表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第四章 新たな恋の予感

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/43

入れ替わり

 本日もリュシエンヌが遊びに来ている。


「会いに来てくれるのは凄く嬉しいけど、休みの度に大変じゃない? やることもあるんでしょ?」


 そう、リュシエンヌは王女様。本来、慈善活動やら何かと忙しいはずなのだ。


 そして、それを聞いたのは俺ではなく、俺の振りをしたルイスだ。


 ——俺はルイスに提案した。


『リュシエンヌは俺とルイスの見分けがついてない。たまに入れ替わろう』


『でも、リュシエンヌを騙すことになるよ……』


『そうだけど、俺だけがリュシエンヌとイチャイチャしてたらルイス嫉妬に狂っちゃうでしょ』


『うん、もう既に狂いそう』


 そして、俺は考えたのだ。このまま俺とルイスは入れ替わり、俺はルイスとして、ルイスは俺として生きれば良い。


 俺もリュシエンヌは好きだ。時を共にする度に愛しいとも思えるようになってきた。しかし、ルイス程ではないのは自分でも分かる。


 それなら俺が身を引けば良い。


 婚約破棄をしてルイスと婚約を結び直す方法も考えた。しかし、そうするとリュシエンヌに全てを話さなければならない。リュシエンヌが意を決して告白した相手は『ルイス』だと。


 きっとリュシエンヌは傷付く。そして、自分自身を責めるだろう。更には、双子だからどっちでも良いわけではないと怒ってルイスとは婚約自体してくれない可能性もある。


 それならば、普段から俺とルイスが入れ替わって、終いにはそのまま人生を全て入れ替えれば誰も気付かない。誰も不幸にならない。


 唯一リゼットには説明しなくてはならないが、リゼットは優しいから何も言わずに見守ってくれるはず。


 このことはルイスには言っていない。言ったら反対されそうなので。以心伝心されていないことを願うばかりだ——。


 リュシエンヌは照れながら話している。


「セシル様に会う為ならば、仕事もはかどるというものです。そこら辺は抜かりないので気にしなくて良いですわ」


「そっか。リュシエンヌは凄いんだね」


 ルイスが褒めると、リュシエンヌは嬉しそうに笑った。この二人の笑顔は守りたい。切にそう願った。


 リュシエンヌが思い出したように言った。


「そういえば、セシル様もルイス様も狩猟大会は参加されるのですか?」


「うん、その予定だよ」


 実はなんだかんだもうすぐ夏季休暇。ここの学園は日本と違って行事はほぼない。学園祭くらいだ。


 その代わりと言ってはなんだが、夏には各地で狩猟大会が開かれる。貴族の男性は皆それに参加し、良いところを見せて結婚相手を探すことも珍しくない。


 俺はルイスの振りをして小馬鹿にするように言った。


「ヴァレンティンも出るって聞いたけど、あいつ大丈夫かな。弱いのに」


「お兄様は、ああ見えて狩りだけはお上手なんですのよ。リゼット様に良いところを見せるチャンスと仰っておりましたわ」


「へー、人間一つは取り柄があるもんだね。リゼットは手に入らないだろうけど」


 俺とリュシエンヌが話していると、ルイスがにっこり笑顔でリュシエンヌに言った。


「あいつの話はどうでも良いからさ、リュシエンヌは俺を応援してくれるんでしょ? 他の男見ちゃ駄目だからね、俺だけ見ててね」


「もちろんですわ!」


 やはり本物は違う。ルイスの狂気に満ちたあの顔。以前は俺もしていたことなのに、前世の記憶がある今の俺には中々あそこまで再現できない。


 それにしても、ルイスのヤンデレの矛先が俺からリュシエンヌに切り替わったのは良いが、なんだか寂しくも感じる。


 縛られ続けたいわけではない。だが、いつも一緒にいた、依存しあっていた双子の弟だ、遠くへ行ってしまう気がして切ない気持ちになる。弟離れしなくては。


◇◇◇◇


 リュシエンヌが帰宅すると、ルイスが言った。


「セシル、弟離れって何? 僕から離れちゃうの?」


 入れ替わりの方ではなく、そっちがルイスに伝わってしまったか……。それはそれで厄介だ。


「離れないよ」


 そう応えるもルイスの不安そうな顔は消えない。なので、話を逸らすことにした。


「リュシエンヌと楽しそうだったね。リュシエンヌのルイスを見る目は熱いものを感じたよ」


「あれはセシルを見ていたんだ。僕じゃない」


「俺を見る時と違ったよ。俺とルイスを見分けられなくても、どこか本能で分かるんじゃない?」


「セシル、僕にリュシエンヌを譲って何処かに行くの? リゼットの時みたいに」


 断罪前に逃亡した時の話をしているのだろう。


「そんなことしないよ。逃亡できないことは知ってるだろ? ヴァレンティンの力ですぐに見つかる」


「じゃあ弟離れって何?」


 まずい、振り出しに戻ってしまった。


「気持ちの問題だよ。ルイスに依存しすぎてたなって」


「その方が嫌だよ。もっと僕に依存してよ。足りないよ。セシルと心が離れていくのは一番嫌だ」


「ルイス……」


「僕がセシルのモノ取ろうとしたから? だから離れちゃうの?」


「ほら、ルイスおいで」


 そう言って手を広げてルイスを待てば、ルイスが俺の胸に飛び込んで来た。


「離れないから。身も心も俺はルイスから離れない。だから安心してよ。最近のルイス不安になりすぎだよ」


「ごめん……」


「ルイス、明日も休みだ。リゼット連れて遊びに行こうよ。リゼットの相手もしてあげないと寂しがるよ」


「うん」


 結局俺はルイスに甘い。そして俺自身も口には出さないがルイスがいないと正直不安でしょうがない。もしかしたら俺の方がルイス以上に依存してしまっているのかもしれない。


 まだまだ俺とルイスはお互い依存し合う関係は続きそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ