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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第一章 断罪回避

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解放

 翌日、俺とルイスは二人で学園に向かった。


 いつもはリゼットを迎えに行ってから三人で学園に行くのだが、今日はリゼットを迎えに行かなかった。


 リゼットは一人で大丈夫だろうか。変な男に引っかかっていないだろうか。しっかりしているように見えて、そそっかしい所もあるから転んだりしていないだろうか。


「「はぁ……」」


 俺が溜め息を吐いたのと同時にルイスも溜め息を吐いた。


 俺とルイスが考える事は大体いつも一緒だ。今も同じことを考えていたに違いない。


 だが、俺からリゼットを解放すると言った手前、リゼットの事を考えていると知られては面目が立たないというものだ。


「今日も寒いな。俺、手袋持ってくるの忘れちゃったよ」


 話を逸らすことにした。


「セシル忘れっぽいんだから。はい」


 ルイスはそう言って自身の手袋を外し、手を差し出してきた。俺がその手を取ると、そのままルイスのポケットの中に収まった。


 うわ、恥ずかし過ぎる……。


 いつもやっていたことなのに、前世の記憶を思い出してからと言うもの、こう言った何げない仕草が恥ずかしい。


 しかもポケットの中の手は恋人繋ぎだ。こんな超絶イケメンと手を繋いでいると思うとドキドキしてしまう。同じ顔なのに。


 手汗は大丈夫だろうか、ベタベタしていないかなと考えていたら、ルイスが俺を呼んだ。


「セシル?」


「あ、ごめん。やっぱベタベタしてた?」


「ベタベタ? いや、セシルの顔が真っ赤だから熱でもあるのかなって」


 そう言って手を繋いでいない方の手でルイスに前髪をかきあげられ、額と額をくっつけられた。


 ッ——!?


「やっぱちょっと熱いかな? セシル休んだ方が良いんじゃない?」


「だ、大丈夫。大丈夫だから」


 その美し過ぎる顔を早くどけてくれ。


「本当に? しんどかったらすぐに言うんだよ」


「分かった」


 そう返事をするとルイスの顔が遠くにいった。


 心臓に悪過ぎる。今までの俺とルイスは依存し合っているからこんなこと日常茶飯事だったが、前世の俺にとっては非日常的だ。


 今の俺にはこの距離感は無理だ。双子の弟相手にドキドキが止まらない。


◇◇◇◇


 そんなこんなで何とか学園に到着した。


 ちなみに、学園は二学期をもうすぐ終えようとしている時期。即ち今はテスト期間。


 断罪されるのは、このテスト後の約三週間の長期休暇を終えた後の新学期が始まる時。それまでの俺とルイスの行動で断罪を回避できるかが変わってくるはずだ。


 なので、リゼットとはもう関わらない。解放して王子様とラブラブになってもらおう。そう思っていた矢先、背後から声をかけられた。


「セシル? ルイス? ごめんなさい」


「「リゼット……」」


 リゼットがオロオロしながら謝罪をしてきた。


 いつものことだ。リゼットは特段悪い事をしていないのに、俺とルイスの機嫌を損ねたと思った時にリゼットがする行動。それに対し、普段だったら俺とルイスは笑顔でこう返す。


『リゼットが分かってくれたなら良いよ』


『これからも三人一緒だね』


 だが、今回は違う。突き放さなければ。俺が悪者にならなければ。


「リゼット、手紙で言ったように俺とルイスはもうリゼットと遊ばない。好きに友達でも何でも作りなよ」


「セシル、ごめんなさい」


「リゼットは悪い事したの? 悪い事したのは俺だろ? してないのに謝るのやめなよ。不愉快だ。じゃあね」


 俺はそう言って、リゼットを一人残して教室を目指した。


 ルイスが後ろ髪引かれながらリゼットを見ているのが分かる。そして、ルイスが心配そうな顔で俺に言った。


「セシル、本当に良かったの? リゼット泣きそうだったよ」


「良いんだ。俺はもうリゼットなんていらない。ルイスがいてくれたらそれで良い」


 俺とルイスがリゼットの交友関係をゼロにしたのに、そのリゼットを突き放すなんて最低だ。だけど、信頼できる友人を探すのに俺たちは邪魔でしかない。


 万が一にもリゼットに害を与える輩がいれば裏で手を回せば良い。俺に出来ることは、とにかく突き放して遠くから見守ることだけだ。


 教室に入ると一瞬ざわついた。それもそのはず、俺とルイスの間にリゼットがいないのだから。


 恐れ知らずな令嬢は平然と聞いてきた。


「ご機嫌よう。あら、今日はミュレル伯爵令嬢はお休みですか?」


「いえ、後で来ると思いますよ。良かったらリゼットと仲良くしてあげてね」


 そう言ってニコッと微笑めば、令嬢は扇子で口元を隠しながら頬を赤く染めた。


◇◇◇◇


 午前中の試験を終えて昼休憩。


「セシル」


「うん」


 それだけ言って俺とルイスは屋上に向かった。


 俺とルイスは考えている事が同じ、若しくは何を考えているのかすぐに分かってしまう。故に会話がなくても成り立つ。


 何とも便利ではあるが、今回ばかりはルイスの心中を察すると辛い。


「ルイス、死に急ぐなよ」


「セシルの方こそ……」


 教室ではヴァレンティンがリゼットに声をかけていた。何を話しているのかまでは聞こえないが、再びリゼットが笑ったのだ。


 ヴァレンティンはプラチナブロンドの髪に緑の瞳、いかにも王子様って感じだ。リゼットと並ぶと本物の恋人同士に見える。


 前世の記憶を取り戻して今は恋心はないにしても、八年間も想っていた相手だ。やはり気にはなる。俺でこれなのに、何も知らないルイスはそれこそ自殺でもしてしまいそうだ。


「ルイス、リゼットの幸せを願おう。見ただろ、あの笑顔。俺たちにはあんな笑顔作れない」


「でも……」


「いっそのこと俺とお前で遠くへ逃げようか」


「何それ」


 リゼットを突き放した所で既に遅いのかもしれない。断罪を免れるなんて出来ないかもしれない。だったら先に逃げるのもアリだ。


 そうすれば一家没落だけは避けられる。公爵の後継は養子を取れば済む。


「セシル、本気なの?」


「嫌か?」


「良いよ」

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