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7.さいかいおともだち

ちょっと長くなりそうなので分割。

まだできてないってわけじゃないんだからねっ!


 着いた。

 ここだ。

 ようやく辿り着いた一件の家。ここに居る。絶対居る。


「こんにちはー」


 玄関を明け挨拶する。

 すると廊下向こうから女性が顔を出した。


「どちら様…、ですか?」

「お久しぶりです。おばさん」






 ***






―数日前


 あれは門がまた現れた日。私ははねこを引き止めた。


『直接行くじゃと?』

「そう」

『じゃが主はあやつの居場所を知らぬのだろう?』

「調べるのよ」

『ここで門が出るまで待つ方が早い』

「それじゃダメよ。私ミナちゃんに会いたいの」

『それこそここから行けばよいじゃろう?』

「あなたはどうかは知らないよ? でも、私たちには身体があって形があって姿がある。確かに、ここでなら簡単にミナちゃんに会えるよ? でも、生きているのはこっちじゃない。向こう側。現実。外。私は元気なミナちゃんの身体、心全部見たいの。分かる? はねこ、あなたはこちらに居すぎたのよ」

『ふん…。もう少しまとめてから話せぬのか?』

「私はちゃんとミナちゃんに触れて話したい。これじゃダメ?」

『………』


 はねこは真っ直ぐに私の目を見つめた。いや、睨んだと言った方が正しいだろう。

 負けじと睨み返す。目を逸らせばその瞬間はねこはこの門の向こうへ行ってしまうに違いない。


『ふむ、いいじゃろう。もう少し待とう』

「ありがとう」

『じゃが、儂は待てなくなったら即この門をくぐる』

「わかったよ」

『ならば早よう行動せい。儂は気まぐれじゃからの』





 ***






 居間で頂いたそのお茶は少し懐かしい味がした。ミナちゃんの家に遊びに行ったときお菓子とこのお茶が出てきたんだ。


「ごめんなさいね。ミナコ今買い物に出てて」

「いえ、お気になさらず」

「それにしてもチサちゃん、大きくなったわねぇ」

「えっ? そ、そうですか?」

「ええ、私もチサちゃんは幼稚園の頃見た以来だもの。やっぱりみんな大人になっていくのね」


 体格のことを言ってるのとは違うみたい。そうよね。からだはあんまり大きくはないけれど、私もちゃんと大人になってるんだよね。


「それにしても、ここを探すの大変だったんじゃない?」

「いえ、そんなには」


 幼稚園の時担当だったユウコ先生が教えてくれたんだ。ユウコ先生は今もあの幼稚園に勤めていて、ちょっと老けちゃったけど、やっぱり優しい先生だった。

 ユウコ先生は年賀状を保管していて、それで今のミナちゃんの住所を知ることができた。私のところにも年賀状が来てたはずなんだけど。お母さんの話ではその年賀状がお年玉抽選っていうのかな。年賀状の下の番号で景品が当たるやつ。あれが当たったらしく、それで交換してしまったから残ってなかったんだ。


「でも、また会えるとは思わなかったわ。またミナコと仲良くしてやってね」

「はい」

「ただいまー」


 玄関から声が聞こえた。

 どこか懐かしさを感じる声だった。


「母さん、誰か来てるの?」

「お帰りミナコ。チサちゃんよ。憶えてるかしら?」


 そう言っておばさんは私を紹介してくれた。

 私はぺこりと頭を下げた。友達だったといってももう十年以上昔になってしまうのだ。知っているけど知らない、少し奇妙な気分でなんだか落ち着かない。


「チサちゃん…?」


 少し難しい顔をしてミナちゃんは首を傾げた。もしかして、私のこと忘れてしまったんだろうか。ちょっと悲しくなる。


「あっ!」


 ミナちゃんはぽんと手を叩く。


「チーちゃん! チーちゃんだよね!?」

「う、うん」

「いっつもチーちゃんって言ってたから一瞬わかんなかったよ」


 よかった。ちゃんと憶えててくれた。


「私の部屋においでよ。積もる話もあるでしょ」

「そうね。私はお邪魔かしら」

「そーそー、お母さん邪魔だよ。夕御飯作っといてね。チーちゃんの分も」

「はいはい」


 おばさんは台所へ向かった。

 おばさんには悪いけど、やっぱりミナちゃんと少しでも長く話していたいし、今日だけはごめんなさい。

 私はミナちゃんの部屋に案内された。

 部屋の前までやって来て、ミナちゃんは「ちょっと待ってて」と言って先に部屋に入っていった。耳をすますと中からゴトゴト音が聞こえる。たぶん部屋を片付けているんだろう。私も突然友達が来たときは大慌てで部屋を片付けるからよくわかる。


「どうぞ」

「おじゃまします」


 即席の割りには綺麗に片付けられた部屋だった。


「さっき片付けたばっかりだから細かいところは見逃してね」

「え? うん」


 座ってと言われたので部屋の真ん中にあった小さなテーブルの隣に座った。

 ふとベッドの下に目が行く。なるほど、服とか本とかそこに押し込んだのね。


「見逃してよ…」


 私がどこを見てるのか分かったのだろう。ミナちゃんはふくれたような顔で私を見ていた。


「ご、ごめん」


 さて、何話そうか。実は何にも考えてなかったのよ。ただ、ミナちゃんの家の場所を調べて分かったから直行しただけなんだけど。


「チーちゃんて、今何してるの? やっぱり大学生?」

「え? う、うん。そうだよ。○○大学」

「へぇ、結構有名なところじゃん」

「そ、そうかな。ミナちゃんは何してるの?」

「私はお勤め。高校を出てからね。近くの工場で働いてるの」

「もう働いてるんだ。私なんかだらだら過ごしてばっかだよ。偉いなぁ」

「うちはお父さんが早くに死んじゃったし、おばあちゃんも入院してて、少しでも早く家の力になりたかったの」

「あ…、うん」


 しまった。考えなしに喋っちゃった。でもさっきの流れは回避不可能なような。


「って、なんでチーちゃんが申し訳なさそうな顔してるの?」

「………」

「うちはうち。だから気にしないで」

「…うん」

「話題変えよう。えっと…、私達の年齢だとそろそろ結婚する子も出てくるよね。チーちゃん彼氏とか居るの?」

「えっ? い、居ないよそんなの。何人か付き合ったことはあるけど…」

「ほんと!?」

「で、でも、私こんな成りだから、彼と街中歩いたら、あらぬ疑いをかけられて、結局3日ともなたくて…」

「あ、あぁ、そう。男の人にとっては綱渡りかなぁ。犯罪スレスレ的な意味で」


 実際は全然問題無いんだけど、改めて言われると落ち込む。


「そ、そうだよねぇ…」

「あ、で、もね? もしチーちゃんの貰い手がなかったら私が貰ってあげ…、あれ? でも女同士は結婚できな…、あ、あれ??」


 支離滅裂というか、本末転倒というか、全然フォローになってないよ。


「ま、まぁ、気持ちだけもらっとくよ」


 と、返すのが精一杯だった。でも本当に気持ちは嬉しかった。…あ、別にそっちの気がある訳じゃないんだからね。昔のまま、やさしいミナちゃんで安心したんだ。


「え? チーちゃん何か言った?」


 ミナちゃんはキョロキョロ周囲を見回していた。


「ううん。何も言ってないけど?」

「ほらまた…」

「…何も聞こえないけど」

「でも誰かが私を呼んでる」


 あいつか。

 空気が読めないのかしら。いや、…読んだから今なのかもしれない。少し微妙な空気だったし。でもあっちからこっちの状況なんて分からないはず。せっかちな猫。


「ミナちゃん?」

「………」


 はねこはいったい何がしたいのだろう。個人的な約束とか言っていたけれど、どんな約束なんだろう。まぁ、でもこれでうるさい猫は私の場所から出ていった。厄介払いができてよかった。ただ、その厄介者が十中八九ミナちゃんの所に居るのが気がかりなのだけれども。

 ミナちゃんはどこか虚ろな顔で私の後ろの壁を見ていた。

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