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EP10.ちづるんクレープ始めます

今回の主人公は、安藤なな。2年A組の、のんびりマイペースな普通の女の子です。

ななは特別目立つタイプではないけれど、いつも教室の片隅で、

クラスメイトたちの関係や雰囲気を、ふんわり優しく見つめています。

文化祭という特別な日。

――そんな一日を、ななの目線で静かに切り取ってみました。

私、安藤なな。2年A組、のんびりした性格が取り柄の普通の女子。


文化祭が近づいてきて、教室もなんとなく浮ついた雰囲気になっていた。ホームルームでは、クラスの出し物を決める話題で盛り上がっている。


「やっぱがっつりお好み焼きだろ」と北村くん。

「やだ! 映えない! チョコフォンデュがいい」とまなみちゃん。

「甘いもんばっか食べるから太るんだろ」

「……あ〜言った! 最悪。やっぱ痩せてるほうがいいんだ」

「そのままが好きって言ってるだろ!」


ケンカなのか、いちゃついているのか。このやりとりも、私たちのクラスではすっかり“いつもの光景”になっていた。ふたりの勢いに、周囲はすでに達観モード。私もその様子を眺めながら、自然と笑顔になる。


そんな中、ひときわ違う方向から声が上がった。


「ねえ! キャバクラやろうよ!」


言い出したのは千鶴さん。縦ロールの髪を揺らしながらノリノリでスケッチブックを机の上に広げる。そのスケッチブックには、リボンとフリルだらけのドレスを着た女の子たちのイラストが、いかにも千鶴さんらしく、ちょっとヘタウマな感じで描かれていた。


「衣装とか超かわいくない? あたしママやるし、お客さん、イケメン限定ね!」


当然のように即却下。クラスの男子も女子も、全員が一斉に「はぁ!?」という顔で千鶴さんを見ていた。

「ダメに決まってんだろ!」「先生にバレたら即中止、停学だろ!」「ちづる、いい加減にしろ!」

それでも千鶴さんはまったくめげない。


「えー、マジで? あたし的にはガチありなんだけど。てか、がっつりしたのと甘いのの両方ってなら、クレープでもやれば? 映えるし、ソーセージとか巻けば男子も満足じゃん? 店名はもちろん『ちづるんクレープ』でさ!」


その一言に、場の空気が一変した。

「……それだ!!」

こうして、文化祭の出し物は「クレープ屋」に決定。拍子抜けするほどあっさり決まったけれど、決まるときってきっと、こういうものなのだ。千鶴さんの突拍子もない発言には慣れているクラスメイトたちも、まさかそのアイデアが採用されるとは夢にも思っていなかっただろう。もちろん、店名は速攻で却下されたけれど。


本番当日。


天気は快晴。秋の風がちょっと冷たくて、制服の袖を伸ばすとちょうどいい。

教室の前では、法被を着たまなみちゃんが元気に呼び込み中。北村くんは中で黙々とクレープを焼いている。


「はいっ、焼きたていっちょー!」

「ありがとうございます〜! いちごチョコいかがですか〜!」


ふたりの掛け合いは、まるで夫婦漫才みたい。「北村くん、手際よすぎない?」「ちょっと意外〜」なんて声も聞こえてくる。焼き上がったクレープを手渡すその姿に、列に並ぶ女子の目も少しキラキラしていた。


その様子を眺めながら、私はふとつぶやいた。


「なんか……しあわせだなぁ」


誰かと付き合ってるわけでもないし、恋をしているわけでもない。でも、こうして誰かが楽しそうに笑っているのを見るだけで、なんとなく心があたたかくなる。


ああ、やっぱりこのクラス好きかも。みんながそれぞれの場所で輝いていて、それが眩しいけど、心地いい。

まなみちゃんと北村くん、ありがとう。

私も、いつか二人みたいになれるかな。誰かを心から大切に思って、隣で笑い合えるような。そんなささやかな幸せが、私にも訪れるのかな。


**「ねぇなな! やっぱ『ちづるんクレープ』って看板作り直すべきだと思わない!?」**千鶴さんが、巨大なチョコバナナクレープにかぶりつきながら、不満げに呟いた。彼女の口の周りにはチョコと生クリームがべっとりついていて、まるで小さな子供みたいだった。


*『サイドストーリーは恋をする~誰かの恋の真ん中~』シリーズ*

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

……はいどうも、あとがき、桐谷千鶴が乗っ取りまーす!

え、作者さん、どいててどいてて。

というかさ、今回のタイトル、**「ちづるんクレープ始めます」**ってさ……

ぶっちゃけ私、主役じゃなくない!? 出番、少なくなくない!?

ほぼネーミングだけじゃん!?

しかも「ちづるんクレープ」って看板、却下されたし!!

なんなら呼び込みも焼き担当も私じゃなかったし!!

……いや、いいの。クラスが楽しそうだったから。

ななとか、見てるだけで幸せって言ってたし。うん、うん、青春ね。

でもさ、作者さん?

次回は私が主人公でしょ? さすがに。今度こそ、ガチで主役回だよね?

……え?

次は……斉藤さんの文化祭の話?

あの静かでふわっとしてて、図書室で本読んでる子の……?

……ま、いっか。

私が本気出すのはその次ってことで♪

(というかほんとに私回あるんだよね? 作者さん? 目そらさないで?)

ということで、今回はこのへんで!

“ちづるん”の逆襲は、いつか来る——!

ばいばーい♡

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