十三
「……何が可笑しい」
急に笑ったカナを嘲笑と捉えたのか、低く言葉を放つ温羅にカナは首を振った。
「いや、家族を持つということを不思議に感じ……だが、つい数日前に家族にしたいという幼子が居たことを思い出し、思わず笑ってしまった」
「幼子ですか?」
阿曽の問いかけにカナは頷いた。
「ああ、可愛い童女だ」
「そうですか」
「鬼ではなく人間の子だがな」
「まあ」
カナの言葉に驚き、だがすぐに阿曽はくすりと微笑んだ。
「失礼かと思いますが、カナ様は変わっていらっしゃる」
「互いにだろう。夫婦の鬼など見たのは初めてのこと」
「儂らの地では、普通のことだった」
温羅の言葉にカナは顔を向けた。阿曽との会話で思うところがあったのか、先程よりも多少言葉が柔らかくなっている。
「成程……どこか質も違うように感じるはその為か。生まれはどこか」
「海の向こう……この国では大陸と呼んでいる場所。そこから先、名も無い山奥の小さな村だ」
「ほう、それでまた何故こんな遠くの国まで」
「鉄を求めて……もう良かろう、お前さんには興味のない話だ」
温羅は座りを崩し、片膝を上げカナへと鋭い視線を向けた。
「用件はなんだ。共に人間を滅ぼそうとでも言うつもりか」
「ふむ、間違ってはいないが、温羅殿に戦いを望んでいるわけではない」
「では、何の為に来た」
「武具を造って貰いたい、鬼の武具を」
「……ふん、成程、そういうことか」
温羅は視線を落とし、茶碗を弄ぶ。一体それはどういう感情なのか、カナには図りかねたが……
「……儂は鍛冶屋ではない」
「知っている。人は用意しよう」
「…………」
黙ること一時――温羅は茶碗を置き一言。
「この話、断る」
そう呟いた。
「……ふむ」
(何か理由があることは確かだが……さて)
思案することまた一時――だが、カナが口を開く前にドタドタという騒音が静寂を破った。
「兄者っ、兄者っ! 京から鬼が来たというのは真かっ!!」
振り返り、視線を向ける。そこには角を隠そうともせず縮れた髪を振り乱し、温羅よりも一回り大きい男がこちらへと近づいて来ていた。




