十一
ザザッと地を滑り、落ちていた刀を手に取り。ひゅっと息を吐き、再び駆け出す。
「殺セッ、殺セェエエエエッッ!!」
鬼兵が叫ぶ。が、その声に怯えが混じり始めていた。
そんな僅かな怯えは、知が無く本能で動く鬼達へと瞬く間に伝染した。腕が、足が鈍り、身体が萎縮し。
――それで、戦いは決した。
ザシュ――
鬼二体の首から血が舞い上がる。気付けば、鬼兵が二体、鬼が五体。
そして、僅かな身体の重みにキキは自身を見つめた。知らず、白の装束は血に染まり。
「…………」
血の滴――鬼の命の滴を落としながら、キキは刀をだらりと下げ、再び鬼へと視線を向けた。
「……鬼ジャ……鬼神ノ子ジャ……」
鬼兵が呟く――が、その間に、また一体鬼の首が斬られ。
先程よりも明らかに重くなった幼子の動き、にも関わらず、一太刀で首を斬る術は益々冴え。
「グァアアアアアアアアアアアァアアアッッッ!!!」
発狂したように、槍を持った鬼兵がキキへと襲いかかった。
突かれる槍をゆらりと身体を回転させ躱し、たんっと懐に入り、ふわりと飛び上がり、そして。
ザク――――
キキは刀を首に突き刺した。
とんっと肩を蹴り、鬼兵から飛び降りる。
「…………」
一瞬だけ残った鬼達を見つめ、初めに地に刺して置いた刀を取るためにゆっくりと歩き出した。
隙だらけの幼子の背中。だけれど、切り裂かれた装束から血を落としながら歩いて行く姿は、修羅か羅刹にも見え。
「――退ケッ! 退ケッッ!!」
鬼兵は叫んでいた。何かが切れたように残った鬼達も退き、駆け出す。
地が響く音に、キキは振り返った。
退いていく鬼達……けれど、キキは常と変わりなく。
刺さった刀の一本を手にした。
残りは三本――何とかなろう、そう思って。




