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断罪寸前の悪役令息に転生したので、ヒロインの幸せを願うことにします。  作者: 陽七 葵
第二章 ラブラブ大作戦

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野外デート①

 時は流れ、二週間が経過した。


 結局、俺とルイスはヴァレンティンとリゼットのデートに同伴することになった。


「宜しく頼む。ここで挽回しなければ。最近は教室で後ろを振り向く度に、リゼットの顔が強張るんだ」


「はは、そりゃそうだよ。『僕はこの手に縛られたい』なんて、思い出したらまた笑いが……」


 ルイスは自分も同じことを言われて喜んでいるのを棚にあげて、思い出し笑いをしている。そんなルイスをよそに、俺はヴァレンティンに言った。


「俺とルイスが同伴するのも今回限りだ。ここで信頼回復して、次回からは一人で頑張れよ」


「感謝する」


 そして、俺たち三人はデイキャンプの準備をしながらリゼットを待っている。


 ——リゼットに叩かれた俺は考えていた。リゼットの発した言葉の意味について。


『私は、ただ、嫌われたくないだけ』


 あの後、結局迎えの馬車が来たのでそれぞれ帰路についた。それからは再び距離を取って話をしていない。


 しかし、その言葉がどうしても頭から離れない。悩んでいる俺に、ルイスはいつもの調子で言った。


『ただ単に、リゼットは僕たちのことそんなに嫌ってないんじゃないの?』


 いや、そんなはずはない。だって俺は読んだのだ。あの小説を、リゼットの心情を。それはもう俺とルイスに対して恐怖しか抱いていなかった。


 肉体関係を強いってからは更に加速していった。そして、ヴァレンティンと結婚した時の幸せそうな挿絵。あれは脳裏に焼き付いて離れない。


 そして、一つの仮説に辿り着いた。


 リゼットは『捨てられかけた小動物』と同じだ。


 俺とルイスがご主人様で、リゼットが小動物であるならば……。


 ペットとして飼われた小動物は捨てられたら最後、ご主人様なしでは生きられないと思い込んでいる。自分一人の力で立って狩りをすることも、他を頼って生きていく術も知らないから。


 俺とルイスが過剰なまでに執着したせいで恐怖を植え付けられたリゼットは、きっとその状況と同じなのだろう。


 つまり、リゼットを突き放す前に、この世界には俺とルイス以外にもリゼットの見方はいると教え込まなければならなかったのだ。


 なので、順番は変わってしまったが、本日のデートでヴァレンティンはリゼットを支えてくれる存在だとアピールすることに決めた。そして、これを最後にリゼットとは関わらないと——。


 そして、今に至る。


「リゼットこういうの好きだったっけ? 部屋でまったり系じゃなかった?」


「いや、これで良いんだ」


 頼りになる男をアピールするならば、街ブラデートやお家デートよりも断然野外デートだ。四人なので厳密にはデートではないが、Wデートと言うことで。


「俺とルイスは極力影に徹し、ヴァレンティンの素晴らしさをアピール。そして、最後に星空の下、愛を語り合う」


「セシル、ロマンティックだね」


 ルイスの言葉に若干照れるが……。


「リゼットの幸せの為だ」


◇◇◇◇


 リゼットも合流し、俺とルイスは薪を拾いに森の中へ。ヴァレンティンとリゼットは調理担当。


 さすがに王子様であるヴァレンティンは料理をしたことがなく、貴族であるリゼットも然り。なので、持ってきた食材をただ串に刺すという誰にでも出来ることをお願いした。


 串にひたすら刺していたら、会話もチラホラと自ずと出てくるというものだ。


 ルイスが薪を拾いながらニヤけて言った。


「あいつ、また変なこと言わないと良いけどね」


「今回はしっかり女子が喜ぶワードを教えてきたから大丈夫だと思うよ」


「え? そうなの? ずっと一緒にいると思ってたのに僕の知らない所で……セシルの浮気者」


 ルイスがプイッとそっぽを向いたので、すかさず俺は謝罪した。


「ごめん、ルイスがトイレに行ってる間だったかな」


「良いけど、今度は僕もいる時にしてよね」


 最近気が付いた。ルイスが嫉妬する時は、すぐに自分から謝る。そうすれば、怒りがすぐに収まるということに。


 言い訳なんてもってのほかで、それこそエロいやり方で俺を縛ろうとしてくる。ルイスも俺同様に童貞のはずなのに、どこであんな技を身につけたのか甚だ疑問だ。


「セシル、童貞卒業したいの? 今日星空の下でやる?」


「や、やらないから。平然とした顔でそんな恥ずかしいこと言わないでよ。俺たち双子の兄弟なのに」


「はは、セシル可愛いね。双子だから良いんじゃない。自分に犯されてるみたいでゾクゾクするよね」


 最近のルイスは本当にやりかねないので、星空の下には出ない方が良さそうだ。


「ルイス、そろそろ良いかな。戻ろっか」


「そうだね」


 ある程度薪も拾えたので俺とルイスは戻ることにした。

 

 ちなみにリゼットとはぎこちないながらも何とか話せている。ルイスもリゼットを縛らないように言葉を選びながら話しているのが分かる。


◇◇◇◇


 戻ってみると、ヴァレンティンとリゼットが何やら揉めているようだ。


「それだとすぐに外れてしまいます」


「いや、この方が後から食べやすい」


「焼いてる途中に外れたら意味がありません」


「そしたらそのまま焼けば良いではないか」


 ヴァレンティンとリゼットが俺とルイスに気付いたようで二人がかけよってきた。


 興奮気味にまずヴァレンティンが口を開いた。


「セシル聞いてくれ、リゼットがこの刺し方では駄目だとうるさいんだ」


 そして負けじとリゼットも口を開いた。


「それはルイスです。二人の見分けも付かない人がセシルとルイスとお友達だなんてちゃんちゃらおかしいですわ」


「こんなにそっくりなのに毎度毎度見分けがつくはずがなかろう。分かる方がおかしい」


「私は分かりますけどね。では、ヴァレンティン殿下は私が異常者だと仰りたいのですね。それなら私に構わずどうぞ他の女性をお誘い下さい」


「リゼット?」


「あ、セシル……私……」


 リゼットが喧嘩をしている姿を初めて見た。他者と関わらせなかったのもあるが、いつも俺とルイスには反論なんてしたことは無かった。


 ルイスも呆気にとられている。そんな中、ヴァレンティンが言った。


「リゼットはもっと物静かで淑女の中の淑女なのかと思っていたが違ったようだ」


「人を見た目で判断しないで下さいませ。こんな私なんてお嫌いになったでしょう」


 再びヴァレンティンとリゼットの喧嘩が始まるのかと思い止めに入ろうとすると、ヴァレンティンがリゼットの手を取って言った。


「僕に反論する女性は初めてだ。その可憐さには似つかわしい気の強さ、気に入った! 僕の妃になってくれ」


「え、嫌です」

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