表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

大事な話

「……んん」

 いつの間にか、眠ってしまっていたみたいだった。

「セレス……セレスティア」

「おにーさま?」

 柔らかく、名前を呼ばれて微睡みから目を覚ます。

「うん、そうだよ。僕のお姫様」

「!?」


 お姫様!?

 思わず重たかった瞼をこじ開けると、ご機嫌そうなお兄様の青の瞳と目が合った。

「ふふ、驚いてる」

 って、いやいやいやいや。

 驚くのも当然だよ、お兄様。お兄様ったら、そういうことを言うタイプじゃなかった……よね? うーん、なぞだ。今日はキザなことを言いたい気分だっただけかも。

「さぁ、かわいいお姫様も目覚めたことだし、馬車から降りようか」

 そういわれて、あたりを見回すと、もう公爵邸の前だった。

「……あ!」


 馬車から降りて、唐突に思い出した。

「どうしたの、セレス?」

首を傾げているお兄様の頭を背伸びをして撫でる。

「キルシュお兄様、今日もいい子だったね。大好き!」

 あ、間違えた。また好きとか気楽に言っちゃったー!!

「お兄様、あのその、これは……」


 恥ずかしくてすぐに否定をしようとした私は、真っ赤な顔をした後、すぐに俯いたお兄様を前に、固まった。

 やったか? これはついにやっちゃったのか?

 頭を撫でる行為自体は毎日してるし、怒ってないと思うけど……。

兄妹とは言え軽率に好きとかいうことにお怒りモードかな。

いやいやいや、でも、さっきは怒られなかったし。

でも、今日二回目だから駄目だった? 

ほら仏の顔も三度とかいうし。いや、それならセーフなのでは?


 ぐるぐると頭の中で様々な考えが――。

「! おにーさま?」

 考えは、お兄様の手が私の頭に触れたことによって霧散した。

 手はゆっくりと左右に動かされる。

 ……もしかして、もしかしなくても、お兄様のターンですか!?

 お兄様に甘えられるチャンスを逃すはずなく、お兄様の手に頭をもっとと押し付ける。目を閉じながら、うっとりと堪能していると、笑った気配がした。


「キルシュお兄様?」

 ぱちり、と目を開く。お兄様の顔は、もう赤くなかった。その代わりに、微笑んでいる。

「うん、君のお兄様だよ」

 いや、まぁ、そうなんだけど。

 その笑顔で言われると、なんというか、破壊力がすごいですね!!!!!!

 ただの事実確認なのに、なんだか特別なことを言われているような気分になる。


「……お兄様は、ずるい」

 なんだって、そんなに顔がいいのか。

 私だって、悪くないはずなのに(だってヒロインだし)、お兄様の美しさの前ではかすんでしまう。

「ずるくないよ。……いつもずるいのはセレスじゃない」

 ええー? 私がずるいことなんてあったかなぁ。

 あ、イチゴのケーキのイチゴをお兄様からかっさらったのはずるかったかも。

そんなことを考えながら、今度こそ公爵邸の中に入る。


「おかえり、キルシュ、セレスティア」

 公爵邸の中に入ると、もう仕事が終わったらしいお父様が出迎えてくれた。

「セレスは、初めてのパーティーだったが、どうだった?」

 ……あ。

 そういえば、そうだった。

 お兄様のことばっかり考えていて、すっかり忘れていたけれど。私は参加したものの、お友達ゼロという惨敗に終わったのだった。


「ええと、それは……その」

「セレスはよく頑張っていましたよ」

 言い淀んだ私をお兄様がかばってくれた。頑張ったのは、嘘じゃないもんね。……成果がゼロなだけで。


 それにしてもお兄様優しすぎる。こんなに優しいお兄様のために、次回こそはなんとしてでも、お兄様の婚約者を見つけないと。


「……そうか。キルシュが言うなら、間違いないな」

 お父様は満足そうにうなずき、書斎に戻ろうとする。

「お父様、お話があります」

 ……? お兄様がお父様を呼び止めるなんて、珍しいな。

「どうした?」

 お父様も不思議そうな顔だ。


「お父様の書斎で、いいでしょうか」

 つまり、ここではできない話らしい。

 えー、なんだろ、気になる。

「……わかったよ」

 お父様はお兄様の真剣な表情を見て、頷いた。

 さて、それではお父様の書斎に……。

「セレスは、待っててね」

「……ハイ」

 ですよねー!!!!

 めちゃくちゃ気になるけど仕方ない。

いじけながら、お兄様とお父様が書斎に行くのを見送ろうとすると、ぽんと手の上に花が落ちてきた。

「わぁ!」

 お兄様の魔法、久しぶりに見た。

その花を眺めながら待っていろ、ということだろう。

わかりました。待ちますとも。


 ……けれど、10分経っても、30分経ってもお兄様もお父様も戻ってこなかった。

 


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ