4
とうとうアナザーストーリーの公式サイトから、タレントが新しくデビューするという告知が来た。
少し、実感が湧いてきた。
そしてなぜか、私の胸までドキドキして、手のひらに少し汗までかいている。
お兄ちゃんが、いよいよ世の中に出る――その瞬間に、私も立ち会うことになるのだ。
告知を見て気づいたことがある。
同期は二人いるらしい。
ああ、いい人だといいな……でも、こればかりはどうしようもない。
一応私は、お兄ちゃんに「デビュー前のお兄ちゃんの同期の人達のことは絶対に私に教えないで」と釘を刺してある。
私だけが知っているのはずるいし、不平等は嫌だから。お兄ちゃんのことを知ってる時点でアウトかもだけど。
どんな人かは、私にも予想はつかない。
けど、お兄ちゃんが自分の力で仲良くなれる人だと信じたい。
さて、お兄ちゃんは初配信で何をやるか、まだ悩んでいるようだ。
とりあえず、VTuberとしての設定やプロフィールをパワポに打ち込む作業から始めているらしい。
趣味、好きなこと、ちょっとした癖……
全部整えてからでないと、初配信は始められないって思ってるんだろう。
私は画面の前で、ふと思った。
「ネタ、ネタかぁ……」
ふむ。いいことを思いついた。
お兄ちゃんが配信で使わなくても、VTuberデビューのお祝いにできるかもしれない――そう思うと、やるだけやってみようかなという気持ちになった。
引き出しから、昔もらった可愛いレターセットを取り出す。
ピンクに小花模様のもの、淡い水色で星が散りばめられたもの、うさぎのイラストがついたもの……
どれも思い出深くて、全部可愛い。
どれにしようか、真剣に悩む。
机の上で、レターセットを一枚一枚手に取りながら考える。
お兄ちゃんは喜んでくれるだろうか。
少しでも笑ってくれたら、それだけでいい。
「よし……これに決めた」
心の中で、そっと呟く。
「お兄ちゃん、頑張ってね。応援してるよ」
まだ初配信は始まっていないけど、私はすでに胸がいっぱいだった。
彼の新しい一歩を、こうして一緒に見守れること――それだけで、今日も世界がちょっとだけ優しく見えた。




