以心伝心
俺とルイスは観念して屋敷に帰った。あのまま逃亡を続けても 父が無理矢理にでも連れ戻しに来るはずだ。それに、ヴァレンティンの精霊の加護がある限り逃げられない。
俺に出来ることはもうない。潔く断罪されるかされないか、断罪の日を待つ他ない。
半ば諦めていると、ルイスがベッドに寝転がって俺に聞いてきた。
「セシル、そろそろ教えてくれない?」
「何を?」
意味がないことは分かっているが、一応惚けてみる。が、やはりルイスはお見通しなようで俺に言った。
「僕が気付いてないとでも思った? 僕とセシルは一心同体だよ。なんだって分かる。だけど、急に分からなくなったんだ。あの時から」
俺が前世の記憶を取り戻した時だろう。俺が黙っているとルイスは続けた。
「全部じゃないよ、分かる時ももちろんある。だけど、どうしても分からない。リゼットをいらないって言ったのも逃げようって言ったのも、何か理由があるんでしょ?」
「言っても信じてもらえない」
「セシルちょっと来て」
ルイスに言われて近づくと、急に腕を引っ張られてベッドに仰向けに転がされた。そして何故かルイスが俺の上に馬乗りになっている。
「えっと……」
そのままルイスにベッドの上で床ドンされ、目の前がルイスでいっぱいになった。同じ顔だし見慣れているはずなのに、やはり顔が真っ赤になってしまった。
これはどういう状況だろうか。思考が追いつかない。
ルイスが俺の耳元で囁いた。
「セシル、僕にドキドキしてるんでしょ」
「な……!?」
耳元でそれはずるい。吐息までかけられて……誰でもドキドキする。
ルイスを手で押しのけようとするが、力が思うように入らなくてびくともしない。
「僕とセシルは力も同等なんだ。上に乗ってる方が強いに決まってるでしょ」
ルイスは悪戯っぽい笑顔でそう言って続けた。
「セシル、どう? 話す気になった?」
「えっと……何を?」
「セシルは意地っ張りだなぁ。これならどう?」
「ひゃぁ……」
ルイスの舌が耳の中に入ってきた。ねっとりと絡みとられ、いやらしい音まで聞こえてくる。
「セシルは耳が弱いんだね」
「ルイス……あぁ……やめて」
頭が真っ白になりながらも必死でそう言えば、ルイスの舌が離れた。
「セシル可愛いね。前は手繋いだり抱き合ったりしても普通だったのに最近おかしいんだもん。すぐ顔が真っ赤になるし」
「それは……」
「それもあの時からだよね。セシルはセシルなんだけど、何かが違う。教えてくれる気になった?」
「……」
「本当に強情なんだから。僕は良いんだよ? 元々僕とセシルは一心同体だから」
そう言ってルイスは再び耳を貪るように舐めまわし、俺のシャツのボタンを器用に片手で外し始めた。
「ぁあ……駄目、ルイス……言うから、全部話すから」
「あーあ、残念。僕もうその気になっちゃったのに。セシルのせいだからね」
「ごめん……」
つい謝ったが俺のせいなのか? 今のはルイスのせいでは?
「セシル、そんな事言って良いの? 続きするよ」
こんな時に以心伝心が発揮されなくて良いから。ルイスが怖過ぎる。
「美し過ぎるの間違いでしょ。セシルは可愛いけどね。で、話聞かせてもらおうか」
「話すからさ……どけてもらえないかな?」
「嫌。どいたら逃げるでしょ? このまま話して。それに少しでも隠しそうになったら……分かるよね?」
ニコッと笑うルイスが怖……美し過ぎる。
観念してルイスと肌を重ねながら前世の記憶について話した。
◇◇◇◇
「大体分かったよ」
「ルイス信じるの?」
「信じるも何も、最近のセシル見てたら納得した」
ルイスはそう言いながら俺の首筋に顔を埋めた。もちろんさっきと体勢は変わっていない為、ルイスが上に乗っている。
その体勢にも慣れてきた。ルイスの方がしんどいのではないかと思う。ルイスの髪を梳くように撫でながら言った。
「隠しててごめん。でもこの前世の記憶も意味がなさそうだ」
「そんなことないよ。リゼットをあそこで無理矢理抱かなかっただけでも違うかもしれない」
「そうかなぁ」
「断罪されても国外追放でしょ? 二人で仲良くやっていこ。それに……」
「ひゃッ! ルイス、な……ダメ」
話をしている時は、ルイスは何もしてこなかったので油断していた。俺の首筋にルイスが吸い付くようにキスをした。何度も。
「全部話しただろ……ルイス……やめっ」
「話したらやめるなんて言ってないよ」
「な、ズルい」
「だって、今のセシル可愛過ぎるんだもん。僕の物のようで僕の物じゃない。僕の物にしたくなっちゃうじゃん? これも前世の記憶のおかげだね」
そう言って、再びルイスの舌が耳に入ってきた。
「あ……耳はダメ」
「他のとこなら良いんだ。セシルってば、大胆」
今のルイスに何を言ってもダメだ。変なスイッチが入ってる。元々依存しあってた兄弟だ。一度や二度の過ちは仕方ない。受け入れよう。
「あれ?」
「そんなすんなり受け入れられたらつまんないよ。断罪されたって、僕とセシルの時間は沢山ある。ゆっくり可愛がってあげるよ」
ルイスは俺の額にチュッとキスをして離れた。その時の表情は何とも言えない狂気に満ちていた。
そんなルイスに恐る恐る聞いてみた。
「ルイス? リゼットはどうするの?」
「んー、どうやっても僕のモノにならないんでしょ? 僕の元に帰ってくるならまた可愛がるまでだけど……今はセシルかな」
聞くんじゃなかった。ルイスのヤンデレの矛先がリゼットから俺へと切り替わった模様。




