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短歌「悪役の矜持」


もし仮に

ここが法廷

だとしても

堂々と言おう

私が悪だと


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公式企画「俳人・歌人になろう!2023」参加作品です。


▼小説家になろう 公式企画サイト

https://syosetu.com/event/haikutanka2023/

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【解説】


 悪役とは何時如何なる時も堂々としているべきで、たとえ法廷で裁かれる直前であったとしても、その態度を崩さぬべきである。


 転じて言えば、真の悪役というのは、彼が作る閉鎖的な世界に留まらず、仮に表舞台で法廷勝負を挑まれれば、堂々と法廷に現れるような社会性と、かつその社会を転覆させようとする野心を併せ持つような存在であるべきである。


 つまり、既存の社会を受容する姿勢があることと、その社会に対する劇的な挑戦意識を両立させていること。それが悪役の条件。


 ……この短歌にはそういう、私の悪役キャラに対する願望が込められている。

 

 というのも最近のアニメやゲームでは、私の願望するような悪役が出てこない。


 最近の悪役はいかんせん閉鎖的である。

 

 作中の彼はいつも黒々とした世界におり、彼の周りには彼が敷いた『なんちゃらランク』の上位陣だけがおり、その『なんちゃらランク』の上位陣はみな『神神・人間人間・差別差別・殺せ殺せ』という思想だけでつながっている。


 その思想に、社会性などありはしない。既存の社会を受容しようとする気がはなからない。


 故に、彼らの野望はひたすらテロリズム的にしか映らず、そういう作品はもはや『勧善懲悪』を越えて『テロと制裁』という構図にすら見える。


 仮にそのテロリズムの一団が表舞台にでてきたとしても、彼らの怒りの沸点は何分低く、なにか事あればすぐに無関係の一般人やミスを犯した自分の部下を殺してしまう。


 そんな悪役に一体誰が憧れるだろうか。ミスをしたら殺されてしまうような組織に、一体誰がついていこうと思うだろうか。

 

 ”悪”はすべての人間の心に潜んでいるもの。

 普段は平和な日常に覆い隠され、まさか自分にその邪悪が宿っているとは気が付かぬもの。

 

 だからこそ物語の悪役とは、堂々と大衆の前に現れ、彼らが隠していた感情を呼び起こすような存在でなくてはならない。


 その悪役の姿。

 既存の社会を受容し生きる。

 だが、誰よりも既存の社会に対して挑戦的である。

 人々を魅了し、我もまた彼に続かんと、爆発する悪の心がこれまでの善を破壊し、人々の常識を変えてゆく。


 そういう悪役に、もう一度でいいから出会ってみたい。


 かく言う私も、どちらかというと悪役側の人間でね。

 いつ魔王様から悪の幹部に抜擢されてもいいように、演説の準備だけはしている。


 では皆さん、お聞きください。


 もし仮に、ここが法廷だったとしても。


 もし仮に、この文章を読む貴方が裁判官のように冷徹だったとしても。


 もし仮に、私の文章が批判の嵐にさらされても。


 いいだろう。私は全ての仮定を受け入れた上、この正義の法廷に向けて進言する。


 私こそ論駁の中に生きる悪魔、令和のソクラテスこと文士Mであると。


 ……。

 ……。

 ……えー、では、これにて本日の文士Mの講演はおしまいとなります。

 ありがとうございました。ありがとうございました。皆様、お忘れ物のないようにご帰宅ください。

 あそれと、もしよろしければですね、画面下の評価ボタンやブックマークボタンをぽちっと押していただけますと、非常に、非常に、わたくしは嬉しくってですね。

 あ。今、一人の方がブックマークボタンを押してくれました。

 凄い、嬉しい。

 わーいわーい。他の方も是非ブックマークしてください。ありがとうございます。ありがとうございまーす。


 ……とほほ。とほほ。

 やれ私も悪役だなんだと大口をたたいてみたものの、こりゃあ随分と小さな悪党である。こんなインターネットの辺境でいいね稼ぎをしているだけでは、誰も私を成敗してはくれまい。


 悪役の条件とは、何よりもまず皆に見つかるような目立つ悪事を働くことであったか。

 だとすれば私は、到底悪役にはなれそうにない。


【宣伝1】


 実は本短歌は拙作『アイダシャフト』のワンシーンをモチーフとしている。そのシーンはこちら。


https://ncode.syosetu.com/n0997ii/109/


 こちらはハラスメント容疑がかけられている風紀委員長の北林が、その後ろめたさと決別し、大勢の生徒の前で演説を始めようというシーンである。

 中々読んでもらえない作品なので、この一話だけでも読んでもらえると非常に嬉しいです。


【宣伝2】


 実は本短歌はネットブログ「K林なんでもゼミナール」様のイラスト担当K林教授様によって四コマ漫画化されております。こちらです。

挿絵(By みてみん)


 ブログの方ではまた違った解説をしておりますので、興味のある方は是非ご一読下さい。下記URLよりご覧いただけます。↓

https://kbayashizemi.hatenablog.com/entry/2023/11/18/173642

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