五
しかも、この幼子は返り血一つ、傷一つついていない。無傷で息も切らさず……加えて、
(あまりに澄みすぎている)
その瞳は澄み切り、こんな子が鬼を倒してきたとはどうしても思えない。いや、ただ一つあるとすれば……
「神楽の御名は?」
神楽ならば齢は関係無い。そして尚、位の高い神ならば数十の鬼を倒すことも可能かもしれない。
だが、
「キキはまだ神楽を成したことがない。刀で鬼を斬った」
「…………」
咲久夜の言葉に、水光はいよいよ何も言えなくなり。そして、それは、多岐都、多紀理、双子の妹の狭依も同じく。
そんな四人の表情に咲久夜は苦笑し、照灯と和可がこちらへと向かっているのを確認してから口を開いた。
「詳しい話は後にしよう。まずは、鬼の二陣。これを如何にするか」
「わたしが参ります」
「……そう言うと思ったよ」
迷い無く進み出たキキに、咲久夜は益々苦笑し、だけれど、キキを知らぬ四人には苦笑も出来ず、水光は視線を鋭くした。
「なにをいっている。任せるわけがないだろう」
「少し前にも同じ言葉を聞いたな」
「何を笑っている、咲久夜。お前こそどうかしているのではないのか、こんな小さき子に」
「ああ、初めはわしも戦いを反対した。だが、キキの戦いを見て何も言えなくなった……そうではないか、水光」
「…………」
「話している刻はない、お前が言ったことだ。鬼は止まってはくれぬ」
「……分かっている」
水光は瞳を閉じ頷き、顔を上げ周囲を見渡した。
「戦える者を集めてくれ。動くことが出来る者は、倒れた者の手当を。急げ」
「はい」
多岐都、多紀理、狭依は頷きすぐに動き出す。が、
「戦える者は必要ありません」
キキの言葉に驚き三人は身体を止めた。いや、事は急を要している。幼子の戯れと足を止める必要もないはずだった。
だが、不思議とこの幼子の小さき言葉に耳を傾けてしまっている。そして、それは、水光も同じく。
「幼子……いや、キキだったな。必要ないとはどういうことだ」
「わたしが一人で戦います」




