光芒/keep it real/酸化空
-------滝沢亭
貸切の店内で岩沢は戦線メンバー、両親に囲まれていた
ゆ「おめでとう」
ひ「おめでとう」
滝「おめでとう」
入「おめでとうです」
関「おめでとっ☆」
ユ「おめでとうございますっ」
野「めでたいな」
藤「おめでとさん」
直「神が祝福してやる」
遊「おめでとうございます」
奏「おめでとう」
音「おめでとう」
椎「……めでたい」
大「おめでとう!」
T「Congratulation!」
チ「おめでとさん!」
高「おめでとうございます」
松「おめでとう」
竹「おめでとうございます」
岩親「「おめでとう」」
岩「ありがとう」
父に、ありがとう、母に------
日「また出オチかよっ!?」
ゲシッ
ハイキック……良い角度で決まったのか日向はしゃがみこんでこめかみを抑える
滝「日向ぁテメーちょっと黙っとけやぁ……まさみの一大イベントやで?」
ひ「なんでまたエセ関西弁なんだよ……!」
ひさ子のツッコミがはいるが滝沢の言う事ももっとも、
何を隠そう今日は岩沢の誕生日。それを祝って滝沢の父が店を貸切にしてパーティーを開いた、というわけだ
滝「さぁアホは放っておいて続きだ、」
店内の照明の大部分が落とされケーキに立った蝋燭に火が灯される
そしてせーの、とかけ声を出すと全員が合わせて歌う
「「「「「「はっぴばーすでー♪とぅーゆー♪」」はっぴばーすでー♪とぅーゆー♪
はっぴばーすでー♪でぃあまーさみー(岩沢さーん)♪はっぴばーすでーとぅーゆー♪」」」」
岩「……ふっ」
パチパチと拍手が止み、火は消された。
と、それと同時にきゅるるる…………とかわいらしい音が静かな空間に響く
岩「……は、早く食べようぜ?」
……恐らく電気をつけたら顔は真っ赤だろう
滝ひ関「「「……ックク……ププ!!」」」
静かぁ〜に大爆笑している3人、電気をつけたらこいつらの顔も凄いことになっているだろう
----------
関「というか凄いね〜こんなに料理作っちゃってさ。経営大丈夫なの?」
確かに、これだけの人数が集まっちゃったわけだし……
滝「いや、残念ながら俺の奢りだから気にせず食ってくれ」
……日本語としてちょっとおかしい気がすんだけど
滝「400円毎時という低賃金で1日4時間働かされて……でも毎日だからそれなりに金はある」
ひ「……親の手伝いでそれだけ貰えりゃいいだろ」
関「年に…60万?うわ有り得ないって」
滝「でも使う先あんまないから金粉入り歯磨き粉とか無駄なもんまで買っちゃったりしてる感じ」
ああ、あのTSU○AYAの供給源はこれか……とか考えながら天ぷらうどんを食べる。
うん、海老が美味しい(誕生日くらい別のもん食えよ、ってひさ子に言われたけど周りだって似たようなもんだ)
.
.
-------
誕生日パーティーがいつの間にか飲み会に変わってしまったのは当然の流れだったのだろうか。
ちょっと足りなくなった料理を作りに目を離している隙に店内は酔っ払い不良学生達の溜まり場となっていた。
日向の「俺ん時も頼むぜ?」
という寝言 (いや、戯言か)にバカヤローまさみだけだっての、と返す。
高松が「この筋肉は誕生日を祝うために----」
意味が分からない……外に叩き出した。
そしてぐでんぐでんに酔って入江とひさ子の胸を揉みしだく関根とユイ、とその隣で寝息を立てる主賓。
……寝てんのかよ、まだプレゼントも渡しちゃいないのに。
どうしたものか、と思いつつ……
(……おっと)
自らもだいぶ酔っているんだろう。料理 (と、言っても酒のつまみになるような簡単な物だが)をテーブルに置いた瞬間ふらっとよろける。
酔い醒ましに、と近くにあったドクターペッパーの缶をもって夜風にあたりに外に出た
-----
薬品臭い、がなかなかどうして好みなこの味。もう一口、嚥下する。消耗した体に、20種類のフルーツフレーバーがしみこんでいく。たまらん。
そんな事を思って飲んでいると……
「……お前か。ちょっと付き合え」
まさみの親父さんの声が聞こえる。振り返えると……酔い醒ましに散歩でもしてきたのだろうか、店に向かって歩いてくる姿が見えた
滝「まさみさんとなら付き合ってますがお義父とは……」
「お義父さんと言うな」
滝「……なんでしょう?」
「歩きながら話す……ついて来い」
滝「まだ歩……」
くんですか?今帰ってきたのに……そう続けようとするが、こちらを見る目はいいからついて来い、と言っている
滝「……わかりました」
-------
「まさみとは……何時知り合ったんだ?」
突然そう聞かれる、が俺は答える事ができない。
……生まれる前から、なんて言うわけにもいかず……。何かとっさに当たり障りのない答えを考えていると、返答を待たず親父さんは続ける。
「まさみは昔っから歌が好きだった。
そして中学の時だったか……ある日突然ゴミ捨て場からギターを拾ってきたかと思うと、それ以来音が鳴らない日なんてありゃしねぇ。学校からすぐ帰ってきてはずっと部屋に引きこもってるか駅前の路上でギターを鳴らしてたそうだ。」
……二回目もそれだったのか、もうちょっとなんとかならないのかおい……
どんな生活か想像するに容易い、それでいいのかまさみよ
「別に親子関係がギクシャクしてる気はなかった。
だが母さん……妻がまさみの部屋を掃除していると机の上に一冊のノートが開かれてたんだと、書いてあったのはまさみが作った歌だろう。
歌の事は俺にはよくわからねぇ、だがな……」
----衝撃だった。本当にこれをまさみが書いたのだろうか、俺は考えた。紛れもないまさみの字だ。しかし、だとしたらなんなんだったんだ。
俺達は娘にこんな事を言わせてしまったのか?知らず知らずのうちにまさみは苦しんでいたのか?
俺達に見せていてくれた笑顔は無理に作っていたものだったのか?
一呼吸、そしてまた続ける。
----泣いてるやつこそ、孤独なやつこそ人間らしい?
違うだろ……みんなで、友達や家族と笑ってこそ人間らしいはずだろう?
----だがページを捲れば……
"歩いてきた道振り返ればイヤな事ばかりで?"
"どんなふうに感情零したらここから消えられる
どんなふうに許したらあの日々を愛せる?"
"生きてる事が不幸でこんな僕なんて誰も必要としてないんだ?"
…………胸が痛かった。
明るく振る舞っている裏で涙を流させているのだろうか、
しばらくは眠れなかったよ、と自嘲気味に笑う。
「……だが高校に入ってからはそんな心配が杞憂だったかのように元気だった。
友達を連れてきたりする事も増えて、自分から喋らないのに学校の話とかをするようになった
……挙げ句いきなり男を家に連れてくるようにもなった……お前だ」
指で鳩尾をグリグリさされる
「んで今日は誕生日パーティー、高校で知り合った友達と聞いてるがお前も、そいつらもまるでずっと昔からの親友みたいだ。
……正直ホッとしているよ、あんなに心から笑っている、心配はない、とな」
……そして、さぁーてそろそろ帰るぞ、と立ち上がる
滝「心配いりません、あなたもこんなにまさみを愛しているなら、何も」
「そうか、ありがとよ坊主」
.
「つかお前、いいか体力だぞ体力。体力ねぇと女ってのは喜ばねぇぞ。ああ、だが避妊はちゃんとしておけよ……しくじってみろ、殺すだからな」
「お義父さん?シリアスな話しに何故下品なオチをつけるのですか?」
.
.
------
夢を見た。
それも強烈な悪寒を感じ、目を覚ましたのだろう。店内の殺風景……な景色がぼんやりと目に入ってくる。
どんな夢だったかは、ほとんど覚えていない。
……少なくとも良い夢ではなかったのは確かだ。今、私の体を襲っている……恐怖に似た感情が教えてくれている。
……ああもう、酷い汗だ。下着まで濡れちゃってるみたいで正直気持ち悪い。
どんな夢見たんだっけ……
ぼんやりと浮かぶ、夢の景色、
……ああ、そうだ
一面の白。
思い出したくもない、機械的に身の回りの世話をしていく看護士。
振り絞れど、言葉にならない感覚。
絶望。何度椅子を蹴ろうと考え、それすら自由に叶わないと思い知らされたか。
そこに1人きり。
バッ
岩「なっ!?……ひ、光?」
突然後ろから抱き締められて何が何だか一瞬わからなかったけど、こんなことする奴はコイツしかしない。
岩「ど、どうしたんだ?」
滝「お前な……今凄い顔してたんだぞ?心配したんだよ」
……抱き締められていると安心した、のか不思議とさっきまでの感情も消え失せていた
岩「ありがと……」
滝「おう。ってああそうだ、ちょうど良い。プレゼント渡してなかったろ?」
そう言って取り出したのは指輪だった。あの時……あっちの世界のクリスマスに貰ったような、ルビーがはめられたシルバーのリング。
滝「芸が無くて悪いが……何送ったらいいかわかんなかったから前と同じだ」
岩「いや、嬉しいよ?」
あたしだって女の子だ。こういう物を貰って嬉しくないわけがない。
滝「そうか。
震えも……なくなってるようだしな、良かった。
どんな怖い夢見たのか知らないけど枕を涙で濡らすような夜ならこの体何時でも貸すぜ?」
そう言って腰に手をあてながらニヤニヤと笑う。……なんだ?からかわれてるみたいでちょっと悔しいな
……
岩「……んじゃ早速借りようか」
滝「ん?」
岩「……目、閉じてくれる?」
---------
岩「……目、閉じてくれる?」
滝「なっ、こ、こうか?」
な、なんだ?何時もより積極的じゃないか?
……いや、でもそういや再開して最初にキスして以来全くそういう事をしていない……まさみも寂しかったのか。
そして怖い夢を見てしまってセンチな気分に……
ほほぉ。なるほどなるほど……うい、うい奴じゃ。ここはたっぷりと余裕をもって紳士な心持ちで対応しようじゃないか
岩「……やっぱりあんたの事好きだからな」
す、「好き」だって奥さん!
目閉じてるからどんな表情してんのかわからないのがもどかしい!は?紳士な心持ち?何それ食えんの?
うん、やっぱりは俺の方が背高いし?正面に立って上目遣いに「好き」って感じか?
それともちょっと恥ずかしくて涙目になりながら、目閉じてるとわかってても言う瞬間に目をそらして「好き」なのか?
俺としては首か腰に腕をまわしながら耳元で「好きなんだ」が好みのシチュなんだが、いやでもそんな事されたら俺はもうブレーキが以下自粛。(この間約2秒)
滝 (………………)
そして目を閉じて唇に感じるだろう、幸せな感触を待つ……
滝 (………………)
待っていたんだが
パシャ。
……何故シャッター音が響くのだろう。
岩「ッ…クク……」
目の前には笑いを押し殺しきれていない……口元を抑えながら肩を揺らす少女。
--------
アイツはこれ以上にないくらい赤面していて、久しぶりだからかな……緊張する
ゆっくりと顔を近づけていくと目を閉じた。
滝「………………」
……なんだろう、なんでこんな恥ずかしいことしてんだろう。
普通こういうのは男からだろう。なんで男が目を閉じて待ちなんだ、ああ、いや、あたしが言ったからか。んー……
あたしは急にあたしの中で悪戯心が鎌首をもたげてくるのがわかった。ワンピースの小さなポケットに手を伸ばして携帯を取り出し、音を立てないようにして画面を開く。
そして携帯側面のボタンを押してカメラ機能を選択。
「…………」
ピントが顔に合った、そして
パシャ。
滝「ん……?」
疑問符とともに光が目を開いた。
その目に映るのは、携帯のカメラのレンズ。
笑いを押し殺しながらとりあえず今撮った写真を見せてみる
滝「なっ!?」
その写真は真っ赤に顔を染めた青年が瞼を閉じて唇を差し出している。(それもドアップで)
滝「そ、それを今すぐ消せ!」
岩「ん?聞こえないね」
あ、ヤバい。これ楽しい……少しそんなふうに思ったんだけど……
滝「……消してくださいお願いします」
もはやプライドも何もあったもんじゃない。土下座までされてなんだか浮ついた気持ちが一気に下がってくる
岩「どうしようかな……」
待ち受け……にするのは流石にちょっとバレた時恥ずかしいし……
あ、保存したままにするのは当然として……
パシャ
ん?
足元を見るといつの間にか土下座から仰向けに体勢を変えて携帯を構える男の姿。
滝「……ブルーか」
……
岩「それを今すぐ消せ」
滝「ん?聞こえないねぇ?」
----------
あ、ヤバい。これ楽しい……
やられるとやるのとじゃ大違いだ。
きっとまさみも同じ事考えてた (つか今考えてる)気がする……
岩「なぁ……」
滝「えー」
岩「そんな写真何に使うんだよ……」
滝「私的利用以外には使わないから安心しろ」
岩「HENTAI……」
滝「今更?」
ヤバいゾクゾクしてきた。好きな子をイジメるっていうのはこういうことかっ……
=============
5minutes after
=============
岩「うっ……あっ……」
……やりすぎた
正直全く余裕が無いくらいの罪悪感が押し寄せてくる。全身から血の気が引いていく。
岩「光のアホ……変態!うっ…そんなにあたしをいじめて…ひっぐ…楽しいか!」
滝「……すまない、俺が本当に悪かった……だから、出来れば、その、皆が起きるからもうちょっと静k」
岩「うるさい!誕生日なんだからっ……お前とただ一緒に…ぅあっ…過ごしたかっただけなのに……!いじめる……あんたが悪いんだ!ふぇえええええ……」
泣き出した彼女を止める術など俺になく、とっさにとった行動はと言えば彼女をおぶさって完全防音の俺の部屋に避難する事だった
……涙は女の武器とはよく言ったもの、こんなふうに泣かれるのはいかんせん初めてだ……とりあえず謝罪と時間経過を待つしかないだろう
----滝沢の部屋
……現在、俺は占拠されたベッドを前に正座中。
今は泣き止んだけど……枕は鼻水までかんでたしビチャビチャな様だ(ちなみにビチャビチャのソレは壁に投げつけられ床に転がっている)……
滝「あー……岩沢さん?」
岩「……………………」
……そして泣き止んだとはいえ先ほどからガン無視、この気まずさは俺の精神をガリガリ削っていく
滝「おーい……」
岩「………………」
どうしてこうなった。どうしてこうなった。
滝「写真なら消したから……って」
岩「…………むぅ……」
近づいてわかったが……ぐっすりお休み中らしい。ベッド……彼女の近くに腰掛けながら何の気なしに頭を撫でてみる。……思えば最低な悪戯を----
岩「……あっ……ダメ……触るな……」
思わずビクッときて手を離した
が、起きる様子はない、寝言か?というか脳内で反芻してみたらなんかエロい。どんな夢見てるんだHENTAI少女め。
岩「……それに……触るなぁぁ……あふぅ…」
……変な場面じゃないんだろう、でもなんかやっぱりエロい。と、寝ているのを良いことに好き勝手思ってみる。
岩「……でもあんたなら……えへへぇ」
何やら楽しい夢を見ているようだ。
岩「……あぁ…だからエフェクターいじんなって……」
…………なんだこの小さな悲しみは
滝「幸せそうな顔しちゃって……」
幸せ……か。……ああそうだ。俺は今幸せなんだな。それがむず痒くて意地悪しちゃったりもするがこの気持ちは本物だ。
それだけで俺は充分だった。
彼女は今、ここにいる。
滝「お前を愛してる。今も。これからも」
愛しい彼女の髪をそっと撫で
「おやすみ」
と言って部屋を後に……
クイッ
……うん。今言った事は嘘偽りの無い事実だが……もしまさみが聞いてたら恥ずかし過ぎるなぁコレ、と思う
岩「……枕、濡れたから……
……さっき言ってたじゃん……」
振り向いて袖を引っ張る少女を確認すると思わずククッと笑いながら、毛布の下に潜り込んだ
.
.
.
---翌朝---
毛布は二枚あった。6月に入ったとはいえまだ寒いからな。だが起きたら一枚が腰付近を覆うのみ……
俺の頭には……枕は使えなかったから代わりに2人で使おうとした大きめのクッションが一つ。
横を見ると俺の腕で腕枕状態になったまさみ。
眠っている間に崩れたのだろうか、ワンピースの肩紐が外れて肌色を晒す胸元。
俺の手の位置は……うん、『禁則事項』だ。(しかも抱き留められて動かせない。ああでも、なんだ、やわこい……)
加えて脚も絡みあっていて……朝だとその……当たる。
だがやってない。
……ちょっとマズいんじゃないかコレ?
と、そんなとき扉の向こうから声がする
ひ『あいつの部屋ここか?』
ああフラグ回収早いって……
ひ『おい滝沢ー』
滝「頼むから目を覚ましてくれまさみぃ……」
岩「むぅ……まだ眠いって……」
そ、そうやって甘い声出されても駄目だからな!起きてこの状況を打破してもらわねば命が危ない。このままだと情け容赦無く、何の抵抗も出来ずに※されるは確定的に明らかだ。ヤバい日本語がおかしい、落ち着け、クールになれ、どうすればこの状況を打h
ガチャ
ひ『滝沢ー?岩沢どこ行ったか知ら……な、い?』
ひさこヴィジョンから見るとどんな感じだろう?
ああ、変わらないな、俺が理解してるだろう状況と。
毛布一枚が腰付近を覆うのみで、腕枕状態になったまさみ。
着崩れて肩紐が外れて胸元は露わになっていて。
野郎の手の位置は一枚の布の上でしっかりホールド。脚は絡みあっている。
ど う 見 て も 朝 チ ュ ン で す。
本当にありがとうございました。
滝「それでもボクはやってない……!」
ひ「……元になった事件、結末知ってるか?」
滝「え、冤罪だ!俺は無実だっ!」
だが指をパキパキ言わせながら近づけてくるポニテの悪魔。
滝「というか仮に『そういう事』があったとして何故お前に怒られる必要があるんだ!」
ひ「……岩沢ばっか充実しててずるい」
お、おのれはぁっっ!?
つか藤巻てめぇのヘタレのせいじゃねぇか!!
ひ「って言わせんじゃねぇよ!」
テンパったひさ子の、キレのある右ストレートのおかげで俺は最近自分の彼女よりも口づける機会の多い愛人(床、地面)にまたキスをプレゼントしたのだった。
おまけ
滝「あー顎いってぇ……」
岩「よくわかんないけど……大丈夫なのか?」
滝「大丈夫だろ……多分。あ、そうだプレゼントもう一個あんだよ。大したもんじゃないんだが……お前路上ライブやってて……おまわりとか来たら逃げてんだろ?」
岩「まぁ……そうだな、聞いてくれてるおじさん達とかあんたがバリケード張って逃がしてくれたりするのが救いになってる」
滝「ほら、許可書だ。道路使用許可書。(※本当にあるよ!)
時間と場所と常識さえ守ればある程度好き放題やらかしてもいい、ああ、でも流石にエレキはやめとけよ?取ってきた場所はそういうのはキツそうな場所だし……」
岩「……」
ん?ミスったか?
岩「……光」
滝「な、なんだ?」
岩「ありがとう……」
滝「喜んでくれたなら良かった」
……
…………
こいつ指輪やった時よりいい笑顔してないか……?
何か悲しくなってくるものを感じながら目をキラキラ輝かせながら書類を手に持つ少女を見るのであった……
後書き
Q岩沢の誕生日何故この日?
A沢城嬢に合わせました。marinaでも良かったけど近かったから。
Q何故こんなに遅れた?
A6月2日に投稿したかったからさ!
Qで、本音は?三行で
A大学
バイト
眠い
Q何か言うことは?
A更新してない間もあんなに読者いたとかマジありがとう。
.
まだ誰もいない部室、見てみると手は震えている……。
ギターを弾き、歌い始めて何年経ったろう、ステージに立った時以上かも……こんなドキドキした感覚はこれが始めてだった
初めてギターを拾って、修理して、変な音を必死になって出していたあの頃以上の胸の高鳴り。
あれよりも今、ずっとドキドキしている
キュッ
岩「ふふ……ふ……」
そのままギターを構える。
……なかなかカッコいいんじゃないかコレは?
ガチャ
岩「今日は、いつもより調子いいわ。声がクリアに聞こえる」
関「ちゃーす……ってえっ?」
入「えーと、遅れまし……た?」
ひ「よお、岩……沢……」
ユ「え?どうかしたん……で……す、か?」
「「「「「………………」」」」」
==============
-----生徒会室
ナーイーテルー♪キーミーコソーp
滝「ハロー」
香「おい滝沢、引き継ぎまで間もなくて忙しいんだから真面目に……」
ひ『滝沢?岩沢が……岩沢がだな……あー……とりあえず部室これるか?』
滝「オーケー、待ってろすぐ行く」
音「おい!」
香「おのれは人の話を聞いてたか!?」
ええいお前らこそ二重かっこの中の内容を見たのか。まさみに何かあったかもしれないんだぞ!? (そのわりには様子が変だったっぽいのは認めるが。)
滝「奏、香織、今度うちのなんでも奢るから……後は任せた」
奏「向こう1ヶ月ね」
香「……し、仕方ないな。…って出番コレだけか?」
やはり女子高生、好きな物にはあっさり釣られる
音「お、お前らな……
つか俺はないのか」
滝「残念だが野郎に奢る金はないのだ」
筆記用具をしまうと急いで駆け出す。ドアを開けた時、毎日晩御飯は麻婆……最高だわ、だの毎日DXイチゴパフェ……だのと聞こえた。
……ん?麻婆豆腐定食は850円で……イチゴパフェ…2人前サイズのDXは750円で……毎日?
1ヶ月無給なうえ1日でも休んだら即赤……?
……冷や汗を背中に感じつつそれを振り払うように足をさらに早める。
だがそれでもまさみの危機……行くに決まってるしましてや金なんかと天秤にかけられるわけがない!
---------------
岩「だが、あたしはあたしが間違っているとは思わない」
結論から言おう、金返せ。
岩「ああ、この湧き上がる高揚感……」
ひ「……原因はなんなんだ」
ひさ子が耳元に口を寄せ聞いてくる
入江は耳に手を当てあーあー岩沢さん聞こえないです、と連呼している
関根はなんかビクンビクンいってる
ユイは岩沢さんの神々しさが消えていきます、って泣いてる
滝「……多分俺だ」
ああ、そんな顔をしないでくれお前たち……
別に何もおかしくないさ
とりあえずムービーにこの様子を収めつつひさ子らに説明する事にしよう……
岩「そう、光が貸してくれたあのCDがきっかけ」
……つまるところそれだ。先日……俺は学校帰りまさみと歩いていて…いつものようにあいつは俺の家によってCDを借りていく事にした。
最近はワンオクとかがお気に入りのようで彼らのアルバム数枚をチョイス。だがその日はそれで終わらなかった。
俺がまさみにはあまり見せない、言うなればちょっとイタい系に分類できちゃうCD群の収まった棚に興味をもってしまったのだ。この際何故そんなCDを持っていたか等は聞かないでくれるとありがたい。
ひ「……で?」
滝「うむ……全部持ってった。」
音楽性広めたいから、とかなんとか。
ぶっちゃけそっち方向に広がって欲しくなかったが未知の音楽に目をキラキラさせる彼女の頼みを無下に突っぱねることは出来なかったのだ……。
関「ちなみにイタいって例えばどんな?」
滝「……サンホラとかアリプロ、筋肉少女帯に混沌頭の挿入歌とかあといわゆる同人CD……」
まさみのカバンを開けると案の定出てくるソレ。『罪過~』だのと書かれた、V系少女が磔になってるジャケやらを見せると皆一様にうわぁ……という表情をしながら、なんとなく納得したようだ
ひ「で、その結果がこれだ」
小刻みに肩を揺らしながら鏡に映った姿----変な黒基調の衣装 (……羽だ、背中にカラスみたいな羽がついてる)に……黒い革製指出し手袋をつけている----を見て目を輝かせている
……まぁその兆候がなかった訳ではない。いつもリストバンドしてるし。友達作るより曲作りに熱心だったし。
滝「更に加えるならKなでさん (仮)と聖神伝エターナルとかいう漫画読みながら一緒にホーリースティンガー!とか他に誰もいないっぽい校舎裏で言いながらポーズとっちゃってたくらいだけど……!」
ユ「本当に岩沢さんの事好きなんですか!?私だったらそんな黒歴史バラされたら吊りますよ!?」
……そう、誰もがかかるかもしれない病気、ちょっと遅い発病というだけだ。
ちなみに現代医療の世界においてこの病気に対する治療法は確立されていない……
滝「だがKOMOWATA式治療法ならばあるいは早期治療が可能なはずだ……」
入「えーと、4コマ見てない人にもわかるようにお願いします」
滝「とどのつまり自分がどれだけ痛々しいか他の痛々しい奴を見てもらって実感してもらう」
治療後は大抵恥ずかしくなって部屋に引きこもってしまう、という副作用付きだが
さて、と。ここは『あいつら』に電話して登場いただこうか----と思ってコールしていると……
岩「次のライブ…この服でやろうかな」
後ろの方ではそんな声が聞こえた。
「「「「!!!!!!」」」」
一斉に目を見開くガルデモメンバー。
冗談じゃない、と。
普通の制服、普通のガルバンの中心にそんな服、浮きまくりなことこの上ない。さらにもしかしたら自分たちも着るハメになるかもしれない。
いつもの少しダルそうな目を輝かせつつこれ着ろよ、とゴスロリ服を手渡してくるリーダーを想像して真っ青になる面々。
ユ「き、着ませんよそんなゴスロリ服なんて……恥ずかしい」
いや、お前は鏡を見て言った方がいいと思う……いやユイはキャラだからしょうがない、イタいとか言っちゃだめだ。
バターン!!
直「滝沢さん!?何があったんで……す?」
と、ここでバターン!と、やかましい効果音をあげながらコールした直井が現れ、同時に岩沢を見て固まる。
ひ「……まぁやっぱりそうなるわな」
直「……カッコいい」
「「「「「!!!!????」」」」」
……あれ、なんで類友状態?いや呼んだのは俺だが
直「流石神を統べるに相応しき滝沢さんの想い人、身に纏う衣服も素晴らしい……。
……すまなかった、今まで滝沢さんにつきまとう下賤な阿婆擦れだと思っていたが……それが真の----」
岩「あんたうるさい
発言がいちいちイタいしさ」
(((((……あんたが言うかっ……!!)))))
直「……ぐふっ…」
バタッ
直井でも勝てないのか……というかもっと粘ってもらう予定だったのに……メンタル弱すぎだろ……
ひ「何し来たんだこのアホは……」
岩「きっとあたしのこの『力』に引き寄せられてしまったんだな……哀れだ」
「「「「「!!??」」」」」
ヤバい。なんかビンビンきた。つか確実に悪化してきてる。こら関根、ビクンビクンするな。
電波放射を開始しだしていよいよヤバい、という状況だが……
奏「お邪魔するわ。何?滝沢君」
そんな状況でガチャリと扉が開けられ奏が入ってくる
滝「おお奏!いやまさみがだな……」
ポーズを決める岩沢を横目に奏に事情を説明する
奏「つまり道化を演じればいいのね、かつて私にした事を彼女にもする、と」
察しがいい……
奏「成功報酬はお昼分も麻婆ね」
………………
滝「……『成功』報酬だ。」
苦渋の決断だが致し方ない……それ位の事を頼んでるんだからしょうがないが……
奏「忘れないでね
さて、岩沢さん」
岩沢に向き直ると奏は空気?というか表情を変える
奏「あなたがどうしてもその『力』を使うというのかしら?」
岩「愚問だな、使わずしてなんの『力』だ」
奏「そう、あなたがその気なら私も……」
腕を胸の前に持ってくると一気に振り下ろす、すると彼女の袖から……
「「「「は、ハンドソニック!?」」」」
飛び出してきたのは昔さんざんお世話になった、F○8の黒人も御用達、カタールっぽい例のアレ。無論APはこちらの世界に等あるわけもなく、なんとなく、という理由でチャーに作って貰った。殺傷力はほとんどない、雑草位はなげる(斬る、ではない)、という程度。費用は滝沢持ち。
ちなみにこのカタールというとコレを想像するだろうが、コレは本当はジャマダハルでありカタールはただの短剣で……
閑話休題
奏「このエターナルセイバーを使って止めさせてもらうわ。あなたが暗黒の力に支配されるならいっそ……」
岩「……は?」
……下がった。
奏「この神なる力、エターナルセイバーがあればたやすいこと。
それこそが神の遣いである私の使命……」
岩「ふぇ?か、奏?何を……」
……今だ、たたみかけるのは今。
滝「上手いじゃないか……」
岩「え?え?」
一呼吸
天使 (また泣かせるのか?言ったら多分帰って泣くぞ?)
悪魔 (だがそれはそれで……)
天使 (……GO)
悪魔 (言え、言ってしまえ……!)
なんと頼りないんだろう俺の脳内天使は
滝「まさみの真似するのが」
奏「それほどでもないわ」
岩「!!!!????」
おお真っ青になった。
……と思ったら真っ赤になったな、首から上赤一色。
岩「っ!!!」
まさみ は にげだした!▼
……あ、転んだ。んでこっち見て…うわ涙目なってる、可愛い。今すぐ抱き締めたい、ぎゅーってしたい。
……っと立ち上がって涙拭いて……また走り出した
奏「んじゃ行くわね……直井君起きて」
滝「おお、すまんかったな。」
財布はキツくなったな……チャー達にも我慢してもらうしかないか……
ひ「……っは!な、何だったんださっきの?」
後ろを見るとさっきのアレを見てフリーズしていた面々。ようやく再起動しだしたようだ。
関「あたしなんか疲れたんで帰りますわ……」
入「私も……」
ユ「私もー……」
よほどショックが大きかったんだろうな……
ひ「滝沢……そういうのはもう貸すなよ?」
滝「無論だ。これ以上泣かせる気はないしな……」
.
.
---------
次の日岩沢さんは学校を休んだ。
その次の日、登校したかと思ったらずっと保健室で寝てた。
三日目、ようやく現れたかと思ったらいつもは見せないような凄い笑顔であたしやみゆきちやユイに接してきて奢るからなんか食いいこーぜ、とか言ってきた。ありえない。
なんかちょっと怖いけど口止めのつもりなんだろうな、と思った。
あと奏ちゃん見る度にビクってなってさり気なくあたしの後ろに隠れる、やべ可愛い、抱き締めたい、ナデナデしてあげたくなるけどたっきーが嫉妬しちゃうと悪いからやめとく事にする。
あーアル○ォートが食べたいなー岩沢さん買ってきてくれないかなー。みゆきちにスティックでおもいっきし叩かれた。すげー痛い。crow song刻むな。みゆきちマジキチ。
.
.
------戦線本部
いつものようにひさ子達が部室に入ってくると滝沢と岩沢がいた。
----なんか岩沢の両肩に手ぇ乗せて……
ったく2人でイチャイチャすんのは構わねーけど今日はみっちり練習するっつったのは岩沢だろうが……
ひ「よぉ岩沢ー」
滝「ひさ子っ!?」ドゲシッ
……な、なんだこいついきなり飛びついて来やがって気色わりぃ……思わずおもいっきし殴っちまったじゃねーかよ
滝「痛いよひさ子……」
床にも顔面打ちつけてマジで痛がってるし……何時もみたいに受け身くらいとれよ
関「つかどうしたのたっきー。岩沢さんの見てる前でひさ子さんに手ぇ出そうとするとかさ……
胸か!胸に飢えたのか!」
岩「いや、そうじゃなくてだな……
……
…………(ニヤリ)
光、あたしは悲しい。女は所詮胸って考えだったのかよ」
……あ?なんだ?変な違和感を感じる
滝「ちょっとお前も悪ノリしないでさ、早く元に戻してくれって言ってんじゃん!」
肩、というか胸ぐら掴む勢いで岩沢を揺する滝沢、……こいつこんな事するっけ?
入「な、何の話?」
ユ「さぁ……?
てゆーか岩沢さんに何しとんじゃボケ!!彼氏だからって容赦せんぞゴルァ!!」
……更に加えるなら地味に内股の滝沢に……ドヤ顔で揺すられる岩沢……ん?あの表情普段からどっかで……
……まさか
ひ「なぁ……どっちが岩沢だ?」
疑念を抱きつつ『岩沢』の耳元に口を寄せて聞いてみる
岩「おおー、流石順応性が高い?なひさ子」
小声で返してくる『岩沢』。
つまりこういう事らしい。
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チ「暇だぜ」
↓
滝「暇つぶしがてら前みたいになんか作るか?」
↓
いろんな物制作
滝「ところで前元祖APのデータを見てだな、それに使われてた技術ここんとこ応用して色々作れないか?」
↓
竹「これは面白いですね、やりましょう」
↓
↓
いろんな物→ヤバい物へ
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岩「そして出来上がったのがコレだ。元は相手がどんな夢見てるかわかる、的なもん作ったハズだったんだが……」
寝てる岩沢に使って、気がついたら中身が逆になってた、と。
つかよくそんな訳のわかんねーもん作れたなおい。何でもアリ過ぎてどうツッコミいれたらいいかわかんねぇぜ……
岩「いいか、SSというのはようするに特定のキャラや人物を使い妄想を書き綴ったものだ。 APという謎の技術が隅々までリーダー達に解明できていない以上ネタの宝庫として使った方がいい」
あー、確信した。こういう小難しくてメタな説明は滝沢以外にありえない。つかそうなると岩沢をおもいっきし叩いちまったのが……やべー。
ちなみにこの前の奏のアレも暇つぶしに作ったもので、他にも奴はリクエストに応じてねんどろい○っぽいまさみの人形とか、ひさ子のマウスパッドとか色々作ってくれた。って聞いてねーよ。つかなんだあたしのマウスパッドって。
岩「ちなみに藤巻のリクエストだ」
聞いてねーって
入「何の話ですか?」
関「愚問だよみゆきち……岩ひさが復活したのさ。百合ップルだよ。」ベシッ
軽くひっぱたいといた
ひ「んなわけねーから」
ゴツッ
……ひっぱたいた後机の角にぶつけたみたい……
関「痛いです……ひっぐ
岩沢さーん……いつもみたいに抱き締めて背中ぽんぽんしてくださいよー……」
涙目になってるしちょっと罪悪感が無いわけでも……まぁいいか関根だし
滝「ったく仕方ないな (ぎゅっ)
ほら関根、泣きやめ (ぽん、ぽん)」
関「ふぇっ!?な、な、なんでたっきーが!?」
入「えっ!?」
ユ「うわぁ……岩沢さんの見てる前で」
…………
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…………あ。
体はあいつでも意識はあたしだから……うん、セーフ。仕方ない。不可抗力だ
滝「冗談だーわりぃ関根ー(棒)」
関「へっ?だ、だよねー!あっはっは
……ははっ」
いやしっかし、なんだ、良い匂いだったなぁ……
……って変態か私は……!いや、光(変態)の体なんだから仕方ない?セーフ?不可抗力、きっと。でも光は関根の近くにいると良い匂いとか感じてんのか?なんかそれはそれでなんか腹立つな……
……ああ、もう……だから問題はそこじゃない
滝「……本当にはやく戻してくれ」
岩「うん……無理」
…………え?
岩「ちょっといくつか焼き切れてるとこあってチャーに今部品取りにいってもらってるんだよな……修理も必要だし……
今日は無理。」
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今日は無理、そう言った瞬間。
……
頼むから俺の顔で涙目にならないでくれ。涙目になるな。キモい。更に生きてる事が不幸とか歌わないでくれ。低いキーしかだせなくて歌い方はあってるはずなのにやっぱりなんかキモい。もう自分の事なのに涙出てくる……
関「……2人ともなんで泣いてるのさ」
滝「気にするな関根……別に今日1日の辛抱なんだ。声でなくて歌えないってのが辛いけどね……
声は出なくてもギターは弾ける、曲だって作れるんだ。別になんの問題も無いハズだ」
ひ「その意気だ……さぁ練習しようぜ!」
滝「おう!」
普段は殴ってばっかりなのになんか新鮮っすネ。差別よくない、俺にも優しくしてよひさ子様
クイックイッ
ん?
ユ「なんかよくわかりませんが練習しましょうよ~」
よし、と『彼女』のストラトを手にし……
岩「さぁ、派手にやろうぜ!」
.
ひ「スタァップ!!やめやめ!
こら『岩沢』! そんなヨレヨレのリズムで続けるな!」
ニヤニヤもせず言うひさ子。なんかデジャヴを感じる。
入「岩沢さん……体調悪いなら休んでも良いんですよ?好きなのはわかりますけど……」
関「ですね、今日はちょっと……あはは」
リズム隊も、
ユ「なんか声安定しませんね……体調悪いなら本当にしっかり休まれた方が……」
ユイも心配してくる。
滝「……だな、気分転換にちょっと付き合え」
…………
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岩「すまない……」
滝「気にすんなって。初めてだろうし仕方ないよ」
歌う事の大変さが、というより弾きながら歌う、という事の大変さがわかった。
何時も弾くだけより何倍も疲れて、更に手元が覚束なくなる
岩「……凄いんだなお前は。こんな小さい体であんなに頑張ってんだもんな……」
ユイだってそうだ。ああ、あいつも凄い……どっちも華奢だってのに好きだから頑張って……
そしたらふと抱き締められる感覚、
岩「な、何だ急に?」
目の前一面に広がる冴えない顔、
滝「いや……抱き締められるとホッとするっていうか……落ち着けてたから……」
真っ直ぐな目で見られつつそんな事言われて、だんだん近づいてきて……ああ、なるほどコイツはなかなかカッコいい。自信が湧いた……
……って近い近い近い近い!!
岩「何故キスしようとする!?」
滝「?いや、あんたも安心出来るかなって」
いや俺は男と唇を合わせるなんて真似したくない、というかお前は自分とキスするのになんの抵抗もないんか?いやそりゃこんだけ可愛いけりゃ抵抗は……って俺は何を考えているんだアホ。
滝「まぁ良いじゃないか。最近やってないし…それとも嫌?」
岩「嫌ってわけじゃ…うんにゃ、やっぱり嫌だろう、それは」
どう足掻こうが野郎とマウストゥマウス。この事実は変わらないだろう。
滝「ああもう面倒くさいな…中身はあたしなんだからさ、いいだろ?」
では何故明日しようと思わないんですか。昨日しようと思わなかったんですか。ってああ力強い、強いって。クソなんで頑張って鍛えた事が裏目に出てんだよおい。つか嫌がる女の子に無理やりキスしようとする男って絵柄的にコレ俺 (の本体)捕まるって!ってああそんな事思ってる間に近い近い近い!目は閉じた方がいいな、キスの時目を閉じる、普通の…アレとは全く意味が異なる気がするけど……ってあああ気配が!気配が!!気配が…あ。
.
.
滝「……ふぅ」
岩「何充実したような顔してんだ……」
なんだろう……大切な物をなくしちゃった気がする
滝「気にするな、結構楽しいじゃないか」
これはあくまで一男子からの意見だが……百合はいい。可愛い同士だったらむしろGJだ。だが薔薇、テメーはダメだ。
一部男性諸君、俺の言いたいことがわかるだろう?わからない方は流してくれ。
滝「……もう一回していい?」
岩「ダメ。絶対にだ。」
まさみよ……何時もやってくるし無意識なんだろうが……眉を下げて上目遣いというのはお前みたいに可愛い女の子がやるから効果があるんだ。
決して男がやっちゃいけない。ああ、さっき少しでも俺カッコいいとか思ったのは幻だったんだ。やっぱり俺キショイ。泣ける。
滝「良いじゃないか減るもんじゃない」
まさか、俺の精神が現在進行形でガリガリもってかれてますよ。さっきからこちとらずっと半泣きだよ。ってああにじり寄るな!
岩「……それ以上近づくならこの胸思いっきり揉みしだく……!」
滝「……や、やめろよ?」
自分の体を人質にするなんて追い詰められてピストルを頭に向ける犯人のようだがあいにく自分の体じゃない、手を胸に当てて言うと体の持ち主も流石に動きが鈍る。ああ、それとやっぱりやわこい。
しっかしアレだな……体勢的に覆い被さる一歩手前の男と半泣きで胸に手をやる女、って絵。やっぱりどっか犯罪臭い。実際俺の顔周りが暗いとちょっと怖い。
ってああアホな事考えてたらまた泣きそうになってるし……
岩「じょ、冗談だって。そんな事しないし、なんだったら今日風呂も入んないから」
滝「なぁ!!??
そ、それはそれで汚いけど……そうした方がいいな、うん。」
別に今更な気もしないでも……ああこっちじゃ今更じゃないか……
そりゃ見たくないと言ったら嘘だが望まれないなら見ない、という考えはある
だが……今回ばかりは無理そうだ
深刻な問題だと思っていなかったのが悪いんだ……蝶の羽ばたきが竜巻を生み出す、というわけでもないが些細な事でもきちんと対処すべきだったのだ……
岩「だがな一つ……空気ぶち壊す事はわかっているんだが……これだけは伝えなきゃいけないんだ……」
滝「なんだ?」
岩「……怒らないでくれよ?」
滝「歯切れが悪いな……どうしたんだ?」
岩「お花を摘みに行きたいんだが……」
滝「え?あ?なぁ……そ、それは……いや、み、見ないで欲しいって言うか……うぁあ……」
だから頼むから俺の顔で涙目にならないでくれ。やめてくれ。キモい。泣きたいのはこっちなんだ……
チ「おーい、スペアの材料が家にあったから思ったより早く直ったんだが……」
「「それを今すぐよこせぇっ!!!!」」
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後日
滝「完成だ……!」
岩「廃棄しろ、今すぐだ」
滝「まぁ待て今度は大丈夫だ」
岩「……何が出来たんだ」
滝「エレキ三味線とエレキ琴だ。和楽器におもいっきしディストーションかけたりなんかしちゃって……和と洋の究極の融合……」
岩「へぇ……」
滝 (どやぁ……)
岩「で、誰が使うんだ?」
分解後、再利用可能部分を除き廃棄処分
岩「あ、それと加えるならどっちも既存品あるからな」
滝「え……マジ?」
岩「マジだ。オリジナルだと思っても誰かが既に、なんてしょっちゅうある。曲とかもな」
滝「そうか…んじゃこの本人の声をサンプリングして作った『喋るまさみちゃんぬいぐるみ』も誰かが既に……」
『ソレニサワルナー』
岩「廃棄しろ、今すぐだ」