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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第六章 時空を超えて

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タイムリープ 二回目

 結局一回目のタイムリープは失敗に終わった。俺はリュシエンヌと婚約し、リゼットに想いも伝えられなかった。


 せめて、援助が必要な時はいつでも力になることをリゼットに伝えたかった。そして、婚約が必須なら俺は無理でもルイスが婚約者になると。


 しかし、リゼットが見つからないのだ。受付に確認してもリゼットは帰っていないようで、会場内をくまなく探したが見つからなかった——。


 再びすぐにタイムリープをしたいところだが、それには魔力量が足らず一日待機となった。


 チャンスは残り二回。同じ失敗は許されないので、次は入念に計画を立てることにした。一回目の振り返りをしていると、ルイスがぼやいた。


「結局さぁ、リュシエンヌはセシルが好きなんだろうね。僕なんて元々眼中にないんだよ」


「そんなことないよ。偶々俺がセルベルをバッサリ切ったからそれを評価してくれたんだろ。次はルイスがそれをすれば……」


「駄目だよ。僕は婚約者探してないもん。結局セシルとリュシエンヌが婚約になりそう」


 そして、俺はふと気がついた。


「そもそも夜会に参加しなければ良いんじゃないかな?」


「確かに……」


 あの時は、リゼットとの付き合いは夜会限りにするつもりだった。なので、俺が一緒に参加しなければリゼットへの虐めが酷くなる。そう思って無理に参加していたのだ。


 リゼットと関係を修復した今となっては、夜会はあまり重要ではない。


「じゃあ、夜会会場に行かずにどこか雰囲気の良いところでセシルはリゼットに想いを伝えたら? 二人が付き合っちゃえば誰も婚約を勧めてこないよ」


「簡単に言うけど、リゼットにも選ぶ権力があるから。相手にもされないかも」


 そう、想いを伝えた所でリゼットには想い人がいる。俺は振られるだろう。


「だけど、玉砕しても残り一回のリープでリゼットとデイヴィッドの婚約を阻止して、俺は意地でもリゼットと政略結婚してみせる!」

 

 俺が意気込んでいると、ルイスは呆れたように言った。


「そんなに意気込まなくても良いと思うよ。だってリゼットの好きな人って……」


「なに?」


「ううん。頑張ってね」


◇◇◇◇


 翌日、二度目のタイムリープをした俺とルイスは夜会に行かずリゼットと食事をしている。リゼットは困惑して言った。


「あのさ、夜会行かなくて良いの?」


 リゼットの問いにルイスがのんびりとした口調で応えた。


「良いの良いの。リゼットが可愛すぎて他の男に見せられないよ。ね、セシル?」


「うん」


 夜会に行かない理由になっていないからか、リゼットはまだ困惑している。


「後から怒られないかな」


「大丈夫、俺たちと一緒にいたら怒られないよ」


 俺の言葉にリゼットの食事を進めていた手が止まった。


「それって……」


「やっぱ俺たちはリゼットがいないと寂しくて駄目なんだ」


「……私も、私も寂しかった」


 リゼットが今にも泣きそうな顔をしながら言葉を絞り出していると、ルイスはそっと席を立って部屋から出て行った。


 ここは個室なのでリゼットと俺は二人きり。ルイスの粋な心遣いに感謝だ。ここで想いを伝えなければ……。


 俺は食事をする手を止めて、リゼットの顔を見ながら名前を呼んだ。


「リゼット」


「なに?」


「俺は……俺は、リゼットが好きです」


 リゼットは驚きの余り声が出ないでいる。嬉しいのか迷惑なのか、リゼットの表情からは今の感情が何なのか読み取ることは難しい。


 俺は、黙っているリゼットに思いの丈を打ち明けることにした。


「この恋心に気付いたのは最近なんだ。だけど、八年前からずっと好きなんだと思う。だから、他の人に取られたくなくてリゼットに窮屈な思いをさせてきた……ごめん」


 リゼットが声は出さずに首を横に振った。


「これからは自分のことだけじゃなく、リゼットの気持ちを優先させたい。リゼットに幸せになってもらいたい。遅すぎるかもしれないけど……リゼットの隣は俺じゃ駄目かな?」


 暫く沈黙が続き、リゼットがゆっくりと口を開いた。


「セシルの気持ちは良く分かった。とっても嬉しい。ありがとう」


「え……じゃあ」


 期待の眼差しでリゼットを見つめていると、リゼットの眉が下がった。


「でも、ごめんなさい……」


 分かっていた。元々リゼットからの返事は分かりきっていたのに、期待した自分が惨めに思える程に悲しい。辛い。逃げ出したい。


 そんな思いを必死に堪え、俺は笑顔を作って言った。


「俺との未来はなかったけど、リゼットの幸せを一番に願ってるから。それだけは忘れないで」


「うん……ありがとう」


◇◇◇◇


 リゼットを屋敷まで送り届けた後、俺はルイスの胸で泣いた。


「ごめん、時間切れになるまでこのままでいさせて」


「いつまででもどうぞ」


 そう言ってルイスは俺の頭を優しく撫でてくれた。


 暫くして、俺はポツリと呟いた。


「リゼットの好きな人って誰なんだろ」


 八年間、俺とルイスで雁字搦め状態だったリゼットは交友関係ゼロのはず。つまり、そこを掻い潜ってリゼットと接触したことになる。


 その人をどうこうするつもりはないが、ただただ気になった。リゼットの想い人が誰なのか。


 俺の呟きにルイスが不思議そうに応えてくれた。


「僕はてっきり、リゼットはセシルが好きなんだと思ってたんだけどなぁ」


「え……?」


 俺がルイスの顔を見上げると、ルイスと目が合った。困った顔で頭を撫でられ、ルイスは続きを話した。


「そうじゃなかったら告白なんて勧めないよ。恋愛ってさ、自分の事になると分からなくなるけど、他人のことは敏感に何でもわかっちゃうでしょ」


「確かに」


「だから、リゼットのセシルを見る目がさ、恋する乙女だなって感じたんだ」


「ルイスの勘違いだったね……」


 俺は再びルイスの胸に顔を埋めた。そんな俺を慰めるようにルイスが言った。


「三回目のリープで政略結婚狙うんでしょ? デイヴィッドなんかにリゼットは幸せに出来ないんだから」


「うん」


「それにさ、政略結婚したからって愛が無いわけじゃないよ。ゆっくり育んで、最終的にセシルの事を好きにさせちゃえば良いじゃん」


「そうだね……頑張るよ」


 それから数分後に俺とルイスは元の時間に戻った。

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