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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第三章 関係修復

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夜会までの道程

 夜会の日がやってきた。


 俺とルイスは馬車に揺られ、目的の場所に移動している。


「はぁ……」


「セシル、二十六回目」


「だから数えなくて良いよ。はぁ……」


 俺が二十七回目の溜め息を吐いていると、ルイスが言った。


「仕方ないよ。あの時はあれが最善だったと思うよ」


「でも、これじゃ振り出しに戻ったようなものだ」


 そう、今向かっているのはミュレル伯爵邸。リゼットの家だ。


——俺はリゼットに夜会に誘われた。


『私をエスコートして下さい』


 リゼットにそう言われた時、何を言われたのか分からなかった。理解するまでに暫しの沈黙があり、体よく断ろうと思った矢先にクラスの女子の一人が口を開いた。


『あなた、何様のつもりですの? アヴリーヌ様があなたと夜会に行くわけないでしょう』


 その取り巻きたちも口々にリゼットに罵声を浴びせた。


『そうよ。あなたは既にお二人から捨てられているのです』


『少しばかり外見が良いからって他の殿方にも色目を使って、意地汚いですわ』


『女性から殿方を誘うようなはしたない女性等、アヴリーヌ様は眼中にありませんわ』


 ルイスが怒りに震えているのが分かった。ヴァレンティンも同様に怒りを露わにしている。二人が女子生徒達に口を出そうとしたのでそれを手で制止した。


 そして、俺は立ち上がってゆっくりとリゼットの前に跪いて言った。


『良かったら今度の夜会、俺にエスコートさせて頂けませんか?』


『はい』


 リゼットは今にも泣きそうな顔でニッコリと微笑んだ——。


 ルイスも誘う相手等いないので、結局今まで同様に俺とルイス、リゼットの三人で夜会に参加することになって今に至る。


「ルイス」


「分かってるよ。リゼットとは今日限りでしょ。縛ったりしないから安心して」


「ルイスの初恋だったのに、ごめんな」


 ずっと心の中で思っていたことを口にした。何故か分からないが、それを口に出すのが怖かった。俺が謝罪したところで何が変わる訳でもないのに。


 でもずっと考えていた。断罪されて二人きりで国外追放された方が楽だったのではないかと。


 今の状況は生殺しに近い。好きな相手を手に入れられる訳でもなく、一定の距離感でただただ見守る。ルイスにとっては断罪されるよりも酷な事を強いっている。


「そんなことないよ。今のセシルと一緒にいると、好きな人の幸せを願う人生も悪くはないって思えるから」


「ごめんね」


「でも毎回は無理だけどね。もしも、こんな僕にもリゼット以上に好きな人が出来たら今度は逃がさないよ」


 そう言って、ニコッと爽やかに笑うルイスが格好良い。俺が女だったなら、ルイスから逃げられない人生もありかもしれないと思う程に。


「セシルのことも逃さないから安心して」


「う、うん。お手柔らかにね」


◇◇◇◇


 リゼットと合流した俺とルイスは再び馬車に揺られながら、次は夜会会場へと向かった。


 案の定、馬車の中は気まずい雰囲気が漂っている。それを打ち破ろうとルイスが口を開いた。


「リゼット、今日は一段と可愛いね。僕たちのために張り切ってくれたの?」


「……うん」


「え……。こ、この髪飾りなんてさ、僕とセシルの色でしょ?」


「うん。変かな?」


「いや、えっと……」


 先程からリゼットが照れながら肯定するものだから、あのルイスが困惑している。


 だっていつものリゼットなら『そういう訳じゃ……』『侍女が勝手に』『用意されてたから』というような返しだ。


 ルイスは困惑した顔のまま言った。


「とても似合ってるよ」


「ありがとう」

 

 リゼットは頬をピンク色に染めながらにっこり微笑んだ。


 調子が狂う。これではまるで、リゼットが俺とルイスに好意を抱いているみたいだ。まさか、俺たちのことが好きなのか? だから、ヴァレンティンの誘いを断ったのだろうか。


 いや、それはない。今までの怯えようは俺が身をもって知っている。


 そこでハッと気がついた。いつも俺は『俺とルイス』二人を一括りに考えていたが、実は既にルイスとリゼットは恋人同士だったりするのではないだろうか。


 俺はここを小説の中の世界だと思い込んでいる。双子だから突き放す訳にもいかず、哀れに思ったルイスは、俺に合わせてリゼットと距離を取っているような振りをして実は裏でこっそり愛を深め合っているのではないだろうか。


 それならヴァレンティンと結ばれていないのも説明がつく。


 そしてルイスのあの行為。童貞とは思えない程の余裕と舌使い、既にリゼットで卒業済みだと考えれば納得がいく。


 そうと分かれば俺は邪魔者だ。体調不良の振りをして夜会は欠席しよう。


「セシル。何訳のわからない妄想繰り広げてるの」


「ルイス、俺は気付いたんだ。俺のせいでごめん。だから邪魔者は潔く帰るよ」


「セシルの考えは全くもって見当違いだよ。だから帰らないで。リゼットもそっち座ってくれる? このままじゃセシルが帰っちゃう」


「う、うん。これで良い?」


「ありがとう。手も繋いどいてくれると間違いないかな」


「分かった」


 あれよあれよと何故か俺はルイスとリゼットに挟まれ、両手を繋がれている。


 この状況はよく分からないが、このルイスとリゼットの息のぴったり合った動き、正に恋人同士だ。ルイスが俺の元から離れていくのは寂しいが、リゼットとなら喜んで祝福する。


「だからルイス。俺のことは気にせずハッピーエンドを目指してくれ!」

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