作戦会議①
昼休憩。
「セシル、なんでこいつがいるの?」
「ルイス、本人目の前にして、こいつはまずいんじゃ……」
俺とルイス、ヴァレンティンの三人で昼食をとっている。もちろん恋の相談の為に。
ヴァレンティンはルイスの失礼な言動を気にする様子もなく言った。
「良いんだ。学園では皆平等。何でも言い合える仲の方が恋のアドバイスもし易いと言うものだろう。なので、僕の何がいけないのか率直に教えて欲しい」
「だそうだよ、セシル。セシルは優しいからね、僕が教えてあげるよ」
ルイスがそう言うと、ヴァレンティンは背筋を伸ばしてルイスに向き直って言った。
「宜しく頼む」
「まずはそのひょろっとした体。リゼットは逞しい体が好きなんだよ。もっと鍛えないと」
「なるほど」
「それからその喋り方。王子だからって偉そうだよね。リゼットも聞いてて不愉快なんじゃないかな」
「気をつける」
「そして、その髪。サラッサラすぎるでしょ。何使ったらそんなサラッサラになるわけ? 自分より髪の綺麗なやつが隣にいると劣等感しかないと思うよ」
「そういうものなのか」
「他にも————」
ルイスはそれから十分に渡って、恋のアドバイスと称してヴァレンティンの悪口を本人に聞かせていた。
見ているこちらはヒヤヒヤものだが、ヴァレンティンも真面目な性格なようで、嫌な顔もせずに全てメモに取って感心して聞いている。そして撃沈していた。
「セシル、僕はダメダメだな。リゼットが相手にしてくれないわけだ」
「いや、ルイスの言うことは間に受けない方が……」
あまりにヴァレンティンが可哀想だったので、フォローしようとすれば、ヴァレンティンが再び俺の胸に顔を埋める形で項垂れた。
「先程も思ったが、ここは癒される」
「セシル?」
ルイスが呼んでいるが怖くて返事が出来ない。
「セシル、二度としないって約束したよね?」
「これは俺からじゃ……そもそもルイスが……」
「僕のせいにするんだ。セシルが無防備なのが悪いんでしょ」
「ごめん」
俺が落ち込んでいると、ヴァレンティンは回復したようで俺の胸から離れた。そして、そのまま今度はヴァレンティンが俺に胸を貸してくれた。
「え……?」
「先程ルイスに包容力が大事と聞いた。こういうことだろう?」
「いや……」
間違ってはいないが、今のこの状況では事態の悪化を招くだけ。
案の定、ルイスは青筋を立てながら俺をヴァレンティンから引き剥がし、俺を守るようにして言った。
「リゼットは譲るんだからさ、セシルまで連れて行かないでよ。セシルにこれ以上ちょっかいかけるなら王子様だからって容赦しないから」
ヴァレンティンは唖然とし、代わりに俺がルイスに言った。
「ルイス、ヴァレンティンに悪気はないよ。ルイスが教えたから実行したまでだよ」
「セシルはこいつの味方をするんだ。僕よりもこいつが大事なんだね」
「違う。俺はいつだってルイスが一番だ。俺に隙があるからいけないんだろ」
そう言って俺はルイスの手を取って繋ぎ、そのままの勢いに任せて言った。
「だったらずっとこうしてルイスが俺を守ってよ。それなら安心だろ?」
「セシル、手繋ぐの嫌って……」
「そりゃ双子の兄弟だからって手を繋ぐなんて恥ずかしいよ。だけど、こんなことがある度にルイスは不安になるんでしょ? それで俺とルイスの関係がおかしくなるくらいなら俺は自らルイスに縛られに行くよ」
「セシル……」
俺の思いは通じたようで、ルイスの顔には笑顔が戻った——。
「こうして愛が育まれていくのだな。やはり二人に頼んで正解だな、勉強になる」
忘れていた。ヴァレンティンが目の前にいることを。
急に恥ずかしくなってきた。ルイスと手を繋いだままなのも恥ずかしい。
「セシル、可愛いね。離さないから安心して」
「ルイスまで……」
今回は自分が招いたこと、反論の余地はない。双子の兄弟愛が深まったところで本題に入ろう。
「ヴァレンティンとリゼットがラブラブになる為に作戦を練ろうと思う」
俺が真面目に切り出すと、ヴァレンティンも真剣な面持ちで言った。
「名付けて『ヴァレンティンとリゼットのラブラブ大作戦』だな」
「お前、それ自分で言って恥ずかしくないの? そういうとこだよ」
「ルイス、話が進まないからヴァレンティンをディスるのは一旦やめようか」
「ディス……? まぁ良いや。とりあえずデートだよ。回数重ねてけば自然と仲良くなれるんじゃない?」
「そう簡単にいくだろうか……」
不安そうに言うヴァレンティンだが、小説では結婚までする運命。ルイスの言う通り自然と仲良くなれるはず。
「とりあえず誘わないと何も進まない。今週末にデートに誘おう」
「断られたらどうしよ……」
ヴァレンティンは恋愛となると臆病なようだ。そんなヴァレンティンに経験者ルイスは語る。
「権力を使うんだよ。王子には誰も逆らえないからね」
「そんなことして嫌われないか?」
「大丈夫じゃない? 不細工な王子に言われたら嫌だけど、お前格好良いんだしさ。なんなら権力で婚約までこぎつけたら?」
「それは人としてどうなんだ」
「まぁ、それは最終手段として、デートプランは俺とルイスで考えとくから、ヴァレンティンは頑張って誘え」
「分かった」
こうして、なんやかんやあった『ヴァレンティンとリゼットのラブラブ大作戦』第一回目の会議が終了した。




