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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第三章 関係修復

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婚活

 月日は流れ、俺とルイスも三年生になった。教室を後ろの席から一望し、何気なく呟いた。


「どうして三年生になってもリゼットと同じクラスなんだろ……」


 そう、三年生になった今もルイスとリゼット、ちなみにヴァレンティンまで同じクラスだ。


 俺の呟きにルイスが平然と応えた。


「だって、セシル。三年間僕とセシル、リゼットの三人が同じクラスになるように寄付金上乗せしたじゃん」


「そうだった……。ルイス、どうして進級する前に言ってくれないの」


「だってリゼットが虐められたらすぐに分かるし、そのままの方が良いのかなって」


 確かに、それも一理ある。


 リゼットを縛るのをやめた今となっては、表面上は平和に過ごせている。


 しかし、俺とルイスがリゼットの側から離れたことにより、リゼットへの嫌がらせが度々起こっている。リゼットとヴァレンティンが恋人同士になれていれば違ったのだろうが、友人にすらなれていない。


 なので、嫌がらせをされる度に俺とルイスとで、裏で手を回して圧力をかけている。しかし、クラスが変われば全てを把握出来ないかもしれない——。


「あー、セシルまた来たよ」


 ルイスがそう言うと、教室の外からセルベル侯爵令嬢が笑顔で手を振っているのが見えた。


 俺は上っ面の張り付けたような笑顔で手を振り返しておく。そんな俺にルイスが呆れた顔で言った。

 

「セシル、勘違いさせるからそれやめた方が良いんじゃない。僕知らないよ」


「ルイスは俺を見捨てたりなんてしないでしょ」


「そうなんだけどね」


 俺は絶賛婚活中だ。


 リゼットを側に置かなくなってからというもの、俺とルイスに令嬢が頻繁に声をかけてくるようになった。


 自分で言うのもなんだが、超絶イケメンな上に公爵子息、能力的にも申し分ないハイスペック男子だ。それが二人もいればどっちでも良いからお近づきになりたいと思うのが世の常だ。


 ルイスは鬱陶しいと今まで通り冷ややかな視線を向けドライな対応だが、俺は違う。今は婚活に目覚めている為、ひとまず身分の釣り合う令嬢には興味がなくても愛嬌を振りまいている。


 その為、勘違いした令嬢が休憩時間になる度にこうやってやってくる。


「ルイスは良くもそんなヘラヘラと女性を誑かして恥ずかしくないのか。僕はリゼットがこんなにも忘れられないと言うのに……」


「誑かしてるのは僕じゃなくてセシルね」


 未だに俺とルイスの違いが分からないこの男はヴァレンティン。婚活に誘ったが初恋を拗らせて新しい恋に踏み切れないらしい。


「今日もリゼットがお前たちを三十八回も見ていたぞ。そろそろ仲直りしたらどうなんだ」


「お前、三十八回以上リゼットを見ていたってことでしょ? 引くわー」


 ヴァレンティンのことを白い目で見ているルイスも、数ヶ月前まではそれ以上にリゼットを見ていたのだが、敢えて口には出さない。


「良いだろう。可愛いんだから。それにリゼットを見ているのは僕だけじゃない。クラスの男子はほぼ全員リゼットに夢中だ」


「そうなのか?」


「え、セシル気付いて無かったの?」


「うん。ルイス以外の男に興味ないし」


 素直にそう言うと、ルイスの顔がみるみる笑顔になった。


「でも、それなら今度の夜会もリゼットは大丈夫そうだな。エスコートしてくれる奴がいなかったらって少し気になってたんだ」


「うん、むしろ相手を誰にしようかで悩むと思うよ」


 新学期に入ると、学生同士親睦を深める為に夜会が開かれる。出席は強制参加で、誰でも良いので男女ペアになって男性が女性をエスコートして入場することになっている。


 入場さえしてしまえば自由であるが、大体そのペアで行動することが多い。故に好意を抱いている異性がいる場合、この夜会でペアになれたら今後の恋愛には発展し易い。


 ちなみに、去年まではリゼットを挟んで俺とルイスで参加していた。ペアではないが、そこは権力を振りかざせばどうとでもなる。


 ヴァレンティンが真剣な表情で言った。


「僕もここでリゼットにリベンジを図ろうと思っている。薔薇の花束を持って誘おうと思うんだがどうだろうか」


 それに対して小馬鹿にしたようにルイスが返す。


「はは、それ本気で言ってんの? やめときなよ」


「駄目なのか……」


「でも誘ってみるのは良いんじゃないの? 一度玉砕してるからリゼットも負い目を感じないだろうし」


「それは、振られる前提ではないか」


「当たり前でしょ。お前に幸せになられたら腹が立つもん」


 ルイスは未だにヴァレンティンを名前で呼ばないが、なんだかんだこの二人は仲が良い。微笑ましく二人の言い合いを見ていると横から声をかけられた。


「セシル、ちょっと良い?」


「リゼット……」


 ヴァレンティンとリゼットの野外デート以来、リゼットから声をかけらることはなかったので正直焦った。


 周囲の空気もピリついて、ざわついていた教室が一変して静かになった。


 俺は平常を装ってリゼットに言った。


「なに?」


「セシルは……夜会には誰と行くの?」


「リゼットには関係ないだろ」


 そう言うと、やはりリゼットは俯いた。しかしリゼットは再び顔を上げて聞いてきた。


「さっきのご令嬢と行くの?」


「それは決まってないけど、誘おうかなとは思ってるよ」


「好きなの?」


「いや……」


 絶賛婚活中ではあるが、好きな相手などいない。俺が言い淀んでいると、リゼットがはっきりと言った。


「私をエスコートして下さい」

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