未来の破片
暑い。
ダルい。
陽動という任務柄か、戦線で1、2を争うミニなスカートを穿いた少女がそんな事を思いながらギターケースを肩にかけ、食堂の階段をノロノロと登っていく。
短く切られた紅の髪は軽く湿り気を帯びて、額から流れた汗が半分程開いた目に入り顔をしかめている。
そしてこれまた戦線でも1、2を争う……いやこれは1位。そんな健康的かつ綺麗な太腿にも汗が浮かんでいる。
滝沢はそれをローアングラー化して覗いているNPC男子の頭を掴んで「次は無い」と軽く脅してから階段を登っていく。
女子、しかも岩沢のスカート覗いて鼻の下伸ばしている奴はNPCだろうが関係ない、
死ぬがよい。
……いや、俺は別に覗こうなんて気はなかった、視線を追ったら偶然見えただけだ。俺ハ悪クナイ。
滝「練習お疲れ様、か?」
岩「……滝沢か、いや暑くてね……。練習もドラムもギターとか無いからおやすみだ。」
とりあえず滝沢はテーブルの反対側に腰を下ろしながら聞いてみる。
涼みに来たんだ、半分程減ったボルヴィックのボトルを揺らしながらそういう旨を伝えてくる。
岩「それに部屋で1人いるよりあんたといる方が楽しいじゃない?」
滝「……あ、ああ」
サラッと言われて滝沢は口をつけていたペプシを吹き出しそうになる。お陰で炭酸が少し鼻に入って割と大変なようだ。
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そんな俺を見ながら、岩沢はプッと吹き出しながら軽く芝居口調でこう言った
岩「……というのが建前でした、とさ
部屋も風吹かなくて暑いし涼みがてら暇つぶしになる事ないか、って」
滝「……さいで」
いやどーせこんなんだと思いましたがねー……と自分を誤魔化すのにも少し慣れてきた。感傷的になりながら缶の中身を呷る
岩「……あぁそういえば聞いておきたい事があったんだけどさ……
あんたとあたしは付き合ってるのか?」
今度こそおもいっきし中身をぶちまけた。
なんとか首を捻ったせいでペプシのシャワーを浴びたNPCが物凄くこちらを睨んでいる。正直すまん。
でもすぐ視線が岩沢に釘付けになる。え?岩沢さん?なんでいんの?みたいな……お前もファンか。
滝「場所を変えないか?」
岩「……そうだね」
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場所を変えると言っても特に行くアテがあるわけでもなく……外に出て歩いているとベンチを見つけたのでそこに腰を下ろす。
緊張していたからかドカッという擬音が聞こえた気がした。(隣のはちょこん、みたいな感じだが)
気まずい。
ちょっと緊張をほぐしてからキチンと言おうと思って食堂を出たのにこれじゃ意味がない。唇がカサカサする。
滝「えっと、だな。もし岩沢が嫌じゃなければ……」
岩「嫌じゃなければ……?」
次の言葉を出そうとして、俺はつい黙り込んでしまった。隣を見れば下を向いて表情を隠すような姿があるだけだ。
と、何も言わない事を不審に思ってかこっちの方を向いた。微かに笑みを浮かべている、ヤバい。かわいい。
滝「俺と----」
「いっわさわさーん!」
遠くから聞こえた声に邪魔をされた。
……ひどい。誰だか知らないがひどい。
誰だかとかどうでもいいし関係ない、俺の理性と本能と第六感、天使と悪魔達が全会一致でこう言っている。
「邪魔者を排除しろ、ふざけんな」
ユ「流石岩沢さん今日もカッコいいですね〜
って、うわ。滝沢変態もいたんですか」
滝「なんだその滝沢先輩、みたいなイントネーションは。ってか『うわ』って言うな、どんなイメージだ俺は」
ユ「岩沢さんをたぶらかす悪い人?」
本人の目の前で酷い言われようだ。……なんか恨み買うような事したか?
岩「……ユイ、今ちょっと……そう、大事な話をしてるからまた今度にしてくれないか?」
ユ「いえいえそうはいきませんって!
岩沢さんに悪い虫がつかないようにするのもファンのつとめと言いますか〜。それに岩沢さんに男を知って欲しくないっていうか?」
……後者だ。絶対後者の理由だ。自分の好きなアイドルに彼氏が出来て何故かキレてしまうファン、あれと同じ部類。
岩「いや、だから」
ユ「だーめーでーすー」
岩「話したい事が」
ユ「よーごーさーれーちゃーいーまーすー」
顔を>∧<みたいにしながら手をバタバタさせて割ってはいってきた。見てる分には可愛らしいがやってる事は小憎らしい。
岩「……………………tut」
……?
今舌打ちしなかったか?
なんかユイがガクブルしてビビりまくりなんだが。
ユ「危うく漏らすかと思いました……」
というかもうなんかユイは半泣きだ。
目元が光を反射しているのは多分気のせいじゃないと思う。正直俺も少し怖かったし
岩「……滝沢、場所を変えようか」
滝「お、おう」
振り向いた顔はとても良い笑みを浮かべていた
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さっきからNPCの視線が痛い。
当たり前だ。『“あの岩沢さん”に手を引かれて』いたらそりゃ注目される。
というか見られてて気づいたけどなんか岩沢のファンって女子の方が多いよなぁ……なんつーかカッコいいし髪とかもユニセックスな感じだからか、か?
少なくとも戦線の男子に勝てる奴なんかいない。音無と日向みたいな『そういうアレ』になると話は別かもしれないが。
岩「よし、ついたぞ」
どうでもいい事を考えていると連れて来られたのは誰もいない空き教室の前……
滝「……そういやここで」
キスしたんだっけ……
岩「ちょっと……あんた、なんで今そういう……」
見るとかなり困ったような顔をして頬を染めている。
可愛い、なんて破壊力だ……俺の理性に大ダメージ、もといdieダメージを与えてきた。理性即死。
滝「岩沢……」
岩「ひゃい!?」
思わず肩に手を置いて……
関「あれっ、岩沢さんなんでいるんすか?」
入「ほんとだー、どうしたんですかー?
いつもなら気だるそーな顔で時間ギリギリになってから来るのに」
関「そーそー。しかもやり始めるとこの人なんかヤってるんじゃね?ってくらい活き活きした顔なるしねー
ってあれ今日お休みだよね?」
頭にクエッションマークを浮かべている2人を後目に、思わず手を離して握り拳をつくるとガンっと最寄りの壁を殴った。目には見えなくてもヒビくらい入ったんじゃないか?というくらい力を込めて殴った。ああ、うん、ヒビが入ったのは壁じゃなく俺の指の骨の方だが。
隣を見ると岩沢も同じ体勢で固まっていた……というかひどい言われようだな
関「よくわかんないっすけど暇なら遊びま」
岩「……行くよ」
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倉庫
椎「小僧、何をして……岩沢も一緒か?」
滝「次!」
自販機前
高「おや、こんにちは。……最近よく一緒にいるようですね」
岩「……次だ」
本部
滝「お前らなんか俺に恨みでもあるのか!?」
ゆ「何よいきなり。わけわかんないんだけど」
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あれからまたしばらく足掻いたが、まるで狙われているかのように邪魔にあった。その度に俺は壁を殴って、内心悶絶しながら澄ました顔して移動を繰り返した。それを繰り返してるうちに、だんだん痛みは治まっていった。痛いのに慣れたか痛覚が麻痺したかは、この際どうでもいい。
だが痛みは治まっても腹の虫は治まらない。何なんだよ、もう泣きてーよ、歩きながらちょっぴり泣いちゃいそうになったよマジで。
岩「……ついた」
ああ、そうなのか……次は誰に乱入されるのやら……まだ来てないヤツ的にTKとかかなぁ。ああ、でもユイは2回来たからなぁ、そんなのあんまりあてなんねーか。
岩「あたしの部屋だ、ここなら今は誰もいないし、邪魔されることもないはずだ」
滝「へー」
確かにねー、昼下がりの女子寮は人気なんてあんまりないし。授業は教室棟でやってるから日中は静まりかえっているくらいだ。
滝「っておい!」
俺はそんな静かな空間を軽くぶち壊した。
いつの間にか女子寮までついてきてしまっていたらしい。催眠術だとか超スピードでは断じてない。
岩「別に前にも来たんだから良いじゃない」
いやいや前とは状況が違うだろう。そもそも何の話をしていた?
前は計5人で飲み会、今回は?
誰もいない女子寮、部屋で2人、告白。
……はい、無理。なんだかんだで一応見つかるとマズいので部屋に入っていたが……。
滝「いいか岩沢、男は狼なのだから気をつけろ
年頃になったなら慎むんだ
この人だけは大丈夫だなんてうっかり信じたら駄目だ」
まったく、俺が悪い人なら大変な事になってるぞ……
どこぞのアリスさんがSOSしそうな言い回しで言うと立ち上がろうとするが、袖を掴まれ思わず体勢を崩した。
岩「あんたは……あたしと一緒じゃ楽しくないか?」
滝「いや、それは……ない。楽しいに決まっている」
岩「あたしもあんたと一緒だとなんか楽しい……だから、その、あんたが嫌じゃないなら……その、そういう関係に……」
滝「岩沢……嫌なんて言うわけないだろ……俺も----」
そんな事女の子に言わせちゃ駄目だろう
俺は彼女の両頬に手を当て……
ひ「あれ?岩沢いつから……」
首を曲げるとバスタオルを体に巻きつけたひさ子と目があった。どうせこんなんだとは思ってたよ……
3秒後、ひさ子によって前回この部屋に来た時と同じ方法で、端的に言うと首根っこ掴まれて地上十数mのベランダから叩き出された
その後帰ってきた天使の「そう、またなのね」という声とともに前回と同様の理由で粛清されたのは言うまでもない
後書き
8話、Balls Up!の後あたり。
なんか最近内容が薄いようなorz
あと、遅れた理由ですが……携帯じゃなくPCだとわかるかもしれないです。ヒント改稿。ただ、内容が内容ですので読むかどうかは事故責任で。ああ石を投げないで。
*'``・* 。
| `*。
,。∩ * もうどうにでもな〜れ
+ (´・ω・`) *。+゜
`*。 ヽ、 つ *゜*
`・+。*・' ゜⊃ +゜
☆ ∪~ 。*゜
`・+。*・ ゜