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私は小さな紙袋を手にして、お兄ちゃんの前に差し出した。
「お兄ちゃん、これあげる。」
お兄ちゃんは少し首をかしげて、紙袋を受け取った。
「なにこれ?」
「お兄ちゃん、ネタ困ってたじゃん。」
「うん、まあ……」
「だから、ネタを提供しようかと。別に使わなくてもいいよ。VTuberデビューのお祝いも兼ねてるから。」
お兄ちゃんは紙袋を見つめ、少し複雑そうな表情をしている。
「あ、ありがとう……?」
なんだか照れくさそうで、でも嬉しそうでもある。
まあ、いい。
「どういたしまして。」
「これ、開けていい?」
「ダメ。」
「ええ……?」
お兄ちゃんの困惑顔が、面白くて思わず笑いそうになる。
「気恥しいし、新鮮なリアクションが大事なんだから。配信で開けてよね。」
「せめて、何が入ってるかだけでも教えて?」
「じゃあ、一つだけね?」
お兄ちゃんはじっと待つ。
「うん。」
「手紙。ファンレターとも言う。」
「手紙……。」
「いやぁ、何年ぶりだろう。手紙なんて書くの。結構大変だったんだよ?」
お兄ちゃんは紙袋をぎゅっと握りしめる。
「俺も手紙もらったのなんて……いや、ないかも?」
「いや、年賀状くらいはあるんじゃない?」
「それカウントしていいヤツ?……まあ、うん。ありがとう。読ませてもらうよ。」
「やったぜ。」
小さくガッツポーズをする私に、お兄ちゃんは少し照れながらも笑った。
その笑顔を見るだけで、紙袋を渡した甲斐があったなと思う。
「これ、配信で使うの?」
「うん、リアル妹がデビュー時に手紙を書くって聞いたことないし。面白そうだなって。」
私は心の中でガッツポーズをもう一度して、にんまりする。
お兄ちゃんの新しい一歩を、自分の手でちょっとだけ後押しできた気がした。
そして、初めてのVTuberとしてのデビューの日が、もうすぐそこまで来ているのを感じていた。




