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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第四章 新たな恋の予感

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隠し事

 一方、ルイスと入れ替わった俺はリゼットと共に演劇の続きを観ている。


 そして、再び俺は号泣した。


「うぅ……リゼット。これ何度観ても悲しすぎる」


「セシル大丈夫? 泣けるけど、そんなに? これも使う?」


 そう言ってリゼットは持っていたハンカチを貸してくれた。


「ありがとう」


 俺はハッピーエンドが好きだ。こんな駆け落ちなんて悲しい結末は嫌だ。


「俺がもしアーニャなら、駆け落ちじゃなくて遠くへ逃げるね。誰もいないところまで逃げて好きな人と幸せに暮らしたい」


 泣きながらそう言うと、リゼットがよしよしと困った顔で頭を撫でてくれた。


「ごめん、男がこんな泣いて気持ち悪いよね」


「ううん。良いんじゃない? 私もハッピーエンドの方が好きだし」


「そうなの? リゼットがハッピーエンドになれるよう俺頑張るから。俺に出来ることがあったら何でも言ってね」


 そう言うと、リゼットは複雑そうな顔で黙ってしまった。


 そうだった。俺とルイスの束縛で人生滅茶苦茶になりそうだったのに、そんな俺の手助けなんて必要なわけがない。


「ごめん……。俺なんて役に立たないよね。リゼットを苦しめてただけだもんね」


 素直に謝罪すると、リゼットがガバッと顔を上げて否定した。


「違うよ! そうじゃないの。そうじゃないんだけど、私も新しい恋を見つけなきゃと思って」


「新しい恋? ルイスじゃ駄目?」


 余計なお世話だと言われるが、先ほどのルイスの顔を見るとやはり後押ししたくなる。


 すると、リゼットは暫し悩んで言った。


「他の人なら良いって言いそうだけど、私は分かるから。違うって」


「違う?」


「うん。でもルイスも好きだよ。他の男性と無理矢理政略結婚させられそうになったらルイスに泣いてお願いしても怒られないかな?」


「喜ぶんじゃないかな」


「それなら良いんだけど」


 リゼットは笑って何かを誤魔化している。誰か他に好きな人がいるようだ。それが誰なのかは分からないが、叶わぬ恋なのだろう。


 あまり深入りしない方が良さそうなので、俺はルイスとリュシエンヌの方をチラリと見て言った。


「ルイスも入れ替わったのがバレてなさそうだし、帰ろっか」


「そうだね」


◇◇◇◇


 俺が帰宅して一時間くらい経った頃にルイスが帰ってきた。


「どうだった?」


「うん……バレなかったよ」


「ルイス、どうしたの?」


 何故かルイスが目を合わせてくれない。目を逸らしたままルイスが言った。


「何でもない。久しぶりにセシルの振りしたから疲れちゃった。湯浴みして寝るね」


「うん」


 何かあったのだろうか。隠し事をしないと約束したのに。


 でも人間誰にでも話したくないことの一つや二つある。双子だからと全て深入りする必要もない。ルイスが自分から話すのを待とう。


 ひとまず本を読んでルイスを待つことにした——。


 三十分後。


「今日はやけに長いな」


 いつもは、烏の行水の如く早く出てくるのに。


 俺は心配になり、浴室までルイスを見に行った。


「ルイス、大丈夫……? ルイス!?」


 湯船の中には顔を真っ赤にさせてのぼせているルイスがいた。


「何やってんの、もう。早く出るよ!」


 急いでルイスを湯船から出して、簡単にタオルで包んでベッドに寝かせた。


「氷と水もってくるから待っててね」


 俺がそう言うと、ルイスが小さな声で呟いた。


「ごめん……」


◇◇◇◇


 三十分後、ルイスの身体の火照りは取れており、顔色もいつも通りに戻っていた。


「どう? 落ち着いた?」


「うん。ありがとう」


「ルイス、何かあったの?」


「……」


 ルイスは目を閉じて黙ってしまった。ルイスが俺にここまで頑なに隠し事をするのは初めてだ。よっぽどのことなのだろう。


 俺はルイスの寝巻きを持ってきて、ルイスをそっと起こした。


「はい。とりあえず風邪ひかないようにこれ着よう」


「うん」


 ルイスが着替え終わると、俺は布団に潜り込んだ。そして、いつもルイスがしてくれるように手を広げて優しく言った。


「ルイス、おいで」


「セシル……」


 ルイスは複雑そうな顔で俺を一瞥し、目を逸らした。


「ほら、おいでって」


「うん」


 渋々ルイスが俺の胸に飛び込んできた。そのままルイスの頭を包み込むような形で横になった。


「ルイス」


「なに?」


「おやすみ」


 そう言って髪を梳くようにルイスの頭を撫でると、ルイスは俺の顔をチラッと見上げて言った。


「……聞かないの?」


「うん。聞かない」


「ごめんね」


 そう言って、いつもとは反対に俺はルイスを包んだまま眠りについた。


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