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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第三章 関係修復

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夜会

 再び三人並んで夜会会場に入った。


 今回は今まで同様リゼットが真ん中で。リゼットの顔は見ないように注意しながら歩く。


 立食して談笑している人や曲に合わせて踊っている人、既に各々楽しんでいるようだ。


 それでも皆の視線がこちらに集まった。俺とルイスは顔の良い双子。そこにいるだけで目立つ。更には美しすぎるリゼットが間にいるのだから、嫌でも見てしまう。


 そこへ、これまたキラキラ輝く王子様がやってきた。


「ヴァレンティン、正装だと本物の王子様みたいだな」


「王子様だからな。どうだリゼット、見惚れたか?」


「自分から聞くようなことではありませんよ。恥ずかしくないのですか」


 やはりヴァレンティンには強気のリゼット。そんなリゼットの言葉を気にもしていないヴァレンティンは更に自己アピールしている。


「僕は威張り倒すような王子ではなく、皆に気を配れる王子を目指しているんだ。何か食べたいものはあるか? 取ってこよう」


「それでしたら、他の女性に気を配って差し上げて下さい。私は自分で取れますから」


「いや、遠慮をするな。何が欲しい?」


「欲しいものを毎回言うのは手間なのですよ。私は私が欲しいものを好きなタイミングで取りに行きたいです」


「その方の仰る通りですわ。お兄様」


 ヴァレンティンをお兄様と呼ぶ少女は間違いなくヴァレンティンの妹、王女様だろう。社交の場にはまだ出てきていない為、噂でしか聞いたことがなかった。今年入学してきたようだ。


 それにしても似ている。ヴァレンティンを女性にしたらこんな感じだろうと思わせる程に似ている。


「初めまして。わたくし、リュシエンヌ・オラールと申します。兄がいつもお世話になっております。以後、リュシエンヌとお呼び下さい」


 リュシエンヌが自己紹介をしたので、俺も簡単に自己紹介をする。


「お初にお目に掛かります。セシル・アヴリーヌに御座います」


 学園では皆平等ということになっているため、王族に対しても最上級の挨拶はしなくて良いことになっている。


 続けてルイスとリゼットも自己紹介を済ませると、ヴァレンティンが笑いながら言った。


「こんな可愛い顔して結構キツいんだ。許してやってくれ」


「あら、厳しいのはお兄様にだけですわ。わたくし、良識のある方にはとても優しいのですよ」

 

「はは、お前、妹に良識がないと思われてるんだ。哀れだね」


「ルイス、リュシエンヌ様の前だ」


 俺がルイスに注意すると、リュシエンヌは笑顔で言った。


「良いのですよ。お兄様はお友達が出来たと喜んで、毎日のようにお二人の事を嬉しそうに話すのです。いつものように接してあげて下さいませ」


「ヴァレンティン……俺たち友達だったのか」


「え、違うのか? 僕らは親友だろ。ルイス」


「セシルだ。良い加減覚えろ」


 そんなやり取りをしていると横から声をかけられた。


「セシル様」


 そこにいたのは、セルベル侯爵令嬢とその取り巻き達だった。このセルベルとは、俺がキープ……婚約者候補にしている一人。


「どうして夜会に私を誘って下さらなかったのですか? 私はずっと待っていましたのに」


 わざとらしく可哀想な令嬢を演じている所が鬱陶しいが、家柄は悪くない。多少の妥協は必要だ。


「色々あってな。次は是非エスコートさせてくれ」


「ではせめて、今からダンスでもいかがでしょう」


 面倒だが、一曲くらいなら良いかと思っていると、リゼットが間に入ってきた。


「セシルは体調が悪いんです。ダンスなんてもってのほかです」


「偉そうに何様なの? あ、いえ、セシル様、体調が優れないと言うのは本当ですの?」


 セルベルの本性がチラリと見えたが、すぐさま淑女を取り繕った。そんなセルベルに俺は困惑した表情を作って言った。


「そうなんだ。ここに来るのが遅れたのもそのせいで……」


「まぁ、それは大変。では、早目に帰った方が宜しいのでは? 私が付いて行きますわ」


 このセルベルの下手な演技に苛立ちを隠せない。やはり家柄だけで婚約者を選ぶのは厳しいかもしれない。


 断ろうと口を開きかけると、ヴァレンティンが提案してきた。


「セシルの婚約者はリュシエンヌが良いのではないか? 見た目も性格も良いぞ。王女だし身分も間違いない」


 確かに。話した感じも悪くない。正に理想のハイスペック女子だ。


「理想的だが、こればっかりはリュシエンヌ様にも選ぶ権利があるからな」


「わたくしなら宜しいですわよ」


「え……?」


 リュシエンヌが即答したので驚きを隠せずにいると、セルベルが縋るように言った。


「え、セシル様。私を慕っているのではないのですか?」


 セルベルの問いにルイスが応えた。


「あんた頭の中お花畑なの? セシルはあんたの家柄を気に入ってただけ。演技するならもっと上手くやらなきゃ」


「え……セシル様? 嘘ですわよね」


「ルイスの言う通りだ。目障りだから消えてくれ」


 思わせぶりな態度をとった俺が悪いのだが、これくらい言わないと勘違いした女はいつまでも付き纏ってくるので致し方ない。それにこういった令嬢は切り替えが早い。ダメなら次の標的へとすぐに対象を変える。


 悲劇のヒロインぶったセルベルが取り巻きを連れてその場を後にした。それもなかったかのようにヴァレンティンが嬉しそうに言った。


「セシルが弟になるのか。嬉しい限りだ」


 どうやら俺の婚約者はリュシエンヌに決まったらしい。


 その後は何事もなく無事に夜会を終えた。

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