女神様の加護
とある教会。俺とリゼットは祈りを捧げている。
俺は祈りをやめ、リゼットと隣り合わせで椅子に座った。
「この国は不思議なことでいっぱいだね」
「うん」
「でもそのおかげでリゼットとこうして隣に座ることが出来てる。感謝しかないよ」
俺とリゼットは正式に恋人同士になった。もちろん婚約もしている。
リゼットに振られたはずの俺だが、先日告白をされた。俺のことが好きだと——。
結論から言うと、俺とルイスの行動は初めから意味を成していなかった。前世の記憶が戻った日からの行動が。いや、少し違うか。意味はあった。リゼットと結ばれる為には。
初めからリゼットは俺に恋心を抱いていた。しかし、それを口に出してしまえば依存し合っている双子のことだ。その間には亀裂が入り修復不可能となるだろう。だから、その気持ちに蓋をした。
しかし、俺が断罪回避を試みようと小説のシナリオに反した行動を起こした。そこから歯車はどんどんズレていった。そして、タイムリープをした日から良からぬ方へと加速した——。
それを修正してくれたのが実はリゼットだったのだ。
リゼットには精霊よりもはるかに上、女神様の加護がついていた。そして、リゼットもまた過去を変えていた。厳密に言えばリゼットはリープではなくループしていたのだ。俺の死をきっかけに。
リゼット曰く、タイムリープをした日の出来事は俺の体験したものとは本来違うらしい。順を追って説明するとこうだ。
一回目のタイムリープをした日、本来俺はリュシエンヌの婚約を断って、その場でリゼットに想いを伝えていた。そして俺とリゼットは恋人となった。
しかし、それを陰ながら見ていたセルベルが嫉妬し、憎悪にまみれ、リゼットを刺殺しようとナイフを手に取った。それを防ごうと俺が代わりに刺されて死んだ。
そして、リゼットはループした。夜会の前に。そこではリュシエンヌとの婚約を後押しし、俺に見つからないように隠れた。
ちなみにループする時間は必ず夜会の前らしい。
二回目のタイムリープでは夜会に行かずにリゼットに告白した。俺はリゼットに振られたが、本来リゼットの答えはYESだった。夜会会場ではない為、俺が刺される心配もないと思って。
しかし、この選択も駄目だった。俺はセルベルとの関係を断ち切っていない為、セルベルの嫉妬や嫉み、憎悪は一回目よりも酷く、更に酷い結果に終わった。俺はセルベルによって無理心中させられた。
そして、リゼットはまた夜会前へとループし、俺を振った。
三回目のタイムリープでは夜会ではなく遭難事件の日の朝だ。リゼットに振られた俺は自暴自棄になってセルベルと婚約話を進めていたところだったので、まさか俺がリゼットに婚約を申込むなど思ってもいなかったようで驚いたらしい。
ルイスの仕事は早く、早々に俺とセルベルの婚約を破棄し制裁も下して、そのことをリゼットにも伝えた。
本来ならヴァレンティンよりも俺からの申し込みを受けたいところだが、なんせ二度も俺が死ぬ姿を見ている。ここは安全な方をとるべきだと思い、ヴァレンティンを選んだのだ。
——そして、リゼットはヴァレンティンと結婚する道を選んだのだが、これまたそりが合わないらしく、いつも喧嘩になるのだとか。
しかし、二人の様子ははたから見れば仲睦まじく見える。仮面夫婦とは正にこの二人のことを言うのではないかと言うほどに。
小説の挿絵の二人の幸せそうな笑顔は果たして本物なのか、偽物なのかそれは誰にも分からない……。
と言うわけで、セルベルも退場し安全の確認もできたので、リゼットは俺に想いを打ち明けてくれた。それから俺は死んでいないのできっと大丈夫……なはず。
「リゼットのおかげだね」
「女神様のおかげだよ。二回も振るハメになるとは思わなかったけどね。振る方もしんどいんだよ」
「ごめん」
「でもさ、ルイスもリュシエンヌ様と婚約できたし、今は私たち三人ちゃんと幸せだね。昔の約束果たせたね」
昔の約束……『三人で幸せになろうね』あの時考えていた結末とは違うが、あの時描いていた未来より今の方が断然良い。
「俺たちの好きなハッピーエンドだね」
俺とリゼットは顔を見合わせて微笑んだ。
「ちょっとちょっと、良い感じのとこ悪いけどさ。この王子様どうにかしてよ。しつこいよ」
「ティムー。僕を精霊にしてくれよー」
「僕はセシルの精霊だから、セシルの言うことしか聞かないの!」
おしまい
最後まで読んでいただきありがとうございます。
良かったら『乙女ゲームの悪役令嬢がうちにやってきました。』もよろしくお願いします。現代日本の女子高生が主人公で、ほのぼのした日常から恋愛盛りだくさん。ざまぁもしていこうと思ってます。




