表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

……お兄様とくっついて眠る夜。

「……おにーさま、もう寝ました?」

 指を絡めたまま、そっと小声で言ったけれど、反応がない。


 もう寝てしまったみたいだ。


 雨は強く降っているものの、雷の音はしなかった。

 ほっと息を吐きつつ、お兄様が起きない程度の声で囁く。

「セレスは、お兄様が一番大事です」


 優しくてちょっと……かなり、シスコン気味な兄様。

 あなたが、死なずにいてくれるなら、私はなんだってできるもの。

「だから……王子様は、お断りなんです」

 それでも、まだ今日見たお兄様とは違う青の瞳が頭から離れないのは、物語補正なのかもしれない。

「おにいさま、私は……」

 ずっと――。


 ◇◇◇


「カイト兄上」

「どうしたの、ユーグ」

 年齢よりもかなり大人びている弟に名前を呼ばれ、振り返る。

「兄上は、ご機嫌ですね?」

「ん、あぁ……そう、かも」

 家族の前だけの砕けた言葉で、頷いた。

「どうされたんですか?」

「今日は、パーティーがあったでしょう」

 また、あの子のことを思い出したながら、うっとりとため息をつく。


「そこで、気になる方でも?」

「うん。とっても気になる女の子がいたんだ」


 ……といっても、たった、1分しか話してない女の子だけれど。

「兄上が、珍しいですね」

「そうだね。でも、なぜだか、気になるんだ」

 私が話しかけた途端、走り去っていった可憐な赤髪の女の子。名前は、セレスティア•シュトム――シュトム公爵家の令嬢だ。

 といっても、名乗ってすらくれなかったけれど。


「今度こそもっと、仲良くなれるといいな」


 また、今度、子供たちだけのパーティーがある。そこで、話しかけてみよう。そう思いながら、窓に目をやる。

 さっきまで振り続けていた雨は、すっかり上がっていた。

「おやすみ、私はもう、寝るよ。マルクス」

 かわいい弟の頭を撫でてから、自室に戻る。

 ――今夜は、いい夢が見られそうだった。

 

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ