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神の贄は拳を握る  作者: 桃ノ木柿木山椒の木
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魂の双子

ほとんど時代考証なしで書いています。

主人公は元ヤン女子です。

かわいい正統派ヒロインと相反しています。

だって喧嘩強い女子って正義でしょう?

東櫻国、繻金城の奥。後宮内には神を祀る小さな廟が建つ。

簡素な作りながらあらゆる護法に守られたその廟は、高貴な者のみが立ち入ることができる特別な場所だった。

その廟内に設えられた硬い石造りの寝台の上。

少女が1人、横たわっている。

濃い朱の深衣は、少女の地位を示す。朱の、とりわけ濃い色をまとうことが許されているのは皇帝とその伴侶たる皇后のみ。

そしてその横にたたずむ青年も、同じ濃い朱の袍をまとっていた。

少女の顔を覗き込み、青年は沈痛な面持ちでその頬を撫でる。

ピクリとも動かないその顔は、まるで死者のように冷え切って固まっていた。

かつての少女は快活だった。

丸い瞳は輝き、世界の全てを愛していた。

小さな口はよく動き、絶えず希望をもたらした。

華奢な身体でありながら、大の男が怯むようなを乗り越え続けた。

それなのに。

今の少女はほとんど死者と同じだった。

青年は頬を撫でる腕を下ろした。

どれだけ撫でようが、彼女が瞳を開けることはない。

分かってはいたが、そうせざるを得ない。

ひとひらの希望を込めて。

「……魂の双子をご存じですか」

部屋の隅からにじみ出るように老婆が現れた。

金糸銀糸に彩られた衣と、重ねられた玉の首飾り。抜けた歯と髪、白く濁った瞳との差異が、不気味に際立つ。しかし青年はその登場に驚きもせず、視線だけで老婆に続きを促した。

「人の身には、三魂七魄が宿っております。魂だけでは命ならず、魄のみでもまた同じく。魂魄そろいて人となる。ですが神女殿はいま、魂を失った状態にあります。このままではいずれ魄も天へと還りましょう」

ならばどうするか。老婆は白く濁った瞳で少女を見据える。

「神女殿に見合う魂を、現世に生まれ落ちる前に分かたれたその魂を、神女殿に捧げればよいのです」




たとえそれが、悪鬼のごとく所業であろうとも。


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