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複雑な事態をより拗らせる迷惑なヤツ

【『冥濛(めいもう)のスピネル』か……。勇者サマリアよ。これは少し面倒なことになりそうだぞ】


 ナザレが掴まされた偽の宝玉。

 シャロいわく、それは『冥濛のスピネル』なる宝石だったようだ。

 何でもナザレの鑑定の結果では、皇国から遥か東方の大陸にある、ブルカネル山脈の一部の鉱脈からしか採れない希少な宝玉『浄波(じょうは)のスピネル』と出たらしい。

 見た目も完全にソレと一致しており、ナザレ自身も疑っていなかったと言う。

 本来であれば、『ざまぁwww』の一言で片付けたいところなのだが、残念ながらそういう訳にもいかなそうだ。

 その後のシャロの青ざめた顔を見ればこの一件、何かしらの尋常ならざる背景があることは明々白々である。

 だからこそその辺りの事情聴取も兼ね、こうしてわざわざベルチ島の人気のない湖畔にまで移動し、アバドに問い合わせしているのだが……。

 彼女は俺の話を一通り聞くなり、何とも不穏な予言を告げてくる。


【『冥濛のスピネル』……。近隣の海水をその身に吸収し干上がらせる、特殊な魔法が付与された宝玉だ。とは言え、お主の仲間が掴まされたのは、十中八九レプリカだろう。本物は、我が居城・サトマール砦の宝物殿より連なる隠しフロアに厳重に保管されておる】


「は? 俺が行った時はそんなモンなかったぞ?」


【当然だ。この宝玉の存在自体、擬態魔法の原則と並ぶ機密事項だからな。そこへアクセス出来るのも、我とシェオルを除いては()()()()()()()。ソレ以外の有象無象は、その存在は知れど現物は見たこともない者が大半だ。公にした結果、その詳細を他種族に漏らされては困るからな】


「……そう言うお前はガッツリと漏らしてるけどな」


【なっ!? ち、違うコレはっ! そ、そもそもお主が聞いてきたのであろう!? よいか!? 我がこうしてお主に話しておるのは、一にも二にもシェオルが人質となっているからだっ! その辺りは、く・れ・ぐ・れも、勘違いするでないぞ!?】


 勇者の俺に対し、界隈トップクラスの対外秘を極めて自然に垂れ流した魔族の王は、連連(つらつら)と苦しい言い訳を並べる。

 やはり、この魔王。

 妹>>>>>越えられない壁>>>>>魔王としての矜持、らしい。

 それともココしばらくのやり取りを通して、知らず知らずの内にその心身に主従関係が刻まれていったのか。

 いずれにせよ、こちらとしては与しやすくて助かるのだが、これはこれで彼女の行く末を案じてしまう。

 とは言え、そんなことは勇者の俺には管轄外なので、今後もアバドには大いにボロを出して欲しいものである。


「……でもよ。言うてレプリカなんだろ? ならどうしてそれが、そんなに面倒なんだ? ただでさえ、こちとら勇者にはあるまじき特殊事情抱えてんだ。これ以上、厄介事に巻き込まれて堪るか」


【それは身から出た錆であろうに……。レプリカだから安泰というわけではない! 問題は、その()()にあるのだ! お主も疑問に思うだろう? 何故、コリッツのようなゴロツキどもの根城に、そのような代物が紛れ込んでいたのかを」


「まぁ……、それは大いに疑問だな。そもそも擬態させてまで持ち込む意味が分からん。知られたらマズいってんなら、シンプルに人目に触れない場所に隠しときゃいいだけのことだろ。おかげでウチの宝石マイスターのプライドが無駄に傷付いただろうが」


【まさにそこよ……。クソッ! ()()め! いつまでもシェオルを苦しめおって!】


 アバドがそう言うと、念話の向こうからダンッと、テーブルを叩くような音が聞こえてくる。


【……勇者サマリアよ。大前提として言っておく。宝玉に擬態魔法を掛けたのは、ネベーラではない。この一件、彼奴とは()()()()で動いている者がおる】


「別の思惑って……。なぁ、まさかソイツって」


【あぁ。三大魔神官の一人、メルカバだ】

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