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7

初配信が終わった数分後。

コメント欄の余韻がまだ頭の中でこだましている頃、私は居ても立ってもいられずに部屋のドアをノックした。


「……どうぞ。」


返事を待たずにガチャッとドアを開ける。

部屋の中はまだ配信の照明がついたままで、モニターには「配信終了」の文字が出ていた。

お兄ちゃん――いや、“夜宮慧”は、椅子に深くもたれかかって、放心したように天井を見上げている。


「見てたよ〜。泣いてたね。」


ニヤニヤしながら言うと、案の定、お兄ちゃんが顔をしかめた。


「……見られてたか。」


「そりゃ見るでしょ、デビューだよ?家族として見守らなきゃ。」

「うわ、なんか保護者みたいなこと言うなよ。」


「でも、良かったよ。緊張してたけど、ちゃんと自分の言葉で話してたし。手紙読むとこ、こっちまで泣きそうになったもん。」

「……マジで?」

「うん。コメント欄の人も優しかったし、いい初配信だったと思う。」


お兄ちゃんは少し俯いて、照れくさそうに笑った。

「ありがとう。……なんか、ほんとに始まったんだなって感じする。」


「うん。慧くん、デビューおめでとう。」

名前を呼ぶと、お兄ちゃんが顔を上げて「やめろ、鳥肌立つ」と笑った。


「でもさぁ。」

「ん?」

「もう11時だぞ。眠くないの?」


その言葉に、私は大きくあくびを噛み殺した。

「……ぶっちゃけ今、すげぇ眠い。」

「だろ。」


「配信中は興奮してちゃんと見れてたけど、終わった途端に、どっときた。」

「まあ、テンションってそういうもんだよ。」

「あと、安心したんだと思う。ちゃんとやり切ったの見てさ。変な話、すごい誇らしかった。」


お兄ちゃんは、何か言おうとして口を閉じた。

少しの沈黙。

そのあと、ぼそっと「……ありがとうな」と言って、モニターの電源を落とした。


暗くなった部屋の中で、私は欠伸をひとつ。

「おやすみ、お兄ちゃん。」

「おう。……夢でコメント欄読んでそう。」


「それはそれで幸せそうじゃん。」

そう言って笑いながら、私は部屋を出た。

ドアの向こうで、配信者“夜宮慧”ではなく、ただの“お兄ちゃん”のため息混じりの笑い声が聞こえた。



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