十
後ろには鬼兵四体、前には無数の鬼の壁。
「――――」
キキはひゅっと息を吸い、左に刀を持ち替え、右は腰の小太刀に手を添えた。
息を止め、思考を止める。心も無にし、ただ、自分と周囲を一体にする。
全ては刹那の刻。斬るということ、ただそれだけを念じ――そして、キキは小太刀を抜いた。
キィンッ!
突かれる槍を逆手に持った小太刀で受け流す。擦れる刃に火花散り。
一歩踏み込み、槍を持つ鬼の右腕に刀を突き刺した。鬼兵は呻き柄から手を離し、キキはそのまま小太刀を斬り上げ槍を押し上げる。
キキの後ろに迫っていた鬼は、首に向けられた槍に足を止め、その一瞬を逃さず左右から迫る鬼を躱し、足を止めた鬼の首を小太刀で切り払った。
囲もうとしていた鬼の動きに一拍のずれができる。それは瞬きの間でしかないが、キキにとっては十分な時。
一、二、と鬼の首を斬り、迫る太刀を身体を回転させ躱し、足を滑らせ、腕を蹴り、肩を蹴り――鬼の後ろに回る時にはすでに左手の刀で首を貫き。
「ガァアアアアアアアァアアッッ!!」
槍が袖を突き破る。迫る太刀、振り下ろされる爪。その全てを装束を破られながらも紙一重で躱し、流し、捌き。
小太刀で斬れるのも後一体か二体。このまま鬼兵を相手にするには難しい。だからこそ、全ての鬼の動きを見極め、そしてまた、自らの動きで鬼の動きを操り誘い。
突かれる鬼兵の槍――その右腕。先程つけた傷に小太刀を刺し、肉を切り裂く。絶叫し、離した槍を左手で握り上へと突き上げた。
――ザクッ!
「グァアアアアアァアッッ!!」
太刀を振り下ろした腕を槍が貫く。槍を放し落ちる太刀を握り――その時にはすでに小太刀は鞘に納め――キキは槍を手放した鬼の顎下へと太刀を突き刺した。
後ろに居る鬼は腕を貫いた槍を抜こうとし、けれど、それは抜けることはなく。
全ては刹那――キキは鬼兵の肩に乗り首に小太刀を突き刺すと、たんっと高く飛び退いた。




