七
――闇夜に差し掛かる夕暮れ時、逢魔が時。
とはいえ、今逢うのは魔ではないが。
ザクッ――
抜き身の十本の刀、その最後の一本を地に刺し、キキは並んだ刀の中央に立ち夕日に一瞬だけ目を細め、そして、黒い影の群れへと視線を向けた。
「――――ゥゥォォォオ――――」
低い唸り声が響き、そして、鬼がこちらへと向かって来る。
「――――」
キキは無言で鬼を見つめ――淡く微笑みを宿し。
タッ――!
地を蹴り、一気に鬼の群れへと飛び込んだ。
後ろに控えるは咲久夜と水光。そして、武家の隊長五名と、兵士が十名。
照灯達、陰陽師五人は傷ついた兵士の治療をしていた。
照灯を連れて来たことは幸運だったと我ながら思う。薬師でもある照灯ならば、死んでいなければ治せるだろう。
咲久夜は横を見た。未だ水光は納得していないように、不満と不安の顔でキキの背を見つめていた。武家の男達は尚酷い。キキの戦いを見てもまだ不信があり、幼子一人で三十もの鬼に向かわせるなど、無慈悲で惨い陰陽師と思っている。
咲久夜自身、これが正しいことなのか未だ迷っていた――けれど、今は。
――リン、と小さく鈴が鳴る。
キキを信じ、そして、いつでも助けに行けるように。瞳を朱に変え、手の内には一粒の焔を宿し強く握った。
一体、二体、三体――鬼はキキの動きに付いていけず、声を出せないまま首を斬られ。
四体目の鬼の顎下に刀を差し、そして、キキは一気に後ろへと退き、地を滑りながら刺さっている刀の一本を抜く。
ザッ――!
そうしてまた、キキは一気に駆け出した。
「グォオオオァアアアアアアァアッッッ!!!」
ようやくにして敵が来たことを悟ったのか、鬼の雄叫びが森に響く――が、すでに遅く。
キキは鬼の懐に踏み込み腕を蹴り、飛び上がり様に首を斬り上げ、そして、肩を蹴り尚高く飛び上がった。
飛び降り際にまた一体首を斬り、足で地を滑り身体を回転させ近くに居た鬼の後ろに回り、その背を蹴り駆け登る。
幼子を囲んで振り下ろそうとしていた鬼の腕は空を切り、宙に居たキキは空いた首に向かい刀を振り下ろした。
――――ィィン
風を斬る音だけが響き、首を斬られた鬼は声も出せないまま血を噴き出し倒れ――けれど、紅き滴が地に落ちるより速く。
ザザッ――!
キキは刀の刺さった場へと足を滑らせて戻り、一本手に取る。先程まで握っていた刀は退き際に鬼の首へと突き刺していた。




