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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第五章 恋心を自覚するまで

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謎の青年

 翌日。


 ルイスの恋わずらいが酷いので久々に俺とルイス、リゼットの三人で遊びまくろう! 


 ということで、本日は乗馬を楽しみつつ丘の上でピクニックの予定だ。気分が晴れない時はとにかく外に出て体を動かす。そして、風に当たる。それが俺とルイスの小さい時からの気分転換のやり方だ。


 開始早々ルイスとリゼットが心底不機嫌な顔で口々に言った。


「どうしてお前がいるんだよ。邪魔だよ」


「本当ですよ。私たち三人の邪魔をするのも大概にして下さい」


 ルイスとリゼットに邪魔者扱いされているのはヴァレンティン。そんな扱いをされても気にもしていないヴァレンティンは言った。


「だって僕だけいつも仲間外れで寂しいじゃないか。僕も一緒に遊びたい」


 俺はルイスとリゼットを宥めるように言った。


「ごめん、俺が誘っちゃったから。それに、陰でこっそり見られてるより良いだろ」


 ヴァレンティンはリゼットをストーカ……陰ながら見守っていたらしい。


 ——俺とルイスがリゼットを迎えに行くと、屋敷の周囲を不審者がうろついているとの情報が入った。


 リゼットは可愛いからこういう事は良くある。俺とルイスで直々に成敗しに向かうと、そこにはフードを深く被って顔は見えないが、明らかに不審な動きをしている者がいた。


 俺とルイスは口々に言った。


『こんな所で何してるんだ?』


『覗きなんて悪趣味なことやめて堂々と正面から行きなよ』


 すると不審者は堂々とした態度で返してきた。


『覗きなどではない。リゼットを見守っているだけだ。危険な目にあっていないか心配なんだ』


 どこかで聞いたことのある声だが気のせいだろう。俺に不審者の知り合いはいない。


『お前みたいなのがいるから危険なの分からないの? 馬鹿なんじゃない? セシル、時間が勿体無いからさっさと捕まえちゃお』


 ルイスがそう言うと、俺とルイスは同時に不審者に殴りかかった。


『待て待て待て、僕だ僕』


 そしてフードを取った時には遅かった。俺とルイスの拳は同時にヴァレンティンの腹部に入っていた。


『え……ヴァレンティン? どうしてこんな所に?』


『うう……』


 ヴァレンティンは殴られた部分が痛すぎるのか、蹲って俺の問いには応えられずにいた。


『だ、大丈夫? 痛かった?』


『セシル、そんな奴心配しなくて良いよ。さっきの発言聞いたでしょ? 不審者に変わりはないんだから』


『でも……』


 ルイスの言う通りではあるが、この国の王子に違いはない。そして、きっと物凄く痛かったはず。


 リゼットに相手にされずストーカーまでして、俺とルイスに思い切り殴られる。何故だかそんなヴァレンティンが哀れに思えてきて、俺は言った。


『今から三人で遊びに行くんだけど、ヴァレンティンも来る?』


 ——というわけで、一波乱あった後、急遽ヴァレンティンも同伴することになった。放っておいても多分後ろからこっそり付いてきていたと思う。


 ルイスはリゼットを馬に跨らせた後、自身もその馬に跨って言った。


「セシルは優しすぎるんだよ。まぁ良いや。変質者にリゼットは任せられないから、僕はリゼット連れて先に丘まで行ってるね」


「うん。すぐ追いかけるから待ってて」


「あ、セシル。そいつに妙なことされたら馬から蹴り落とすんだよ」


「う、うん……」


 ルイスがリゼットを乗せて颯爽と馬を走らせるのを眺めながらヴァレンティンが聞いてきた。


「ルイス、僕は変質者なのか?」


「俺はセシルだ。そして、リゼットの周りを許可もなくうろついていたら誰が見ても変質者だ」


「リゼットに嫌われたかな」


「今更な質問だな。それにしてもヴァレンティンが乗ると白馬に乗った王子様そのものだな」


「そうだろう。王子様だからな。セシルも早く来い」


 ヴァレンティンのドヤ顔は腹立つが、これだけ見た目が良いのだ、リゼットにこだわらず他を探せば良いのにと思う。


 そんなことを考えながら俺も馬に跨り、丘の上を目指して出発した。


 ちなみに、俺とルイスの馬しか用意していなかった為、ヴァレンティンは俺の馬に一緒に乗っている。密着度は高いが、何故だか美形でもヴァレンティンにだけはドキドキしないので助かる。


◇◇◇◇


「ルイス……何してるの? リゼットまで……」


「消毒」


 ヴァレンティンと共にルイスとリゼットの元へ行くなり、ルイスに馬から引きずり下ろされた。そして、服をこれでもかと言うほどにはたかれて抱きしめられた。


 横で見ていたリゼットにルイスが声をかけた。


『リゼットも来る?』


 来るわけがないと思っていたら、やや照れながらリゼットが俺の後ろにピタッとくっついた。背中同士をくっつけるような形で——。


 現在二人に挟まれ、俺の心臓は今にも破裂しそうな程に高鳴っている。


 安定のヴァレンティンを見つめて心を落ち着かせようとすれば、勘違いしたヴァレンティンが俺の元へやってきた。


「僕はここら辺にくっつけば良いのか?」


「違ッ……」


 俺の制止は間に合わず、いつものようにヴァレンティンはルイスに蹴り飛ばされた。


「ルイス、やりすぎだよ」


「だって、僕のセシルに害虫が止まりそうになったから」


 俺から誘ったのにこの仕打ち。ヴァレンティンが心底可哀想になってきた。後で謝っておこう。しかし、ヴァレンティンのおかげか、ルイスがいつもの調子を取り戻しつつある。


 楽しいひと時が終わると再び現実に引き戻されるので、今くらいはリュシエンヌのことは何も考えずにルイスに楽しんでもらいたい。


 そう思ったのも束の間、こういう時には何かが起こるのが物語というものだ。見知らぬ青年が馬に乗って俺達を見下ろしながら言った。


「婚約者に内緒で他の女と密会? このことリュシエンヌは知ってるの? 言ったらどうなるんだろうねー」


「「誰?」」

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