田舎だもの。ルジーザの牢獄は今まで使われたことがないもんだから、お大臣さんが認めたってねぇ」

「ははは、いやあ、天才の王子さんはやることが違うって、言っておったんだよ」

 老夫婦は至って明るく言いました。

 どろぼうは驚きました。どうやら、噂は本当のようです。

 馬車に乗ること、丸一日、太陽が沈んだ頃にようやくルジーザ王国の国境を越えました。

 ですが、そこはお城からはまだまだ遠く、あたりは畑と牧場がひろがるばかりでした。

 どろぼうは唖然とします。食事ができるようなレストランもなければ、宿屋もありません。

 ですが、どろぼうは困りませんでした。

「へへっ、こういう時はどっか適当な家に乗り込んじゃえばいいってね」

 どろぼうはそうもらすと、手近な一軒の家へ近づきます。

 ポケットからナイフを取り出して、勢い良くその家のドアを蹴りました。

「金と食いもんよこせ!!」

 どろぼうは大声で言いました。

 家の中には、穏やかそうな老夫婦がいて、食事をしていました。

 老夫婦は驚いていました。

 ですが、老夫婦は動じませんでした。

「おやおや、お腹が減っているのかい?」

「こっちへ来て、食べなさい」

 老夫婦は、さあさあと、どろぼうの手を引いて、テーブルに座らせました。

 驚いたのは、どろぼうの方でした。

 どろぼうの前に、湯気のたちのぼるスープが置かれました。美味しそうな、良い香りがします。

「たくさんあるから、遠慮せんでお食べ」

 おばあさんが優しく言いました。

 でも、どろぼうは気をとりなおして、声を荒げます。

「金を出せって言ってんだよ!!」

 こんどこそ、老夫婦は驚きました。

 ですが、それは少しのことでした。

「うちにお金はどれだけあったかねぇ」

 おばあさんは立ち上がって、タンスの方へ行きました。

 そして、手にわずかなお金を持って、戻ってきました。

「これしかないけんども、持っていきね」

 そう言って、どろぼうの手に、お金をしっかりとにぎりこませました。

「さあ、はよ食べなさい。冷めてしまうよ」

 どろぼうは、手の中を見ました。

 銀貨が少しと、あとは銅貨ばかり。安い宿屋に泊まれば使い果たしてしまう程度のもの。

 ですが、どろぼうはそのお金をそっとしまいました。

 ナイフもしまい、代わりにスプーンを手にして、スープを飲みました。

 スープは、とっても美味しいものでした。

「ちゃあんとベッドあるから、好きなだけ泊まっていきなさい」

「ばあさん、こんな若いひとが、こんな田舎に用事があるわけなかろう?」

「ああ、首都にいきなさるか?」

「いつでもいいけんど、ミルクさ運ぶ馬車が市まで行くけ、乗せてもらえ。そこでまた、首都の方さ行く馬車でも見つけて、乗せてもらえばええ」

 老夫婦は親切に教えてくれます。

 どろぼうは、たらふく食事をしたあと、その家に泊まりました。

 ベッドのふとんは、太陽の匂いがして、とても心地の良いものでしたから、どろぼうはぐっすり眠ることができました。


 

 翌朝、どろぼうが起きると、老夫婦はすでに朝食の用意をして待っていました。

「ようく寝れたようで、良かったさ。さ、朝ごはんを食べなさい」

 どろぼうは、朝食を食べました。パンとミルクと、薄く切られた肉に、目玉焼きが二つでしたが、とっても美味しく、どろぼうは満足しました。

「市にいくなら、頼んでやっけえ。どうする? もうしばらく、ここにおるか?」

 おじいさんがききました。

 どろぼうは、市へ行くと言いました。

「そいなら、これ、もって行け」

 おばあさんはどろぼうに、厚手のコートを渡しました。

「これ、息子のだけども、良かったら、もって行きなさい。夏だけども、寒いからねえ」

 どろぼうはありがたくそのコートを貰うと、馬車に乗って、市へ行きました。

 老夫婦が、いつまでも手を振って、どろぼうを見送っていました。

 どろぼうは、不思議な気持ちでした。

 馬車を操るおじいさんも親切な人でした。どろぼうにチーズをくれました。

 市場につくと、おじいさんは、首都へいく馬車を探してくれました。

 どろぼうは、首都へ向かいました。

 だんだんと、家々が増えてゆき、どろぼうは首都に到着しました。

 首都まで送ってくれた馬車のおじさんは言いました。

「首都の宿屋は高い。うちに泊まっていきな!」

 どろぼうは、言われるがまま、そのおじさんの家に招待されました。

 お腹の大きい、奥方が笑顔で迎えてくれました。

「よう来たね~。どうぞ、ゆっくりして」

 どろぼうは、一晩、この家の世話になることにしました。

「あんた、どこからきたね?」

 奥方が、興味深そうにききました。

「……ユーリティアだ」

「ユーリティアっていうと、あれだ、帝国の西の国さね。えらい西から来たさね~。どんなところなんだい?」

 どろぼうは、ぽつぽつと、自分の生まれた国のことを話しました。

 どろぼうが多いことや、自分の育った環境のことを語ると、奥方は言いました。

「苦労してはって、えらかったわあ。この国は、こないだまで戦争してたけど、もう平和だし、もう、ここに住んでまえ!」

 どろぼうは、もちろん、そのつもりでこの国に来たので、うなずきました。

 どろぼうには、考えがありました。

 お城に行けば、金目のものがたくさんあるに違いないと。

 どろぼうは、お城までの道を聞くと、翌朝、その家から出てゆきました。

「気をつけてなー!」

 奥方とおじさんが、大手を振って、見送ってくれました。



 どろぼうは、とうとうルジーザ王国のお城までたどりつきました。

 それは、真っ白な建物でした。

 門の前には、二人の門番がいます。

 ですが、恐れることはありませんでした。

 なにせ、罪を犯しても、裁かれないのですから。

 どろぼうは堂々と、門に近づきました。

 すぐに門番の二人がどろぼうに近寄って言いました。

「何用か?」

 どろぼうはナイフを取り出して、言いました。

「ここのお宝に用があるんだよっ!」

 どろぼうの言葉に、門番は呆気にとらわれました。

 そして、大笑いを始めたのです。

「ははは、おかしなことを」

「貴様、強盗か?」

 どろぼうの顔は赤く染まりました。

「そうだ! ここは何をしても許されるんだろう!?」

 門番の二人は、首を傾げます。

「お前さん、何か勘違いをしてはいないか?」

 門番がそう言った時には、どろぼうは門をよじ登って、お城の中に入ってしまいました。

 ですが、どろぼうの前には、屈強そうな別の兵士が大槍を持って、待ち構えていました。

「盗めるものなら、盗んでみろ。この俺を倒してな!」

 屈強な兵士はぶん、と大槍を回し、構えました。とても強そうです。

「逃げるのなら、今のうちだぞ」と、門番が門を開いて言いました。

「逃げるのは、盗んでからだ!」

 二人の門番は、どろぼうの意気に感心しました。

 どろぼうと、大槍の兵士で見合っている間に、大勢の兵士たちが、見物に集まってきました。

「おお~、犯罪者第一号かぁ」などと、興味津々です。

 戦争の終ったルジーザ王国の兵士たちは、とっても退屈していましたので、良い退屈しのぎになったのでした。

 万事休す。どろぼうは、どうすることもできませんでした。

 どろぼうは、ナイフを取り上げられてしまいました。

「いやー、刑罰法がなくなって、どうなることやらと思ったが、これはいいな!」

 兵士たちは満足そうです。

「騙したのか!」

 どろぼうは言いました。

「騙した? なにも騙してはおらん。ほうら、お前さんは釈放じゃ。どこにでも好きなところに行けばいい」

 兵士の一人が言うと、大勢集まっていた兵士たちも、散ってゆきました。

「確かに、刑罰法は無くなったけどな、どろぼうして下さいって言うわけないだろう」

 おかしそうに笑って言ったのは、白い服に身をつつんだ、長身の男でした。兵士ではなさそうです。

「金がなくて困ってるなら、こっちへ来い。腹が減ってるなら、メシを食わしてやる」

 そう言って、白い服の男はきびすを返しました。

 どろぼうが、立ち尽くしていると、男は今一度、振り返って言いました。

「どうした? 来ないのか?」

 どろぼうは、門の方を見ました。

 二人の門番が、こちらを見ていました。

「お前、よく来たな~。幸福もんだよ」

 にこにこして、彼らは言いました。

 どろぼうには、どういう意味なのか、まったくわかりません。

「ほうら、行った行った!」

 犬を追い払うような仕草をして、どろぼうをうながしました。

 どろうぼうは、それこそ、しっぽを巻いた犬のように、白い服の男の後をついて行くしかありませんでした。



 白い服の男は()(かん)と名乗りました。彼のあとをついていくと、そこは、聖堂と呼ばれる建物でした。コスモスの花のような模様の大きな窓には、色とりどりのガラスがはまっていて、万華鏡のようです。中に入ると、その万華鏡の影があちこちに散らばって、まるで光の花が咲いているようでした。

 どろぼうは、未だかつて、こんなに心を落ち着かせて、聖堂に入ったことなどありませんでした。

「もう、昼だな。メシ持ってきてやるから、座って懺悔でもしてろ」

 麗神は、そういい残して、奥の扉から出ていきました。

 どろぼうは、聖堂をしげしげと見つめました。天井には、大円の中にいくつもの円が描かれていて、光のような模様を広げていました。正面には、金色のパイプが天井までいくつも伸びていています。パイプオルガンでした。どろぼうは、そのオルガンに触れてみたくなりました。一番前まできて、鍵盤のひとつにさわってみました。すると、天にまで届くような、荘厳とも言える音が、聖堂中に響き渡りました。

 どろぼうは、びっくりしました。

 そうしていると麗神が、食事を持って現れました。

「オルガンに興味あるのか?」

 どろぼうは首を横に振りました。楽器など、自分にはとうてい扱えるものではないと、そう思っていたからです。

 どろぼうは、食事をとりました。

 パンに野菜スープにポテトのハンバーグ、ニンジングラッセに林檎ひとかけ。今まで、一日に何回も食事をとることなどありませんでした。何も食べない日もありました。それが、どうでしょう。どろぼうは、ルジーザ王国に来てからというもの、毎日食事をし、しかも、お金を払っていないのです。

 どろぼうは、ルジーザ王国がとても田舎だと思っていましたが、とても豊だということを知りました。

 食事が終ると、白い服の男は、どろぼうにひとつの部屋を与えました。立派な部屋でした。ちゃんと窓がはまっていて、すきま風ひとつ吹きません。床には、じゅうたんもしいてあります。ベッドもありました。

「自由に使っていい」と麗神は言いました。

 ですが、どろぼうはどうしたら良いのかわかりませんでした。

 今まで、自分の部屋をもらったことがなかったからです。

「ああ、そうだ。あったかいうちに身体でも拭いとけ。湯を持ってこよう」

 麗神はそう言って出ていきました。

 しばらくすると、ドアを蹴る音がしました。戸惑っていると「開けてくださーい」と声がしました。

 どろぼうは、慌てて扉を開けると、そこには、麗神ではなく、白い服を着た少年が湯の張ったたらいを持って立っていました。

「どうも、はじめまして。(まな)っていいます。これ、ここに置きますね~」

 たらいを部屋にあった小さなテーブルに置くと、少年はどろぼうにタオルを渡しました。

「すぐに着替えも持ってきますから~」

 そう言って、斈は部屋から出ていきました。

 どろぼうは、お湯で身体を拭きました。とても、気持ちのいいことでした。

 しばらくすると、(まな)が着替えを持って、再びやってきました。

「サイズが合うといいんですけど」

 斈はどろぼうに白い服を渡しました。斈や、麗神の着ている服と同じものでした。

「痩せてますねえ」

 斈はどろぼうの裸を見て言いました。

「辛かったですね。でも、もう大丈夫ですよ。これから毎日、一緒に生活していきましょうね」

 斈は微笑んで言いました。

 どろぼうは、斈がたらいを持とうとした時、それを制しました。

「じ、自分で……」

 どろぼうは、やっとのことで、それだけ言うことができました。

 すると、どろぼうの目から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。

 あたたかい手が、どろぼうの背中をさすりました。

 どろぼうは、こんなに優しくされたことはありませんでした。

 涙が止まった時、どろぼうは、白い服を着せてもらいました。

 たらいを持って、外の流し場へ行き、ついでに着ていた服も洗いました。

 服のポケットには、老夫婦から貰ったお金が入っていました。

 どろぼうは、言いました。このお金は老夫婦から奪ったものだと。

 そうしたら、斈は言いました。「今度、一緒に返しに行きましょうね」と。それはそれは、優しく言ったのでした。

 どろぼうは、また涙を流しました。

 どろぼうは、斈と一緒に聖堂に行きました。そして、神様の前で、自分の行った悪事の数々をすべて告白しました。

「すべての人にお金を返しにいきましょうね。謝りにいきましょうね」と斈は言いました。

 ですが、どろぼうが盗んだお金は、とても自分では返しきれないほどありました。

 無理だと、どろぼうは言いました。ですが、斈は首を振りました。

「大丈夫です。ここは、あなた一人ではないんですよ」

 どろぼうは、子供のように声をあげて泣きました。

 そして、生まれて初めて言いました。

「ありがとう」と。



 どろぼうは、しばらくして後、謝罪の旅に出ました。斈と麗神も一緒です。斈と麗神は、ルジーザ王国の教会で、神様に仕える神官でした。

 歩いて、街まで行き、馬車に乗せてもらった主人の家に行きました。

 奥方が出てきて、言いました。

「まあ、立派になって! 神官さまになったの? 偉いわなー」

 どろぼうが、一宿一飯の礼を言うと、奥方は一度奥へ行き、ロールパンに野菜とハムを挟んだロールサンドをもって戻ってきました。

「その格好だと、遠くへ行くんだろう? これ持って行きな」

 奥方は三人の旅姿を見て、用意してくれたのでした。

「ありがとう」

 どろぼうは言いました。

「気をつけて帰ってくるんだよ」

 奥方は、笑顔で三人を見送りました。この間と同じように。

 どろぼうが来たときのように、三人は馬車を見つけて、首都から離れて行きました。

 途中で、もらったロールサンドを食べました。ハムの塩気が丁度良く、とても美味しいものでした。どろぼうが、盗んだお金で食べた、どんな豪華な食事よりも、それは美味しかったのでした。

 どろぼうと二人の神官は、国境に程近くに住む、老夫婦も訪ねました。

 おばあさんは「よく来たね、よく来たね」と、しわだらけの顔をもっとしわくちゃにして三人を歓迎しました。

 どろぼうは、おばあさんにお金を返しました。

「そんな小銭、返さんでもよかったんに」

 おばあさんは、にこにこして言いました。

 おばあさんは、ゆっくりしていきね、と言いましたが、三人がお世話になるわけにはいきませんでしたので、三人は、そのまま乗合い馬車に乗って、ルジーザ王国を出国しました。

 ルジーザ王国の隣の国、ランウィーム王国につくと、街に入る前に検閲がありました。

 どろぼうの心臓は早鐘を打って、身体中から汗が吹き出ました。

 どろぼうは、指名手配されていたからです。

 案の定、ランウィームの検閲官はどろぼうを見逃しませんでした。

 ですが、麗神が、どろぼうをかばいました。

「彼の身元はルジーザ王国にあり。雪王の名の下に保護するものである」

 そう言って、麗神は巻いてあった紙を開いて、検閲官に見せたのでした。

 検閲官は戸惑いながらも、食い下がりました。

「犯罪者をかばわれるとは、どういうことか!」

「彼は、ルジーザでは犯罪者ではない。何人たりとも、彼を捕縛することあたわず。捕縛したければ、王の印をしたためた書状を雪王に宛てられよ」

 麗神は検閲官をしりぞけ、三人はランウィーム王国の街へと入って行きました。

 どろぼうは、一軒一軒、どろぼうした家をまわり、お金を返して謝りました。

 みんな驚いていました。

 そして、どろぼうは、自分の生まれ故郷にたどり着きました。

 生まれ故郷のユーリティア王国は、とっても寂れた国でした。たくさんの子供たちが、昔のどろぼうのように、道ばたで暮らしていました。

 どろぼうは、小さなどろぼうに会いました。小さなどろぼうは、果物屋さんから、ひとつのオレンジを盗んだのでした。

 どろぼうの胸が痛くなりました。

 そうしなくては、生きて行けなかったのです。

 小さなどろぼうが哀れでなりませんでした。

 どろぼうは思いました。

 この子供たちを救いたいと。自分が、ルジーザ王国の人達に救われたように、自分も誰かを救いたいと強く思いました。

 どろぼうは言いました。

「あの子供たちを救いたい」と。

 斈は言いました。

「そうですね。みんなで頑張れば、きっと救うことができますよ」

 麗神は約束しました。必ず救おうと。

 そうして、どろぼうはすべての家々をまわり、ふたたびルジーザ王国へと戻ってきました。

 その時にはもう、どろぼうは、どろぼうではありませんでした。

 すべての人達が、彼を許したからです。

 どろぼうだった男は、斈や麗神と同じ、神官になるために一生懸命勉強しました。

 そして、神官になった時、救うべき、哀れな男がやってきました。

「おらーっ! 金めのもんよこしなー!!」

 幸運などろぼうがルジーザのお城にやってきたのでした。




 おわり





「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。

 あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。

 あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の梁に気づかないのか。

 兄弟に向かって、『あなたの目からおが屑を取らせてください』と、どうして言えようか。

 自分の目に梁があるではないか。

偽善者よ、まず自分の目から梁を取り除け。

そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からおが屑を取り除くことができる。

 神聖なものを犬に与えてはならず、また、真珠を豚に投げてはならない。

 それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたにかみついてくるだろう。」

「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。

 だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。

 あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。

 魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。

 このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない。

 だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。」



 マタイによる福音書 / 7章 1節 日本聖書教会 新共同訳


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後にまた何か続きがあるような感じに思わされるところがよかったです。 [気になる点] 最後の聖書の箇所『○○出版』っぽいものが抜けていたのが少し気になりました。 [一言] このサイトで童話…
2012/07/28 21:48 退会済み
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