パーティーリターンズ
さて……。
今日のために新しいドレスも新調したし、気合いもバッチリだ!
そう、今日も子供達だけのパーティーがあるのだ。
今度こそ、お友達を作って、きゃっきゃうふふ、はもちろんのこと、お兄様の婚約者を探さねばならない。
「セレス?」
馬車に揺られながらお兄様のことをじーっと見つめていると、お兄様は首を傾げた。
「いえ、お兄様は相変わらず、かっこいいなと」
黒髪に青の瞳がよく映えるお兄様。
どこからどう見ても世界一のイケメンである。(私調べ)
「……っ、セレスはまたすぐそういう」
ほんのり頬を赤くしたお兄様も麗しい。
「今日こそみんなにお兄様の良さをアピールして参りますからね!!!」
そしてお兄様にスーパーミラクルキュートで可憐で心優しい婚約者を見つけるのだ!!!!
心の中でそう誓いつつ、ふっと脳裏に違う青が頭をよぎった。
「!」
ぶんぶんと、大きく頭を振って、その色を追い出す。
「……セレス?」
挙動不審な私を心配そうにみたお兄様を安心させるように、微笑んだ。
「いえ、なんでもありません」
私は、ヒーローなんてどうでもいい。
私が大事で優先すべきはお兄様だけなのだ。優しいあなたが闇堕ちせず、健やかに生きていてくれる世界を作ることが私の使命なのだから。
……と、ちょうどそこで馬車が止まった。
「さぁ、お兄様、行きましょう!」
お兄様に手を差し出す。
「今度こそ、お友達ができるといいね」
微笑んで手を握ったお兄様に、大きく頷き返しながら、私は一歩を踏み出した。
◇◇◇
「……さて、今日はどの辺りから話しかけようかな」
私がきょろきょろと会場で辺りを見回していると、活発そうな男の子に話しかけられた。
「おい、そこの……」
女の子相手におい、とは随分乱暴な男の子だな、と思いながら向き合おうとした瞬間――。
「な、ナンデモアリマセン!」
すすっと男の子が去っていってしまった。
ええー? どうしたの?
私の顔そんなに怖かったかなぁ?
落ち込んでいると……。
「またお会いしましたね」
涼やかな、声だった。
幼さが残る、でも聡明そうな、王子様チックな声だな……。そう思いながら、振り向く。
「あなたは……」
って、紛れもなく王子様だった!!!!!!!
カイト殿下は、私と目を合わせるとにこりと微笑んだ。
「あなたに、またお会いしたいと思っていたんです」
いかにも女たらしがいいそうなセリフだ。
でも、その程度でときめく私ではない!
なぜなら、私には大事な使命があるのだ。
「そうですか。ありがとうございます」
失礼にならないように心がけながら、若干後退する。
腹痛になるか? それとも、急用? それとも、知り合いを見つける?
その三ルートをぐるぐる頭の中で、悩んでいると、ぎらぎらした視線が私に突き刺さった。
「!!!」
っ、そうだ。
この人はヒーローである前に王子なのだ。
つまり、何が言いたいかというと、超優良物件であり、女の子の憧れである。
そんな王子サマにまた話しかけられた私は、このままだと女の子たちの敵になってしまう。
なにがそんなにカイト殿下の気を引いたのかさっぱりわからないけれど――物語の強制力、というやつだろうか。
なんにせよ、このままでいると非常にまずい。
「わっ、私……」
礼をして立ち去ろうとしたその時だった。
急いだ私は足をもつれさせ、盛大にころ――。
「大丈夫ですか?」
転ばなかった! 優雅にカイト殿下が支えてくれたからだ。
「ふふ、お転婆なんですね」
そういって、優しく微笑み、青の瞳で私を見つめる。
……どきっ。
どきっ!?!?!?!?
なにときめいてるんだ!
ときめいている場合じゃない。女の子たちの視線がヤバすぎる。
ああ、視線で人が殺せるのなら、私はとっくに消し炭になっている。
「あ、ありがとうございます。では……!」
今度こそ、カイト殿下のそばから離れようとした時、手を掴まれた。
「待ってください」
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