お出かけ
長期休暇も残るは後二日。つまりは三日後には断罪されるか否か分かる。
「はぁ……」
「セシル、溜め息吐きすぎ。もう五十八回目だよ」
「数えなくて良いよ」
ルイスとは変わらない日常を送っている。いや、少し変わったことがある。一緒に寝なくなったのと、手を繋がなくなったこと。
俺が前世の記憶を取り戻してからというもの、ルイスとの距離感についていけず休息が取れていない。ルイスはそこを配慮して一定の距離感を保ってくれるようになった。
それにしてもルイスが攻めだったとは。受けだと思って油断していた。
そんなルイスが俺に提案した。
「そうだ、セシル。王都にでも遊びに行こうよ」
「何か欲しい物でもあるの?」
「ううん。無いけど、国外追放されたら二度と行けないなと思って」
「確かにな。することも特にないし行くか」
こうして本日は王都へおでかけすることになった。
◇◇◇◇
「ルイスは相変わらず格好良いな」
「何言ってるの、セシルも全く同じじゃない」
いつもと違って俺とルイスは外出用の身なりだ。ピシッと着こなしているルイスが一段と格好良い。ルイスの言うように俺も同様だが、鏡で見ているわけではないのでルイスだけが格好良く見える。
「ほら、ルイス見て女子達がキャーキャー言ってる」
「あれはセシル見てるんだよ」
そう言ってルイスは以前していたように手を繋いできた。
「ルイス? 手繋ぐのやめたんじゃ……」
「たまには良いでしょ? 普段我慢してるんだから」
確かに、十六年間毎日スキンシップしていたのに一切なくなったのだ。まだ数日しか経っていないがルイスは随分と我慢しているに違いない。
「それにさ、たまにの方が新鮮だよね。セシル、最近手繋ぐの慣れてきちゃってたから」
「それはどう言う……?」
ルイスが俺だけに聞こえるように耳打ちしてきた。
「僕にドキドキしてるセシルを見るのが堪らないよ」
耳元で囁かれ、顔が耳まで赤くなったのが分かった。双子の弟に弄ばれている。どうにか兄の威厳を……。
「はは、何それ。まぁ、良いや。セシルあそこのお店入ろ」
「うん」
ルイスに手を引かれながら革製のハンドメイドの店に入った。店に入るなり、店の主人がニコッと笑って言った。
「いらっしゃい。相変わらず仲良しだね」
「でしょ」
「今日は何を御所望で?」
「今日は見にきただけなんだ。また今度お願いするよ」
ルイスがそう言っても店主は嫌な顔ひとつしなかった。
この店は俺とルイスの行きつけだ。身につけている革製の物は大体ここで買っている。
それからも色々馴染みの店をウィンドウショッピングして回った。
「そろそろ休憩しよっか」
「うん、さっきの通りに良さげな店あったね」
そう言って、俺とルイスはカフェで休憩することになった。
◇◇◇◇
俺とルイスはブラックコーヒーを頼み、大量の砂糖とミルクを入れた。
今まで何とも思わなかったが、こんな甘々なコーヒーを飲むなら最初からカフェラテのような元々ミルクが入っている物を頼めば良いのにと思ってしまう。
「これが良いんじゃない。なんかセシル変わったよね。性格とか色々」
「そう?」
「前はリゼットと僕にしか興味無くて、周りなんてどうでも良かったのにさ。さっきから行くとこ行くとこ寂しそうな顔してる」
「だって……」
もう二度と来れないと思うと切なくなってくるというものだ。
「ルイスは何とも思わないの?」
「うん、別になんとも。また新しいとこで新しい店見つければ良いだけだし。ちょっと前のセシルなら同じこと言ってたよ」
ルイスの言う通りだ。前世の記憶を思い出す前は非常にドライな性格だった。俺の世界は俺とルイスとリゼットで回っていたから。
ふと俺はルイスに聞いてみた。
「こんな俺じゃ一緒にいたくない?」
「まさか。少し変わったけど、根本の繋がってるところは変わらない。セシルも分かるでしょ?」
「うん」
言葉には言い表せないが、双子特有の何かだろうか。目に見えない何かで繋がっているのが分かる。ルイスと俺は二人で一つ。昔からそれは変わらない。
「だからさ、大丈夫だよ。国外追放されたって僕たち二人が一緒なら。それに僕はリゼットにした事は悪いと思ってないよ」
ルイスがそう言って、甘々のコーヒーを一口飲んでから続けて言った。
「セシルの話を幼い時に聞いたって同じことしてたと思う。だって、それが僕なりの愛し方だから」
ルイスが格好良く見える。実際格好良いのだが、自分の愛を貫いているところが格好良い。
でもその考えは結局は自分勝手なもの。リゼットの思いや考えは何ひとつ優先されない。
「分かってるよ。だから、潔く断罪を受け入れる。死罪になったってセシルと一緒なら怖くない」
「ルイス……」
「両親のことは……知らない。だって僕たちをこんな風に育てた責任があるからね。僕とセシルがリゼットを囲っているのを知って見て見ぬ振りしてたんだから同罪だよ」
「そうだね」
ルイスはこの話をする為に俺を外に連れ出してくれたのだろう。部屋にいる俺はとにかく気分が沈んでルイスの話もまともに聞けていなかったから。
ルイスにお礼を言おうと口を開きかけたところで、背後から聞き覚えのある声に呼ばれた。
「セシル、ルイス」
「「ヴァレンティン殿下」」




