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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第一章 断罪回避

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逃避行

 テスト期間も終わり、明日から長期休暇。


「いよいよ明日だね」


「うん、みんな泣くかな」


「泣かないでしょ。僕とセシルの違いも分からない人たちだよ。困りはするだろうけど」


「そうだな。リゼットも王子様と上手くやってるようだし」


 ——リゼットとはあれから話していない。というより俺が無視をしている。


『セシル、どうしてそんなに怒ってるの?』『ねぇ、私何したの?』『悪いとこ全部直すから』『ねぇ……』


 終いには泣き出した。流石にやりすぎたかと思って優しい言葉をかけようとしたが、視線を感じて思いとどまった。


 近くにヴァレンティンがいたのだ。慰めるのはヴァレンティンの役目。俺は退場しよう。


 案の定、俺とルイスが去るとヴァレンティンがリゼットに声をかけていた。これで順調に愛が育まれるはず——。


 そして、今はルイスと逃亡する為に荷造り中。


 両親には、長期休暇中は領地で過ごすと言ってある。道中、雇った盗賊に襲われて行方をくらます作戦だ。


 ちなみに俺とルイスには護衛は一切いない。我儘を言ってつけていないのもあるが、護衛なしでも強いから。


 公爵家の後継として勉学だけでなく、体術、剣術、全てにおいて秀でていないといけない。そう教え込まれた俺とルイスは全てにおいてトップクラスだ。


 ヤンデレでなければ、顔は良いし優良物件だと思う。


「セシル」


「ん?」


「なんでもない。準備できたから寝よう」


「うん」


 そして俺とルイスは仲良く手を繋いで寝た。


◇◇◇◇


 馬車で移動中。雇った盗賊が現れるのを待っている。


「セシル最近眠れないの?」


「うん、まぁ」


 眠れるはずがない。ルイスと手を繋いでいるだけでドキドキものなのに、ルイスは俺に絡み付いて眠るのだ。


 抱き枕のように体に絡みつくならまだ良い。ルイスは違う。ルイスの胸に俺が顔を埋めるようにして、頭からすっぽりルイスに包まれるのだ。


 今までの俺はこれが普通だったが、双子だからといってこの距離感は異常すぎる。一度くらいやっていてもおかしくないレベルだ。やってはいないけれど。


 流石に寝不足だ。どこかの宿でゆっくり休ませてもらおう。そんな事を考えていたら、馬車がガコンと音を立てて止まった。


「来たみたいだな」


「御者と侍従が捕まってる隙に行けば良いんだよね」


「うん、その手筈だ。俺が先に様子を見てくるから、合図したらルイスも出てきて」


 俺はそう言って馬車から降りた。


 手筈通り御者と侍従が捕まっていた。


「セシル様! お逃げください!」


「うるせぇ、静かにしろ」


 侍従が叫ぶと盗賊の一人が侍従を思い切り殴り、侍従は気絶した。


 うわ、ちょっとやり過ぎかも。


 盗賊には後で注意するとして、ルイスを呼びに戻ろうとしたら後ろから頭を強く殴られ、その場に倒れた。


 え……。俺が雇い主なんだけど。こんなことしても良いと思ってるの?


 立ち上がって抗議したいが、頭を強く殴られたのと寝不足なのもあって上手く体が動かない。意識が朦朧とする中、盗賊の話し声が聞こえる。


「こいつ綺麗な顔してるな。女じゃないが、高く売れそうだ。連れてくか」


「おい、金目の物もあらかた運んだぞ」


「よし、ずらかるか」


 俺は意識を手放し、盗賊によって連れて行かれた。


◇◇◇◇


「こんな顔で産まれるなんて恵まれてるよな」


「俺がもしこの顔なら盗賊なんてやってないね」


「当たり前だ。女も侍らせ放題だ」


 盗賊の話し声で目を覚ました。


 久しぶりにゆっくり寝た気がした。って、ここは何処だ。手足が縛られている。俺は捕まったのか。


 どうやら本物の盗賊に出会したようだ。ルイスは見当たらない。俺だけ出て行ったからまさかもう一人いると思わなかったのだろう。


 安堵していると、盗賊が話しかけてきた。


「お、兄ちゃん目を覚ましたか」


「喜べ、今からお前を売りに行ってやる。変態ババァに可愛がってもらうんだな」


 想像したら背筋がゾワっとした。


 出来ればそれは避けたい。手足の自由さえきけばこいつらなんて……。


「逃げようだなんて考えるなよ。じきに船が出る」


「なんだって?」


「隣国に連れていくんだ。あんた良いとこの坊ちゃんだろう? 国内で売ったらバレるからな」


 そりゃそうだ。って納得している場合ではない。隣国に連れて行かれたらそれこそ戻れない。ルイスと離れ離れになってしまう。


 俺は盗賊に提案した。


「待ってくれ。どうせ売るなら高く売りたいだろ?」


「そりゃあな」


「俺と同じ顔がさっきの馬車にもう一人いる。セットで売れば金額が跳ね上がる事間違いなしだ」


「もう一人? それは本当か?」


 盗賊が食いついた。一気に畳み掛けるように俺は話した。


「俺とあいつは双子、一心同体。あいつと一緒じゃなきゃ嫌なんだ。どこぞのくそババアだって、俺一人が相手するより二人同時に奉仕された方が喜ぶだろ」


「確かにな。よし、一旦戻ろう」


「良いのか? もう船出るぞ」


「船なんて今日でも明日でも変わらん。それよりもう一人を攫いに行くぞ」


 盗賊の一人に担がれながら船を降りた。


 よし、ひとまず助かった。これからどうするか。


◇◇◇◇


 連れ去られてからどのくらい経ったのだろうか。半日は経っているからルイスはさっきの場所にはいないだろう。


 領地の方に行ったのか、はたまた屋敷に戻ったのか。否。元々雇っていた盗賊と行動を共にしているはずだ。


 何故分かるのかって? 双子だから。それ以上の理由はない。


「やっぱもういないか。おい、どこに向かうとこだったんだ?」


「アヴリーヌ公爵領です」


「とりあえず、そっちに行ってみるか」


 盗賊は俺が言った方へ進んだ。ルイスはもうすぐ来てくれる。このまま進めば……。


「おい、セシルを返せ!」


「ルイス!」


 やっぱり来てくれた。見たか、俺とルイスの以心伝心は最強だ。


 ルイスの後ろには案の定、複数の見知らぬ男がいた。おそらく俺が雇った盗賊だろう。


「本当に同じ顔してるな。お前も捕まえてやる。行くぞ!」


 盗賊のリーダーと思われる男の掛け声で、両者が一気に戦闘モードに入った。


 ルイスが集中的に狙われているが、軽やかな身のこなしで全ての攻撃を交わし、敵に一撃を食らわしている。


「おい、大丈夫か? 縄切るからな」


「ありがとう」


 ルイス側にいた男がこっそり俺の後ろに回っており、縄を切ってくれた。お礼を言って、すぐさま俺はルイスの元へ駆けつけた。


「セシル、心配したよ」

 

「ごめん、さっきは油断した。こいつら、俺たちを変態くそババアの所に売る気らしい」


「なんだ。先に言ってよ。手加減しちゃったじゃん」


「まったく、ルイスは優しいんだから」


 そう言って、俺とルイスで盗賊を完膚なきまでに叩きのめした。

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