作戦会議②
翌日の放課後、『ヴァレンティンとリゼットのラブラブ大作戦』第二回目の作戦会議が開かれた。
「ヴァレンティン、上手くいったんだろ? 何でそんなに暗いんだ?」
ヴァレンティンの周りにどんよりと暗い雰囲気が漂っている。
ルイスが茶化すようにヴァレンティンに言った。
「上手くいってると勘違いして、リゼットに告白して振られたんじゃないの?」
「まさか、初デートで告白は……え? したのか?」
ヴァレンティンが溜め息を吐いてゆっくりと口を開いた。
「いや、告白はしていない。告白はしていないんだが……」
「なんだよ、煮え切らないなぁ。わざわざお前の為に集まってやってるのに」
「すまん。演劇の途中にな、リゼットの手を握ったんだ」
「おお、お前にしてはやるじゃないか」
俺もルイス同様に感心していると、ふと疑問がよぎった。
「でも、終わる頃には距離が広がってたって」
「そうなんだ。セシルの真似をしてな、リゼットの手を握って言ったんだ『僕はこの手に縛られたい』と」
「ヴァレンティン……」
それは終わったかもしれない。始まる前に。
「ルイスも笑いすぎだよ」
ルイスが腹を抱えて笑っている。笑いすぎて涙まで出ている。
「だって、だってさ。こんなに馬鹿なやつだと思わなかったからさ。セシルよく我慢できるね。ははは」
ルイスは放っておいて、俺はヴァレンティンに向き直って言った。
「ヴァレンティン、俺が縛られたいと言ったのは相手がヤンデ……ルイスだからだ。あれを普通の女性に言えば、ただただ気持ち悪い。ドン引かれるのも当たり前だ」
「僕はどうすれば良いんだ。修復不可能なのか?」
「でも、終わってお茶してる時は良い感じに見えたけど。リゼットも笑ってたし」
ヴァレンティンが怪訝そうな顔で聞いてきた。
「どうして知ってるんだ?」
「いや……近くを通りかかってな、たまたま見えたんだ」
咄嗟に苦しい言い訳をしてみたが、ヴァレンティンは信じたようで続きを話した。
「リゼットは演劇が終わったら帰りたそうにしてたんだ。でも、セシルとルイスに教えてもらった店だと言ったら付いてきてくれてな、その後も、お前らの話題を出して場を持たせたんだ」
ルイスが笑い終えて、話に参戦してきた。
「僕とセシルの? おかしくない? リゼットは僕らのこと怖がってるはずでしょ?」
「怖がってるようには見えなかったが」
俺は暫し考えて言った。
「きっとあれだ。嫌なところが目立って彼氏と別れたのは良いけど、振り返ってみると悪いところだけじゃなかったな。みたいな状態なんだろう」
「何それ。だったら今のリゼットに会えば……」
「ダメだ。そう言う時は会って話をすると嫌いな部分が増長されて、『やっぱ良い思い出なんて無かった。別れて正解』みたいな気分になるから俺とルイスが傷つくだけだ。俺はこれ以上傷つきたくない!」
「セシルが何言ってるか良く分かんないや」
「双子でも理解出来ないことがあるんだな」
何故かルイスとヴァレンティンに哀れみの目で見られている気がするが話を戻そう——。
「で、その状況では到底次のデートの約束は取り付けられなかったんだろ? 振り出しに……」
「いや、約束は取り付けた」
「「は?」」
ルイスが呆れながら言った。
「『この手に縛られたい』とか言っておきながら? リゼット大丈夫かな」
「だが、二人きりではないんだ」
ヴァレンティンが言いにくそうに続きを話した。
「セシルとルイスも含めて四人で出かけようと言うことになったんだ」
「「は?」」
俺はヴァレンティンに慌てて言った。
「ちょっと、さっきの俺の話聞いてた? 今会ったら駄目なんだって。複数デートがいいなら他の奴を誘おう」
「お前、誰と仲良いの?」
ヴァレンティンが俺とルイスの顔を交互にみた。
「え、まさか俺達だけ?」
ヴァレンティンは爽やかな笑顔で頷いた。
「て、そんな爽やかさ見せつけられても困るから。いつなんだ? 約束の日は」
「二週間後の休日だ」
◇◇◇◇
作戦会議は一旦中止して帰宅することになった。
「まさか王子様なのに友達いないなんて思わなかったね」
「うん。俺とルイスも人のこと言えないけどね」
リゼットは無理矢理縛っていた友人だが、そのリゼットがいなくなった今、俺とルイスには友人がいない。
「僕とセシルは良いんだよ。え? まさか友達欲しくなっちゃった?」
「いや、いらないけど」
「良かった」
ルイスは心底ホッとしたような顔をした。そして、続けて言った。
「でもさ、リゼットは僕らのこと怖がってないんじゃないの? じゃなきゃ四人で遊びたいなんて言わないでしょ」
「そこなんだよね」
「せっかくリゼットをあいつに譲ったのに全然進展しないしさ」
ルイスがそう言うと、背後から声をかけられた。
「譲るってなに? ルイス」
「「リゼット」」
「ルイス、説明して。ヴァレンティン殿下と何を企んでるの?」
リゼットが複雑そうな表情でルイスを見つめながらそう言ったので、ルイスの代わりに俺が応えた。
「リゼット、何勘違いしちゃってるの? 君は今も昔も俺たちの玩具だ。仲良しこよしのごっこ遊びはもう飽きた。それだけ、行こうルイス」
リゼットに背を向け立ち去ろうとすれば、リゼットが俺のジャケットの裾を掴んで俯きながら言った。
「私は……私は物じゃない」
「リゼット……」
絆されたら駄目だ。心を鬼にしなければ。リゼットの幸せの為に。
「リゼットこそ何考えてるの? 俺たちと四人で出かけたいだなんて。せっかく自由にしてあげたのにさ。ああ、そうか俺とルイスがいないと虐められるもんね。俺たちを楯にして、利用して、周りを見下して、さぞ楽しかったんだろうね」
バチンッ!
リゼットに思い切り頬を叩かれた。
「あ、ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ……」
何故か叩いたリゼットの方が動揺している。そんなリゼットと俺の間にルイスが入って言った。
「はい、もうやめなよ。リゼットは僕とセシルをどうしたいわけ?」
「どうしたいとかじゃない……私は、私はただ、嫌われたくないだけ」
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