六
「……お前は」
咲久夜の言う通りだ。この者が本当に……未だ信じられないが、二十体以上の鬼を一人で斬ったというのであれば何も言う必要は無い。戦いを任せるのが一番良い。
……けれど、そう、だけれど。
「……水光」
水光の迷いが分かるように――実際、自身も未だ迷っているが、それでも咲久夜は苦笑し伝えた。
「この童女は、戦いの事になると途端に強情になる。他は素直な可愛い子だというのに」
「巫山戯を聞いている暇はない」
「巫山戯てはいない。止めても、この者は一人で戦いに向かうということだ」
「……お前は信じているのか、諦めているのか、どちらなんだ」
「どちらもだよ、水光……言っただろう、キキの戦いを見ると不思議と何も言えなくなる。お前もすぐにわかる」
咲久夜の言葉に水光は黙り……悪い癖になりつつあると分かっていても大きく息を付き、キキを見た。
「それで、キキ。お前はどう戦うというのだ」
「鬼の数を教えてください」
「多岐都」
「ぇ……ぁ、はい。おそらく三十体ほどだと……」
「でしたら、刀を十本ほどお貸しください」
「え、あの、貴女は何を言って……」
「皆さんの手当をお願いします――後は、わたしが対します」
戸惑う多岐都に頭を下げ、そして、キキは咲久夜へと視線を向けた。
「咲久夜様」
「……まったく、お前は」
強情で我が儘を通す癖に、仕える主である自分に最後は確認してくる。そんなキキの幼く純粋な瞳に、咲久夜は笑うしかなかった。
「お前を一人で戦わせたりはせぬ……といっても、お前は一人で行くのだろうな」
「……申し訳ありません」
「本当にお前は悪い子だ」
幼き子の悲しい顔は苦手だ。しかも、キキの心には嘘偽りがない。だからこそ、厄介だった。
「刀を用意してやれ、多岐都」
「ですが、咲久夜様……」
「咲久夜……本気か」
今尚、戸惑う多岐都の代わりに水光はもう一度咲久夜へと問いかけた。
「もちろん本気だ。戯れで幼子を一人で鬼に向かわせるような事をすると思っていたのか」
「……お前は、本当にその子供が一人で戦えると思っているのだな」
「ああ……そして、残念だが」
喜ぶべき事なのか、悲しむべき事なのか――咲久夜自身もそれは分からなかったが。
「キキが戦えると言ったなら、わしらは戦うことはないだろうよ」
そう伝え、キキの頭を撫で、苦笑した。




