八
ひゅっと息を吸い、そしてまた、駆け出す。鬼八体は斬った。けれど、それは普通の鬼。
残りの鬼の中には鬼兵が混じっていることも分かっていた。鬼兵を一太刀で斬るのはまだ難しい。しかも、鬼の集まっている中で戦うのは危険過ぎた。
(ならば)
鬼兵以外の鬼を全て倒し、戦う場を作る。
一体、二体と首を斬り――けれど、
「赤子ォォォォオオオッッ!!」
振り下ろされる太刀をキキは右に流し、後ろに迫る鬼の爪を身体を回転させ掻い潜り一気に退いた。
(――鬼兵が前に出たか)
驚くことではない。知があるのなら囲んで追い詰めるくらいしてくるだろう。
それでも、キキに焦りはなかった。鬼はこちらの動きには付いて来れない。時間はかかっても鬼を一体一体倒して行けば良い。
ただ一つだけ……自分が退きながら戦い、鬼が押してくれば当然咲久夜達も動かざるを得なくなる。それは避けたい。
ふっと息を鋭く吐いた。二十数体の鬼、それを自分一人で押し返す。
刀の血を腕で挟み拭い――そして、
「――ぁあああっ!!」
咆吼し、鬼を見つめた。黒曜の澄んだ瞳、その奥に何を宿し、そして、見る者に何を伝えたか。
幼き声の咆吼、一人立つ小さき童女。それで鬼が畏怖し止まるはずなどない……そんなことは起こるわけがないと誰もが思った。
けれど、
「グゥゥゥゥ…………」
低く唸り、鬼の足が止まった。
ざっとキキが一歩踏み出すごとに鬼も一歩退き――
「退ケッ! 我ラガ相手スルッ!!」
四体の鬼、鬼兵が前へと出る。だが、
――ィィン
鬼兵の横に居た鬼の首から血が噴き出した。
「ナッ!?」
驚く鬼兵の横で三体の鬼が声なく倒れ、ざざっと足を滑らせ幼子は新たな刀を手に取る。
「――グァアアアァアアアアアッッ!!!」
怒りに絶叫し、鬼兵四体が一斉にキキに襲いかかった。
「ォォォォオオオオオオオオォオオッッ!!」
鬼兵の声に押されたのか、他の鬼達も動き出す。
「…………」
キキはにこと微笑んだ。これで鬼は自分しか狙わないだろう。後ろに居る咲久夜達へと向かうことはないはず。後は自分が前へと出れば良い。




