四
「久しいな、水光」
「……咲久夜」
水光は力を抜き――その時には瞳も黒曜に戻り――そして、名を呼んだ。
驚きはない。咲久夜が来ることは出雲から文で知っていた。だが、今はそれよりも、
「鈍ってはいない、五体は倒している……それに、話をしている刻もない」
再会の話は鬼を倒した後のことだった。丁度良い所に来てくれたと思う。咲久夜がいれば、巻き返せるかもしれない。
「咲久夜、見ての通りだ。鬼を倒し、体勢を整える」
「ふむ、残りの鬼は……五体……いや、四体か」
「どこを見ている。二十体は……」
周囲を見渡し――水光は異変に気付き言葉を止めた。
鬨の声が止まっている。いや、反対にまるで生きている人間が居ないと思うほど静寂に包まれていた。
「――水光様!」
少女の声に、水光は顔を向ける。
「幼子が急に現れっ、いえ、でも、新たな鬼もっ! ……って、咲久夜様っ!?」
「相変わらずだな、多岐都」
「何故、ここに……いえ、それよりも、須佐様はお元気ですか?」
「ああ、相変わらず石頭だよ」
「須佐様のことを悪く言わないでください!」
「悪く言ってはいない。そのままを言っただけだ」
「……いいから、咲久夜は黙って。口を凍らせるぞ」
水光はまた息を付き、続きを……多岐都には聞かず、後ろに居る双子の多紀理に問いかけた。
「それで、何があった」
「戦いはほぼ決しました。ただ、第二陣が近づいて来ています」
鬼の二陣ももちろん聞き捨てられぬことだったが……
「戦いは決した……? なにがあった」
「それが……あの幼子は咲久夜様の共ですか」
「ああ、そうだ。我らの新しい仲間だ」
「一体どういうことだ、咲久夜」
続く問いに咲久夜はもう一度笑い、そして、多岐都達の後ろへと視線を向けた。
「戦いは終わったようだな。大事はないか――キキ」
「はい」
澄んだ声が響き、水光は振り返り……そして、あまりのことにどう感情を表していいか分からず、その者を、キキをじっと見つめた。
「水光、こやつがキキ。残っていた鬼を全て倒してくれた」
「……なんだと」
鬼は二十体以上居たはず。それをこんな……あまりに小さい幼子が倒したというのは信じられないことだった。




