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-------校長室
ゆりは毎度お馴染みゲンドウポーズで戦線メンバーに口をひらいた
ゆ「ついに、この時期がやってきたか。」
音無「なんだ?なんか始まるのか?」
ゆり「天使の猛攻が始まる!」
音無「天使の猛攻…猛攻ってどうしてなんだ?」
音無は奏の大軍と戦う戦線メンバーを想像したようで不安そうに聞いた
ゆり「……テストが近いから」
音無「あー、何故?」
高松「考えれば分かるでしょう?授業を受けさせることも大事ですが、テストを受けさせていい点数を取らせることそれも大事なことです。天使にとっては…」
ゆり「けど、このテスト期間、逆に天使を陥れる大きなチャンスとなり得るかもしれない。」
藤巻「何か思いついたみたいだな、ゆりっぺ!聞かせてもらうぜ!」
ゆり「天使のテストの邪魔を徹底的に行い赤点を取らせまくる。そして、校内順位最下位に突き落とす。」
大山「それがなんになるの?」
岩「奏がかわいそうなだけじゃない?」
ゆり「……名誉の失墜、生徒会長として彼女は威厳を保っていられるかしら?」
野田「それで弱くなると?」
ゆり「少なくとも教師や一般生徒の見る目が変わるわ。その行いには今までなかった変化が生じる。」
松下「どんな?」
ゆり「さぁ?そこまで私には読めない。」
松下「じゃあ、意味がないんじゃないか?」
メンバーから乗り気でない声があがる
-----けど、彼女がもし神の創造物である天使なんかではなく…
その精神が鋼ではないなら、私たちと同じ人の魂であるなら…
その名誉の失墜は彼女に精神な打撃を与えることになる---
ゆ「……まずは今回の作戦メンバーを決める。
天使のクラスでテストを受けるための根回しは既に完了しているわ」
藤「じゃあ、メンバー全員で固めちまったらいいんじゃねーか?」
ゆ「じゃねーか、じゃないわよ!、ミスは許れないんだから!!
作戦が途中でバレたら、私たちはすぐに別の教室に移されて天使に赤点を取らせる細工ができなくなるのよ?!」
野「なるほど、じゃあオレはパスだ。
そういうのは女々しい奴らの出番だろ」
ゆり「そこで今回のメンバーは、岩沢さん、滝沢君、高松君、日向君、大山君、竹山君、音無君よ」
岩「あたしもか…了解」
音「また俺かよ…」
竹「僕のことはクライストと…」
ゆ「見た目が普通の奴らを選んだだけよ。それじゃあ、オペレーションスタート!!」
-----学習棟B棟 教室
ゆ「テストの席はその日の朝くじ引きで決定される…
これで天使の席の近くの席でないと細工は一気に困難になるわ。いい?あの席の前を引き当てなさい!」
滝「無茶だろ……」
そしてくじを引く面々…
日向、駄目
岩沢、駄目
高松、駄目
大山、駄目
俺、駄目
音無、駄目
ゆり、駄目
失敗か、とみな思ったが…
竹「36、天使の前です」
ゆ「よっくやったわ!!
答案用紙が配られる際、2枚持っておきなさい。その一方を回収する時に天使の物と掏り替える。
そっちの答案用紙は白紙に…いや、白紙じゃあ逆に不自然に取られるわね。馬鹿みたいな答えを並べておいて!」
竹「と、言われましても…」
ゆ「上から将来なりたいものを書き連ねておきなさい!」
竹「物理のテストですが?」
ゆ「いいのよ!
飛行機のパイロット♪とかイルカの飼育員♪とか書いておきなさい!」
滝「馬鹿どころかもはや哀れだなぁ…」
高「回収の時はどうするんですか?」
確かにそれは問題だ、とゆりに視線が集まる
ゆ「…日向君!タイミングを見計らってアクションを起こしなさい!全員がそっちに注目するように!」
日「んな、無茶な…」
ゆ「あなたを何のために入れたと思ってるのよ?」
日「ええっ?まさかそんな道化師役とは…」
滝「……頭数か!頭数揃えたかったんだろ!」
岩(…歌えばいいか)
ゆ「で、その瞬間を見計らって竹山君が後ろの席から回収し終えた答案用紙から天使の用紙を引き抜き偽物と掏り替える。とにか想定外の出来事が起きても慌てず、みんなでフォローしあっていくのよ!いい?」
竹「でも待ってください。名前の欄にはなんて書けばいいのでしょう?」
ゆ「・・・」
高「天使。」
日「アホか!生徒会長で通るんじゃね?」
大「そうだよね。どうせイルカの飼育員とか答えるぐらい馬鹿なんだから…」
音「いやいや、自分の名前くらい書けなきゃアホすぎだろ。つーか、お前らが名前知らないのが驚きだよ!」
岩「奏だよ、立華奏。」
滝「立つ、中華の華、音を奏でる、だ」
ゆ「…あぁ、そんな名前だったわ」
音「…知ってたんじゃねーかよ」
ゆ「……忘れてただけよ」
------1時間目、物理
……〜原子番号Z、質量数Aの原子がありその原子核X、陽子、中性子の質量をM、ma、mbとするとき、結合エネルギーはどのように表されるか。
えー…と、中性子の数はA-Z個で…質量欠損ΔmはZma+(A-Z)mb-Mだから結合エネルギーE=Δmc^2で……(Zma+(A-Z)mb-M)c^2……
と、まぁ物理はそれなりにとけたと思う。教師が回答用紙を集めよう指示を出す
…さっきのも要はE=mc^2がわかるかだろ……E=mcc……
滝「Eィね まさみの C カップ!!!!」
日「な、なんじゃありゃ!!グランドから超巨大な筍がニョキニョキと!!」
突然叫ぶ俺、そして日向も立ち上がって叫ぶ
岩「……」
音「アホ…」
ゆ「…仕方ないわね」
ゆりが何かのリモコンのスイッチを押す
いーつーもひーとりーで
あれ、なにこの浮遊感…
日向と俺の椅子は爆炎を吐き出しつつ、飛び上がり天井に激突、クラスの視線をくぎ付けにした
一時間目終了後俺達はゆりの下へ駆け寄って抗議した
日「おいおいなんなんだよあれは!」
滝「飛ぶのは日向だけで充分じゃねぇか!」
ゆ「日向君がしくじったから手伝ってあげたんじゃない、あと約一名予定外のアホしたのだからお仕置き」
岩「………なんで知ってるんだ……?」
ゆりは呆れつつ言い、岩沢は自身の胸に手をやり考えている
ゆ「……まぁ次からもっとまともに頼むわよ」
-----2時間目、世界史
ガタッ
テストが終わり急に立ち上がる高松
高(やるしかないか……!!)
先「どうしたのそこの君?」
高「先生、実は私……
着痩せするタイプなんです!
どうですか?」
先「分かったから座りなさい。」
高松は錐揉みしながら飛翔した
-----3時間目「英語」
ガタッ
今度は大山が立ち上がり叫ぶ
大「立華さん!!こんな時に場所も選ばず、ごめんなさい!!あなたのことがずっと好きでした!!付き合ってください!!」
天「じゃあ、時と場所を選んで。」
ガタッ
滝「岩沢!こんな時に場所も選ばずすまない!まさみの事が好きだ!!
毎日俺に曲を聞かせてくれ!!」
岩「……うん、知ってる。
いいけどみんなの前で叫ばないで」
先生「そこ座れ…」
「「はい」」
そしてまた例の椅子が点火し……
滝「そろそろ首が痛いぞ」
岩「ちょっと待ってよゆり」
ゆ「何よ?寄って来ないでよ!!」
岩「何であたしまで飛ばされるんだ!!」
ゆ「だって大山君は十分心に傷を負ったじゃない。
なんか岩沢さんもギャグキャラ化してたしいいかってね」
岩「だからってどうして窓の外に……」
ゆり「スカートの中見られたら嫌でしょ?
それよりもみんな、お昼にしましょ♪」
そして昼食をとり午後……岩沢はギターをかき鳴らしalchemyを歌い、高松は下も脱ぎ、日向と俺は何度も天井に突き刺さってテストは終わった
翌日
ゆ「流れ始めたわ」
音「何が?」
ゆ「天使の全教科0点の噂」
音「マジかよ…」
ゆ「しかも教師を馬鹿にしたような解答ばかりだったと。
あと『ガルデモ岩沢はC』『恐怖、空飛ぶ椅子』『公然猥褻変質者出現』の噂も流れてたわね」
岩「……そんなことまで?」
野「何をやってきたんだ、貴様らは?」
露骨に嫌な顔をする岩沢と、訝しげに聞く野田に日向が泣きながら訴える……
日「飛んだり、錐揉みしたり、終いには窓から飛び去ったさ!」
音「でも教師はそんなの天使自身じゃなく誰かの仕業だって分かるだろう?」
ゆ「何度言わせるの?そんなことは教師に分からない。現実と同じ、生徒会長が不真面目な答案を提出してきた。なら天使自身を呼び出して叱るに決まってるでしょ?」
日「教師からしてみれば、まっ、ひとりきりの反乱ってところだろうな。」
-----体育館
そして、数日後。それは全校集会で告げられた…
教頭「-----というわけでありまして、立華奏さんは本日をもって生徒会長を辞任
つきましては副会長の直井君が生徒会長代理として…」
ゆ「辞任じゃなく解任ね……
果たして一般生徒に成り下がり大義名分を失った彼女に私たちを止められるかしら?
今夜、オペレーション・トルネード決行よ!」
----音楽室
岩「……あまりいい気はしないね」
関「いくらなんでも今回の作戦はかわいそ過ぎると思うよ……」
入「奏ちゃん……落ち込んでないかな……」
…俺もあの時は馬鹿やってたが、その後起こった出来事を考えるととたんに罪悪感が湧いてきた。
……この世界は……奏もだいぶ俺達に近い存在になっている……音無が言ってたように……奏ときちんと話をさせた方が良いんじゃないか……?
そんな風に考えていると音楽室の扉が開いた
奏「……お邪魔するわ」
「「「「「奏!!」」」」」
みなが驚いているなか、奏はゆっくりと口を開く
奏「……岩沢さんの歌……聞きに来たんだけど……いいかしら」
岩「ああ……」
岩沢が頷いて、ギターを手にmy songを歌うと奏は静かに目を閉じて歌を聞く
ありがとう、と岩沢が歌い終えた時、奏を見ると……その両目には涙が浮かんでいたそしてペコリと頭をさげる
奏「……ありがとう、わがままを言ってしまってごめんなさい」
岩「いや、前約束しただろ?聞きたくなったら何時でも来い、ってさ」
奏は小さくありがとう、と言うと岩沢の胸に顔をうずめた
岩「泣きやんだか?
……なぁ、今夜またゲリラライブやろうと思ってるからこいよ?」
奏「わかったわ
……もう生徒会長じゃないし」
また悲しそうに視線を下げる奏
滝「……奏、もう誤解されないように話してみたらどうだ?
お前がみんなに消えてもらいたい理由を、さ」
ひ「おい滝沢、お前知ってるような口調じゃないか?隠し事はナシだぜ?」
俺がそういうとひさ子が疑問の声を上げる。……だが今はまだ言わない方がいいと思い誤魔化しておく
滝「ゆりの言う事が全部正しいと思うか?推測の域を出ない事ばかりだろ?
奏本人に聞いてみるのが一番いい」
奏「……ええ、わかったわ
消えてもらいたい、というよりみんなの未練を晴らして欲しいのよ」
---そして奏は語り出した、この世界の意義を、みんなの未練を晴らしてあげたいだけなんだと……
関「なんか、さ……奏ちゃんってすごい不器用じゃない?」
ひ「ああ、また新しい人生も悪くない、って知ってもらいたかっただけなのにな」
岩「誰もここにいたくているんじゃない。
人生の理不尽に抗っているだけなんだ。それを奏は、そうじゃない、とね……」
滝「理不尽じゃない人生を教えてあげたくて、人並みの青春を送らせてあげたくて、ここに留まろうとする彼らを説得してきた」
つまりそれだけの話。
入「それが対立して武器まで作って…」
全員が苦笑いして息を吐く
関「でもさぁ……真面目に授業受けたり部活動したら幸せで満たされるってんじゃないでしょ?」
奏「だって、ここにくるのはみんな青春時代をまともに過ごせなかった人たちだもの」
「「「「「………………」」」」」
すげぇ空回りで不器用なんだなぁ……
滝「うん、…いつか消えなきゃいけないってのはわるけどさ……その時はみんな一緒がいいな」
岩「……うん、
あたしもね、告知ライブの時……実を言うと消えそうだったんだ。みんながあたしの歌を聞いてくれてさ…
でも…滝沢や…みんなを残していけないな、って…そう思った
消えるならあたしだけ、あいつだけじゃなくて…みんな一緒がいいよ」
みんな頷いて、奏も優しく微笑んで…時間は過ぎていった
そしてライブ終了後…奏と俺達ガルデモメンバーは楽しく夕食をともにし、1日は終わった…
--------第二コンピュータ室
滝「……だから、さ。いつか……自分たちの意志で……きちんと消えるからさ。
野暮な事はしないで欲しいんだ」
?「……君がどうしてここがわかったのか、とかは聞かないよ。
でも耐えられるのかい?今からずっと先、……その時がきたら……?」
滝「わからないよ……わからないけどさ、
離れていても、また逢えるかわからなくても、俺は------」
?「そうか、わかった
じゃあ…こんな世界で生まれた愛、僕も少し見守るとしよう……
幸福を祈るよ」