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戦狂のキキ  作者: shio
第四章
81/461

十三


「……何が可笑しい」


 急に笑ったカナを嘲笑と捉えたのか、低く言葉を放つ温羅にカナは首を振った。


「いや、家族を持つということを不思議に感じ……だが、つい数日前に家族にしたいという幼子が居たことを思い出し、思わず笑ってしまった」

「幼子ですか?」


 阿曽の問いかけにカナは頷いた。


「ああ、可愛い童女だ」

「そうですか」

「鬼ではなく人間の子だがな」

「まあ」


 カナの言葉に驚き、だがすぐに阿曽はくすりと微笑んだ。


「失礼かと思いますが、カナ様は変わっていらっしゃる」

「互いにだろう。夫婦の鬼など見たのは初めてのこと」

「儂らの地では、普通のことだった」


 温羅の言葉にカナは顔を向けた。阿曽との会話で思うところがあったのか、先程よりも多少言葉が柔らかくなっている。


「成程……どこか質も違うように感じるはその為か。生まれはどこか」

「海の向こう……この国では大陸と呼んでいる場所。そこから先、名も無い山奥の小さな村だ」

「ほう、それでまた何故こんな遠くの国まで」

「鉄を求めて……もう良かろう、お前さんには興味のない話だ」


 温羅は座りを崩し、片膝を上げカナへと鋭い視線を向けた。


「用件はなんだ。共に人間を滅ぼそうとでも言うつもりか」

「ふむ、間違ってはいないが、温羅殿に戦いを望んでいるわけではない」

「では、何の為に来た」

「武具を造って貰いたい、鬼の武具を」

「……ふん、成程、そういうことか」


 温羅は視線を落とし、茶碗を弄ぶ。一体それはどういう感情なのか、カナには図りかねたが……


「……儂は鍛冶屋ではない」

「知っている。人は用意しよう」

「…………」


 黙ること一時――温羅は茶碗を置き一言。


「この話、断る」


 そう呟いた。


「……ふむ」

(何か理由わけがあることは確かだが……さて)


 思案することまた一時――だが、カナが口を開く前にドタドタという騒音が静寂を破った。


「兄者っ、兄者っ! 京から鬼が来たというのはまことかっ!!」


 振り返り、視線を向ける。そこには角を隠そうともせず縮れた髪を振り乱し、温羅よりも一回り大きい男がこちらへと近づいて来ていた。


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