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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第三章 関係修復

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リハビリ

 夜会も無事に終わると、国王陛下と王妃様、俺の両親にも盛大に祝福され、晴れて俺とリュシエンヌは正式に婚約した。


 そして、リゼットはというと……。


「ルイス、これなんてどうかな?」


「良いんじゃない? でもリゼットの髪色には青系が映えるよね」


 うちに遊びに来るようになった。


「ルイス、ちょっと」


 ルイスを手招きして呼ぶと、リゼットに優しい言葉をかけてからこちらにやってきた。


「なに?」


「なに? じゃないよ。リゼットとは夜会限りにするって約束でしょ」


「そうなんだけどさ、リゼットが来たいって言うから」


 俺が呆れた顔でルイスを見ていると、ルイスは紙に関連図を書き出した。


「セシル、よく考えてみてよ。僕らを断罪しようとしてたリゼットと王子様は友人にもなれていない。むしろ王子様は僕らと仲良くやってるから断罪される気配もないでしょ」


「うん」


「僕とセシルは切っても切れないし、セシルは王女様と婚約もして幸せだよね。それなのにリゼットはひとりぼっち。むしろ虐められて可哀想だと思わない?」


「うぅ……確かに」


「リゼットは僕らと一緒にいたいみたいだし、前みたいな縛り方しないように気を付けるからダメ?」


 ルイスの言う通りだ。断罪されていない今となっては、リゼットだけが僕とルイスによって人生を滅茶苦茶にされた被害者だ。


 リゼットが望むのであれば、それを優先させるべきなのかもしれない。二度と同じ過ちを繰り返さなければ良い。場合によっては、ルイスの初恋も諦めなくても良いかもしれない。


「そうだな。リゼットが一緒にいたいならそうしよう。ただ……」


 俺はそう言って続きを言い淀んでいると、ルイスが言った。


「僕のことならセシルが止めてくれるんでしょ? 今のセシルなら僕がやり過ぎたら止められるでしょ」


「いや、それはもちろんだが……」


「他にもあるの?」


「俺はリゼットの顔が見れない」


「は? 何言ってんの? 今も一緒にいるじゃん」


「いや、そうなんだけど、このくらいの距離だとギリセーフなんだよ。推しとファンは同じ空間にいちゃいけないんだ。ある一定の距離があるからこそ崇拝できる。近くで拝むのは数ヶ月に一度、握手会のほんの数秒で良いんだ」


 ルイスが唖然としている。


 まずい。前世ではドルオタだった為、ついリゼットをアイドルに例えて話してしまった。


 俺は誤魔化すように早口で言った。


「でも、でも、隣にいても顔さえ見なければ大丈夫。だから、リゼットはルイスと仲良くしてくれたらそれで良いから。俺はルイスの影に隠れるか、遠くから見守っとく。それで良いだろ?」


「何言ってるかさっぱり分かんないや。セシルはリゼットが嫌いなの?」


「嫌いなわけないだろ」


「だったら何で避けるの? リゼット泣くよ」


 それを言われたら何も言い返せない。言葉に詰まっていると、リゼットがやってきた。


「二人で何話してるの? 私帰った方が良い?」


 俯きながらリゼットがそう言うので、先程の会話が聞こえていたのかもしれないと思い、咄嗟に否定した。


「リゼットは好きなだけここにいて。帰らなくて良いから。あ、帰らなくて良いってのは縛りつけてる訳じゃなくて、帰れって言ってる訳じゃないって事で……」


 何を言っているのか自分でも分からなくなっていると、リゼットが顔をあげて満面の笑みで言った。


「ありがとう、セシル」


 駄目だ……この極上スマイルは尊すぎる。


 頭から湯気が出そうな程に赤面していると、ルイスがニヤリと笑って言った。


「今のセシルに会った頃を思い出すよ。それより重症だ」


「わ、分かって頂けたでしょうか……」


「うん。これはリハビリが必要だ」


◇◇◇◇


 そして、リハビリが開始された。


「これは何をしてるの?」


 リゼットは不思議そうな顔をして聞いてきた。それもそのはず、突然俺と手を繋げとルイスに言われたのだ。


 その問いに、ルイスがやや俯きながら悲しそうな声で言った。


「セシルはやっぱり病気みたいなんだ」


「え……私に出来ることある? 何でもするから死なないで、セシル」


 そう言って、リゼットは繋いだ手を両手に持ちかえて、お祈りのポーズで俺の顔を下から覗き込んできた。


「う、うん、善処するよ」


 駄目だ。これはリハビリではない。拷問だ。


 ルイスは何を考えているんだ。こういう時に以心伝心が発揮されれば心の内が分かるのに……と、内心文句を言っていると、ルイスが言った。


「セシル覚えてる? 僕に初めて打ち明けてくれた時のこと」


 前世の記憶の話だろう。リゼットは病気のことだと思っているはずだ。


「あの時もセシルの顔はすぐに真っ赤になってね、どうしようも無かったんだ」


「そんなに……どうしたら治るの?」


 本気で心配しているリゼットが健気だ。


「セシルにはスキンシップが一番効果的なんだ。安心するんだろうね。日常生活を送る上では、徐々に赤くなる回数が減っていったよ」


 そう言われてみればそうかもしれない。ルイスは俺のことを考えてあんなエロいことを繰り返していたのか。感謝しなければ。


「もう一歩の所まできているんだけど、完全には治らなくてね。僕も今夜にでもリハビリに励んでみるよ」


「え……」


 それは今夜エロいことをするという意味では……。ルイスの方を見ると『感謝してくれるんでしょ?』と伝わってきた。


「リゼットにも本当は抱擁とかしてもらいたいけど、セシル婚約しちゃったし、手繋ぐくらいが限界だよね」


 ルイスのその言葉に、婚約して良かったと心の底から安堵した。そして、ふとルイスが疑問を投げつけた。


「リュシエンヌは大丈夫なの?」


 この大丈夫とは、赤面しないのかと言うことだろう。


「正に今、後悔している所だよ。今はまだ一定の距離感があるし、話す時は少し目線を下に逸らしてるから良いけど……」


「そっかぁ。結婚生活も大変かもね」


「リュシエンヌ様に病気の事を悟られまいと……セシル、私頑張るから。セシルの病気が治るように」


「う、うん」


 リゼットは随分と勘違いしているが、元気そうで何よりだ。明日から再び三人で行動を共にする為、虐められることはなくなることだろう。俺の心臓は持たないかもしれないが。

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